再開するジェイソンとハンス~SSSランクの指名依頼~
鍛冶ギルドを設立し、帝国への経済的な対抗策を確立したちがやたちは、次なる目的地へと向かう。
それは 「冒険者ギルド本部」 がある大都市。
「ここはジェイソンがSSSランクになった街なんやな?」
「そうだ。俺が鍛えられた場所でもある。」
ジェイソンにとっても思い出深い場所らしい。
よく見たら冒険者達がとても多い
それとドワーフの防具を付けているものもいた
流通が活発化したのと冒険者ギルドと繋がったことで冒険者達の装備も潤沢になっているのだろう
耳を傾けるとやれ防具を新調しただのドワーフ製はやはり素晴らしいと称える声が聞こえてくる
……だが、この街でハンスに思わぬ再会が待っていた。
――――――
ちがやたちがギルド本部へと足を踏み入れた瞬間、 ガタン! と勢いよく椅子を蹴る音が響いた。
「……ハンス!?」
振り向くと、そこには 金髪の女性冒険者 が立っていた。
鋭い眼光と、ハンスとよく似た整った顔立ち――間違いない。
「姉上……?」
「生きていたのか……!!」
エリスは、ハンスが帝国から消えた後、 王宮で夜襲を受けた ことをきっかけに、ハンスの行方を追って帝国各地を旅していたらしい。
その結果、冒険者ギルド本部でSランク冒険者にまで登りつめたという。
「てっきり殺されたとばかり……!」
「……すまない、姉上。」
エリスは、ハンスをしばらく睨んだ後、ため息をついて ぎゅっと弟を抱きしめた。
「生きていてくれてよかった……。」
「なるほど、これが今でも勝てないハンスの姉なんやな」
冒険者になってそこまで経ってないはずなのに自分と同じSランクという。
しかも王族で第一王女
ハンスもハンスで頭が上がらないようだ
弟らしい姿になるほどと感心する
それにしても抱擁ながない?
もう離さないと言わんばかりにひしりと抱きしめている
聞いてた話だともっと厳しい人だったはずだがどういうこと?
「あの……ギルド内でイチャつかないでもらえます?剣姫様」
申し訳なさそうに受付嬢が注意してきたが構うものかと離さない
どうやら事情を知っているらしく周囲の視線も暖かい
「まさかあれが剣姫が話してた自慢の弟か?てことは第1王子」
「ついに出会えたのか~」
剣姫?自慢の弟?
ハンスのことまで聞いてるのに落ち着きすぎじゃない?
でもこの感じ身に覚えがある
ジェイソンをチラリと見る
よかったなと言わんばかりに腕を組んで頷いている
そしてルナの胸を見ていた冒険者をギロリと睨み威圧している
まさかハンスの姉……ブラコン?
――――――
ようやくハンスから離れたエリスから事情を聞くことにした
エリスは元々剣の才能に溢れていて帝国でも名の知れた剣姫だったそうだ
仕事は軍に属していてその実力はハンスも認めていた
だが、ハンスの足取りを追っている最中に夜襲にあい撃退
帝国は信用ならんと思い王宮を飛び出してきたという
そこからハンス探しの旅をして旅費稼ぎのために冒険者になったらしい
第一王女なのに破天荒である
ハンス中心に物事を考えていることもよくわかった
紛うことなきブラコンだ
重いはずの過去が軽く感じる
――――――
「ジェイソン! 久しぶりじゃねぇか!」
受付嬢から話を聞いたのか、ギルマスターらしき男 が現れた。
ジェイソンより一回り年上の、ガタイのいいおっさんだ。
「師匠、お久しぶりです。」
「……師匠!!?」
「俺を鍛えてくれた、ここのギルマスター、バーザック だ。」
確かに、ジェイソンと同格ぐらいの強者に見えるが……。
「お前がいきなり消えたって聞いた時は心配してたんだぞ!
