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海賊、商業ギルドと取引する

翌日──二日酔いの嵐

 案の定、飲み過ぎで二日酔い の男たちが、 あちらこちらに転がっている。


「……地獄絵図やな……ジェイソンまで二日酔いになるなんて。」


「私たちぐらいね……呑んでないから。」


 次の日、起きてみると あまりの光景に呆然とするちがやとルナ。


 そんな中、 慈悲深い聖女リリスが、あたふたと男たちの面倒を見ていた。


「二日酔いのお薬があればいいのですが……」


「しゃーないなー。ほい。」


 ちがやは、そこまで考えていなかったが、可愛い妹が困っているので快く手渡す。


「ありがとうございます! 皆さんに配ってきます!」


 リリスは 甲斐甲斐しく海賊たちの面倒を見る。


 ── やっぱり根っからの聖女なんやな……。


 そうこうしていると、 頭を抱えた統領 がフラフラと歩いてきた。


「ちがや……すまん。俺にもくれ……。」


「お前ら毎回こんな感じになるんか? 楽しいのはわかるけど 加減せんとあかんで。」


「昨日は特別だ……。助かる。」


 ちがやから薬を受け取り、 ごくごくと飲み始める統領。


 ちがやの薬は 即効性があり、みるみるうちに回復していく。


 商品名『う◯んくん』である。


 (……伏せ字にするところ、そこじゃないとダメ?)


 誰かがツッコみそうだった。


「お祭り騒ぎだったものね。仕方ないわよ。」


 理解のあるルナが、統領に 同情するように言う。


「……その通りだ。ただでさえ 愛でたい日だったしな。 それはそうと……仕事だ、仕事。」


「お、頑張るやん統領。ええで、手紙は昨日のでええから あとは簡単や。」


 やる気満々の統領に、ちがやが 嬉しそうに微笑む。


商業ギルドとの初取引

「これに入れればいいのか?」


 統領が 手紙を確認しながら、ちがやに尋ねる。


「せやで。手紙なら、しばらくしたら反応あるはずや。」


 ほい。


 手紙を マジックボックスに入れる。


 しばらくすると、 回復した側近 が様子を見にやってきた。


「統領……どうですか?」


「今送ったところだ。」


「お、返ってきたで。ふむふむ……。」


 海賊たちは 緊張しながら返答を待つ。


 すると、ちがやが にひひと笑い、親指を立てた。


「ど、どうでしたか?」


「ええってさ!」


「やりましたね! 統領!」


「おう!」


 一先ず これで取引が成立。


 統領と側近は、喜びながら称え合う。


 喜んでいる二人をよそに、ちがやは次の段階へ進む。


「試しに ちょっとだけ 取引するで。財宝、ちょっと貸してみ?」


「これでいいか?」


 ── ドサリ。


 統領が 大量の財宝を置く。


 だが、ちがやは 多すぎると首を振る。


「お前ら、金銭感覚狂っとるけど……この宝石だけでも、かなりの額やで? 買いたいものあるなら聞くで?」


「試しか……。手紙用の紙とペンを買っておくか。」


「それだと余るわ……。それぐらいなら、これでええか。」


 ちがやが 少しだけ財宝をつまみ、マジックボックスへ入れる。


 すると──


 ドサリ。


 早速、 手紙用の紙とペンが送られてきた。


「出てきましたよ! ……あれ? 触れない?」


 側近が 手を伸ばすも、見えない壁に阻まれる。


 ── ちがやの共有マジックボックスには、特別な仕組みがあった。


 共有している者同士は 自由に取り出せる。


 だが、 そうでない場合 は、取引相手かどうかを 自動的に判別 し、了承がないと触れられない。


「あっちも同じ状況や。 この状態で 了承の旨を手紙で伝えるんや。」


 海賊側も、手紙で了承の旨を伝えると──


 手に取れるようになった。



「……これが、真っ当な取引で手に入れた品……。」


 ぼったくられることもなく、安全に取引ができる。


 海賊というだけで 足元を見られることもない。


 統領は、感動を隠せなかった。


「自分で稼いだもので手に入れた方が、楽しいやろ?」


「……そうだな。」


「でも、小物買う時に 財宝 だと不便やな……。いくらか現金に替えておいた方がええかもしれん。」


「金ならあるぞ?」


「それ、硬貨じゃなくて、金そのものやろ?」


 ── 統領が言っているのは、金の延べ棒。


 ── ちがやが言っているのは、硬貨。


 試しに 延べ棒を換金してみると──


 ドサリ。


 大量の現金 が送られてきた。


「換金までしてくれるのか……?」


「久しぶりに見ました、硬貨……。」


「お前ら、ほんま価値観バグってんな……。」


「そういえば昨日ちがやから大量に食糧を買ってしまったが、これ以上買うと腐るよな・・・」


「それなんやけど、食糧専用のマジックボックス、買わへん?」


「それに入れたら、腐らないのか?」


「せやで。 入れたら時が止まるからな。」


「……買わせてくれ!」


 ── 商品名『ほぞんこくん』。


 名前の言う通り食糧しか入れられないが時が止まっており簡単に出し入れが可能なのだ。


 ちなみに、統領には、 言わなかったが、容量は無限だった。


 これには側近が ちがやの商魂に感づく。


「……いいカモにされてるような気が……。」


 しかし、ちがやは あっけらかんとしている。


「財宝あるんやし、ええやんけ~!」


「それはそうと、食糧や。すぐには送れんと思うから、交渉だけして確認してみるか。」


「そうだな……。」


 側近とともに 手紙を送り、しばらくすると返事が届く。


「……明日、取引できないかと聞いてきた。」


「おぉ、向こうも準備中か。じゃあ、明日やな。」


 ── 交渉成立。


 翌日、無事に商品が届き、対価を支払い、食糧を手に入れることに成功したのだった。

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