海賊と共に戦う
ロイが取引に成功し大量の食糧を手に入れた時のこと
海際の方が何やら騒がしくなっていた
「どうした?お前達」
「クラーケンだ!クラーケンが襲ってきた!」
クラーケンは巨大で獰猛なイカの形をした魔物である
やつらは水中だけでなく陸にも上がってくる。ここまで逃げてきたということは・・・
「きぇえええええ!」
案の定そのデカい図体を引きずってやって来てしまった
とはいえ、こちらは海を探検する海賊だ。クラーケンなど何度も対峙したことがある。
「アイシクルランス」
ルナも応戦してくれるようだ
氷の魔法で身動きを止めた
これなら倒せる
「ジェイソン!甲羅はいらんからなー!」
「ん?」
それは・・・
「わかってる」シユパ
「足切って~」
まるで・・・
「俺に任せろ」シュパ
食べる時の解体方法・・・
「おおきにハンス、ジェイソン」
まさかこいつらクラーケンを食べる気か?その切り方は食べる時の手順ではないか
「皮剥して」
「わかった」メリメリ
「やっぱり食う気だ!!」
既に絶命しているとはいえ最初から食うために倒すなんて・・・手際もいいしこいつらに見つかったのが運の尽きだったな
「食えるよな・・・」
今更!?
「タコじゃないけどあれでも作ろうかな」
「たこ焼き作るの?食べてみたかったのよね」
「タコの代わりにイカやけどな」
そもそもイカですらないんだよ
イカっぽい魔物だから
「私のセンサーによるとこいつは美味いわ!」
「なら安心やな。ほな、捌いていくからジェイソン手伝って」
なんだその信頼感!?
見ただけでわかるのか!?
「わかった」
「流れるように料理が始まってしまった」
さっきまでの緊迫した空気は一体
海賊の天敵クラーケンはあっという間に食材にされてしまったのだった
「デカい上にくっさ・・・こりゃあしっかりと塩もみせんと食えたもんじゃないわ」
バナナの葉の上には大量のクラーケンの肉
その肉から海産物特有の生臭さが漂ってくる
「普通食わないからな。」
クラーケンは一般的には臭すぎて食用とされていない
「イカなんてこんなもんやろ?へーきへーき!」
だからイカではないのだが・・・。
ちがやはマジックバッグから取り出した調味料を使い調理を始めた
「でっかいからお前らも手伝ってくれや!この袋に入れて揉むだけでええから」
小分けにしたクラーケンの肉を透明の袋に入れもみ始める
海賊たちもそれに習って袋を揉む
全員でもみもみしているともういいだろうと一度巨大な桶にクラーケンを取り出した
そこに聖女のリリスが水魔法で綺麗に洗い流す
しばらくすると臭いが消えたクラーケンの肉だけがその場に残った
「ほう、あのクラーケンの臭いが取れるとは・・・」
長い事海賊をやっていたがこんなことは初めてだ
「ジェイソン、これを一口サイズに切ってや」
ジェイソンが凄まじい勢いでクラーケンを細切れにしていく
ちがやは小麦粉と思われるものを水で溶かしている
それと見慣れぬ半円状のくぼみができた鉄板
海賊達全員で何ができるのかわくわくしてくる
ちがやが小麦粉を溶かした液体を流し込むとじゅわーと香ばしい香りが辺りに広がっていく
素早くクラーケンの肉をいれしばらく待つと、器用にくるりくるりとひっくり返していく
なるほど、半円刑状なのは引っくり返して円形にするためかと納得した
ちがやが焼き上がったそれを皿に乗っけると茶色の調味料と白い調味料とふわふわと動く薄い何かをふりかけた
食欲をそそる匂いだ
ルナの言う通りこれは確かに美味いことだろう
海賊たちも辛抱たまらんという顔をしている
そして一皿目が完成
一口目は味見係のルナがすることになった
ほふほふとあつそうにしながらも幸せそうに食べている
「おいし~!はふはふ!」
「どんどん作っていくから皆も食べてみ-!」
ちがやが手際よく大量のたこ焼きならぬクラーケン焼きを焼いていき、待ちに待った全員で食べてみる
暑いけどとろとろしててしっかり味がついている
その中に歯ごたえがあるクラーケンがいい味を出している
あの臭くて処理に困っていたクラーケンがこんなにも美味しくなるなんて知らなかった
今まで捨てていたのがもったいないぐらいだ
「さぁて、うちもそろそろ食べようかな・・・て、あれ!?うちの分は!?」
ぎくりと全員硬直する
あれだけ大量にあったクラーケンの肉だが、人数が人数なのですぐに食べきってしまい勢いあまってちがやの分まで食べてしまったようだ
「お、そういえばゲソ使ってなかったな。うちはこっちでええわ」
機嫌を直してくれてほっとしたがまた新しく何か作り始めた
2つの鉄板を重ねゲソを挟んで焼いている
ジュワと美味そうな音がしてからしばらくすると薄っぺらくなっていい焼き加減のゲソが姿を表した
「マヨネーズをつけてたべると美味いんよな~・・・ん~!」
おいおい食ったばかりなのに更に食欲を誘ってくるなよ
というかそれすごく酒に合いそうだ
だが、先に食べてしまったので我慢我慢
「ちがや!少しだけ!少しだけお願い!」
「しゃーないなー!ゲソは一杯あるし皆で食べようや」
ちがやの面倒見の良さが災いして、翌日も二日酔いで苦しむはめになったのは言うまでもないだろう