まぁ、そのあと他国で武勇伝を残してる って聞いて、生きてることは確認してたからいいんだけどよぉ。」
――どうやら、面倒見のいいおっさんのようだ。
「ジェイソンの師匠ってことは……SSSランクなん?」
「いや……俺はSランクだ。師匠よりも強くなっちまってな……。」
「まぁ、ジェイソン強すぎるもんな。追い抜かれても仕方ない。」
「剣姫も弟に会えたようだな。よかったよかった。」
バーザックは、自分のことのように喜んでいた。
根っからのお節介焼きのようだ。
「そうそう、お前らに頼みたいことがあるから、俺の部屋まで来てくれ。」
「分かった。」
ギルドマスターの部屋は2階にあるらしく、階段を登っていく。
他の冒険者ギルドとは違い、広くて清潔に保たれている。
荘厳な扉を開けると、そこには 執務室 があった。
――この流れ、恐らく依頼があるんやな。
「好きなところに座ってくれ。」
言われるがままにソファに座ると、職員の女性がお茶を持ってきてくれた。
「その前に、ランクの話をしておかないとな。
ちがや、ルナ、リリス。」
『はい?』
「お前ら、SSSランクに昇格だ。」
「ええええ!!?」
「なんでなんで!?」
「……もしかして、商業国家のあれ?」
「それもある。あとは、辺境での功績とドワーフたちの街の功績、その他諸々や。
今回ばかりは 功績が功績なだけに、誰も異論を唱えなかった。」
「SSSランクの基準、ジェイソンだったから……なんか心配になってくるなぁ。」
「そうなのよね……私たち、そこまで強くないし。」
「……SSSランクのゼクトを倒したやつが何を今更。」
――確かに、それもそうか。
「まぁ、下積みなら、この前やったしな。」
こうして、正式に SSSランク冒険者 となったちがやたちは、ギルドマスターの 依頼 へと話を進めるのだった。
――――――
誘拐事件か……でも、これがなんでSSSランクなんや?
「お前達がギルド規約を変えてくれたおかげで、こっちも動きやすくなったんだよ。
今までは内政に踏み込む可能性がある って理由で避けてたんだが、もうその心配をする必要がなくなった。
それで、こっちで調べたんだが――誘拐事件を起こしているのは帝国 なんだ。」
「帝国が……? なんで?」
「帝国がなぜ人をさらうと思う?」
「まさか……人体実験……?」
「そういうことだ。
奴らは邪神を復活させようとしていただろう?
そのための 器を作るために、人間を人工的な器に改造しようとしている んだ。」
ちがやは、思わず拳を握りしめた。
帝国はこれまでに 二度 、邪神の器を失っている。
一度目は、偶然。
二度目は、ちがやが意図して破壊した。
――その結果、帝国は 人体実験 へと手を染めた。
「……ウチの判断が、彼らを追い込んでしまったのか?」
――いや、違う。
人体実験は 最初から行われていた。
ならば、責任を感じる必要はない。
……でも。
「依頼内容を教えてや。」
今は 問題の解決 が最優先だ。
責任云々は、その後に考えればいい。
「やつらがしようとしていることは、もう分かっている。
だから、お前らがやることは――
① アジトの発見と、被害者の救助(もしくは手遅れなら討伐)。
② 帝国を追求するための証拠の確保。
③ 実験に関与した者の捕縛または討伐。
以上だ。」
SSSランクらしい 高難易度任務 ってわけか。
だが、大体想像通りだ。
「……任務に問題はない。」
「それと、もう一つ。
今回出てくるかは分からないが――お前らが魔法国家で倒したポイズンドラゴンの牙が、帝国に買われたという情報がある。」
「帝国が?」
「そうだ。 あいつは曰く付きだろ?
念のため、警戒しておいてくれ。」
ポイズンドラゴンの牙……?
……おかしい。
あれは すでに、父が同化したポイズンドラゴンの亡骸 だったはず。
つまり、邪神の器としては使えないはず……。
――でも、嫌な予感がする。
「……見つけた場合は、確保 する。」
その日の会議は、そこで終わった。
ちがやたちは 帝国の陰謀を阻止するため、動き出すことを決意した。
そして――その日は、宿で一泊することにした。