胡蝶は出会う
街を出て魔法国方面へ進むちがや達一行
三人は森の中を突き進んでいた
「森は薬草の宝庫やな 魔物は多いけど自然いっぱいで落ち着くわ」
ちがやは元々森で遊んでいた経験があるので自然豊かなこの世界の森の空気を好きになっていた
無論、自然が豊かということは動物も魔物も多く生息し完全に油断するのは危険なのだがそこはジェイソンという最強の守りに甘えている
「この森なんだか神聖な魔力で溢れているもの。多分そのせいもあるんじゃないかしら」
「さすが魔法使いやな、うちには全然わからへんわ」
ルナには見えていた
この森に入ってからキラキラと美しい魔力が雪のように降り注いでることを
こういう森には精霊が住み着いているという
もしかしたら会えるかもしれないとちょっとだけドキドキしていた
「なぁ、ルナ・・・あっちになんかおらへんか?ルナならなにか見えへん?」
「どこどこ?えーと・・・え!?」
「何かおったんか!?うちにも見える!?」
「見えるはずだけど・・・」
「エンシェントドラゴン・・・神獣だ」
「ほんまや!!すげええええええ!白くてキレイやな!でもなんかぐったりしてへん?」
「怪我してるみたいだけど・・・ちがや・・・上」
「なんや上って・・・げ!?もう一体おるやんけ!?しかもなんか怒ってへんか!?」
「どうやら番のようだ。俺達のことに気付いて警戒しているようだ。」
「待って待って!?うちら攻撃したいわけちゃうねん!!奥さんか旦那さんかは知らんけど怪我してるならウチが治せるで!!!」
「ぐるる」
巨大な雄々しい角を生やした真っ白のドラゴンはバッサバッサと地上に降りてくる
「はわわわ・・・」ガタガタ
「ルナ 大丈夫だ エンシェントドラゴンは知能が高い 攻撃の意志がないとわかれば襲ってくることはない」
「ほわああああ!近くで見るとますますでっかいな!!これが本物のドラゴンなんやな!!」
慌てているルナを他所に降りてきたドラゴンを見て目をキラキラと輝かせるちがや。
どうやら恐怖より興味が勝っているようだ。
「人間、怪我を治せると言ったな?それは真実か?」
「なんとかなるはずやで!知らんけど!」
「本当に大丈夫なのか・・・」
「神獣エンシェントドラゴンよ、この子はそれだけの力がある 例え神獣でも治すことは可能だろう」
「そんなことよりはよ治さな!いくで!!」
「乗れ すぐそこだ 運んでやる」
「ほんまか!?おおきにな!」
「私は飛べるから大丈夫です!」
「俺もだ」
「ならいくぞ」
「酷い怪我や・・・痛かったな・・・」
「ちがや できそう?」
「患部はもう洗ったからあとは消毒して・・・」ポン
「人間よ、それはなんだ?」
「神獣用に傷薬やで??今治したるからな」びしゃー
「これは・・・!?」
「薬草使うのかと思ったけどそっちで作っちゃったか」
「神獣に効果あるかわからんしな こっちのほうが確実や」
「痛くない・・・人間 助かった ありがとう」
「ふふん!お礼なら旦那さんにいうんやな!奥さんのこと必死に守ってたんやからな!」
「ふふ、そうだな人間よ ありがとう 我が夫よ」
「あぁ・・・」
「お、照れてるみたいやで!奥さんラブラブやな~!」
「そうなのだ人間!よくわかっているな!」
「うぐ・・・」
「神獣にも臆しないとはこれはたまげたな」
「奥さんも旦那さんも嬉しそう、うふふ」
「人間よ、改めて感謝する 」
「うちらはたまたま通りかかっただけやし困ったときはお互い様や!」
「でも、なんでエンシェントドラゴンみたいな強い神獣が怪我を?人間の冒険者程度では傷一つつけられませんよね?」
「それなのだが、人間ではなく我らと同じ神獣だったものだ」
「神獣だったもの??もう神獣じゃないってことですか?」
話によると神獣達は4種類存在しそれぞれ北、南、東、西に分かれて世界を守っていたらしい。
だが、その中の神獣フェンリルが突如暴れ出し真っ白だった毛並みは真っ黒に変色し他の神獣達を攻撃しはじめたそうだ
原因は不明 だが、フェンリルの体の魔力が邪悪なものに変質していることは確かだそうだ
そのせいもあってエンシェントドラゴンは負傷しこの森で治癒に専念していたらしい
「そのフェンリルって殺すしかないんか?」
ちがやは泣きそうな顔でエンシェントドラゴンに問いかける
「我々はできれば殺したくはない だが、あの魔力の変質を戻せる術がみつからないのだ」
「魔力の変質・・・」
ルナは思い出していた ちがやが作り出した疑似魔力と魔法のことを
ちがやの能力は想像した物を生みだす創造の力
それは魔法ではなく 魔法ではない何かであることまでわかっている
あの疑似魔力から魔法を生み出した時 変な効果が付与されてて失敗したけど
ちがやの力は森羅万象を変質させることもできるのではないかと考えたのだった
「あの、神獣様からみてちがやの力は何だと思いますか?」
「ん?それは神力であろう?人間たちよ、気付いていなかったのか?」
「神力!!?」
「なんやそれ??」
「神の力そのものだ お前は人間のようだが力そのものは神そのもの・・・そうか!?そういうことか!」
「ちがや、あなたにしか助けられないかもしれないってことよ」
「はえ??」