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鍛冶の街イーロンハンマー

そして、次の街 イーロンハンマー に辿り着いた。


イーロンハンマーは ドワーフたちが武器や防具を製造する街 で、鍛冶屋が多く点在している。

あちこちで 煙がもくもくと上がり、鉄を打つ音が響き渡る。


流通が再開したおかげか、多くの馬車が行き交い、街には活気が戻っていた。

この 煙の匂いを嗅ぐと、「イーロンハンマーに来たな」と実感する。


「ドワーフといえば、魔法国家でも会ったことあるな。あのじっちゃん、元気にしてっかな」


ちがやが、懐かしそうに呟く。


そういえば、ちがやの武器以外にも普通の武器を持っていたな。

俺は ちがやの武器だけしか使っていない から、そろそろ 新しい武器を買ってもいいかもしれない。


そんなことを考えていた時――


「だから帝国には売らねえって言ってんだろうが! 帰れ帰れ!」


怒鳴り声が響いた。


見ると、ドワーフの職人と帝国の兵士らしき男が口論している。

以前、イーロンハンマーでは 武器は冒険者と一般人にしか売らない という決まりがあったと聞いたことがある。


だが、なぜ帝国の人間が しつこく交渉 しているのか?

無理な要求でもしているのか?


「どうかしたんか?」


ちがやが、ドワーフの職人に声をかける。


「嬢ちゃん、いやな……俺たちドワーフは帝国には武器を売らねえって決めてるんだ。なのに、しつこく買おうとしてくるんだよ」


「金なら出すと言っている」


「金の問題じゃねえんだよ! 帰れ帰れ!」


帝国の兵士は 諦めたように背を向け、去っていった。


――こんなことが頻繁に起きているのなら、ドワーフたちにとって かなりの悩みのタネ だろう。


「おっちゃん、もしよかったら話聞かせてくれへん? もしかしたら、助けになれるかもしれへんやん」


「 まだ幼いのに優しい子じゃねえか!だが、大丈夫だ。気にかけてくれてありがとよ。」


 まさかちがやが拒絶されるとは思わなかった


 ドワーフ達にも何か理由があるのかもしれないとこの場は一旦引き下がることにした


 とはいえ、先程のことをまだ気にしているようだ


 少し沈んだ雰囲気を出している


「ちがや、あまり気にするな。こういうこともあるさ。」


「ん?別に落ち込んでるわけちゃうで?あんなに優しい拒絶もあるんやなと考えていただけや」


 優しい拒絶か


 確かに彼らに悪意などは微塵も感じられなかった


 しっかりと感謝した上でまだ信頼しきれないという表情をしていた


 それだけでもドワーフ達の誠実さは伝わってきた


 ちがやも同じように感じているのか


 それにしてももっと激しい拒絶をされたことがあるような言い振りだったな


 普段は明るく振る舞っているちがやだがその内情はかなり深刻だったことは聞いている


 だが、入ったばかりの俺はまだ深くは、聞けていない


「ルナ、大丈夫だろうか?」


 心配になってルナにそっと聞いてみた


「あの程度何も問題ないわよ。むしろあのぐらいならどう丸め込もうか考えてるはずよ。」


「丸め込むって・・・」


「おばちゃん!これちょーだい!」


「あいよ!」


「おおきに!ところでなんかうちら旅人なんやけどドワーフ達に警戒されてる気がするんや。何か理由知らへん?」


 世間話のように直球で聞いてる


 しかも買ったあとだから断りずらいだろう


 ちがやの商人としての能力がこんなところで発揮されるとは・・・


「ああ、見ない顔だから帝国の人間かもしれないと警戒してるんだよ。別にあんたらを嫌ってるわけじゃないから許してあげて」


「おおきに!あ、これお土産に一つもらうわ」


「まいど!」


 情報代ということか


 こういう豆なところがちがやの本質なんだろうな


 お互いのメリットを考えて行動している


 そして感謝の言葉


 人として大切なことだが、意外とできない人が多いのだ


「ルナ、あれ食いたくないか?お礼に買ってやろう」


「え?いいの!?じゃあありがたく・・・」ジュルリ


 なぜだろう。


 思ってたのとなんか違う


 いや、ルナだからこれであってるのだが・・・


 ちがやの真似をしてみたがうまくいかなかった


「簡単にみえてそうでもないだろう?」


 ジェイソンが思ってたことを言い当ててくる


「俺がやるとなんか違うんだよな・・・ちがやはやっぱり凄いな」


 彼女は人を喜ばせる天才だ


 距離感といい不快にならないように気を配っている


 それでいてあの満面の笑み


 俺に真似できるはずがない


「そもそも俺達は仮面を付けているから表情が見えんからな」


 ぐうの音も出ない正論だった


 最近は仮面をつけている状態に慣れすぎて忘れていた


 まぁ、例え外していても彼女の可愛らしい笑顔には勝てないのだが・・・


「皆の分も買ってきたで~」


 ちがやが屋台で買った食べ物を加えながら渡してくる


 ほんと気配り上手だよな


 結婚したら絶対いい奥さんに・・・ん!?


「・・・・」


 殺気を感じると思ったらジェイソンが娘はやらんぞと言わんばかりに威圧してきていた


 ゾッとして咄嗟に首を全力で横にふる


 なんで口にしてないのにわかるんだよ!?


 ちがやはちがやでまた自由に歩き回っては話しかけている


 マイペースすぎる!?


 過保護すぎるジェイソンが怖いから止めてくれ!

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