海賊と取引しよう
海賊の本拠地にて
本拠地に辿り着いたちがや達は、 統領の前 まで案内された。
ちがやは どかり と座り込む。
大柄で、この海賊団を支配する トップ の目の前だというのに、 まったく物怖じしない。
それどころか、 統領の方が気圧されてしまっている。
「お前らが外から来たという、変わったやつらか……」
「せや、ウチは ちがや ちゅうんや。商人 やで。」
「この海賊団を取り纏めている統領、キャプテン・ロイ だ。」
「話は聞いてるんやろ? ウチ、回りくどいの嫌いねんな~。ついつい 仕事せずに帰ってしまいそうになるねん。」
「ま、待て、話を聞こう。」
ちがやが わざとらしく立ち上がると 、統領が 慌てて止めに入る。
── 完全にちがやの手のひらの上。
単純な 強さ だけなら、後ろに控えている 仮面の大男 の方が強そうだが、見るからに ちがやがリーダーのような雰囲気を放っていた。
見た目に騙されてはいけない。
真っ当な取引の提案
「今回はウチと取引してくれや。ここに 食糧 がある。差し出された物によって、正当な対価を払おう。」
どさり。
── どこから取り出したのか、大量の 食糧 が 置かれる。
その光景に ギョッとする統領 。
しかし、これは 取引 だ。
すぐに 部下に財宝を持ってこさせる。
「これでどうだ?」
── どさり。
海賊たちが 見つけた財宝 を差し出すと、ちがやの 目が輝いた。
「これが海賊が見つけた財宝か」 と、感心しているようだ。
「これを換金するとなると……このぐらいやな。」
どさり。
さらに 食糧が追加される。
たしかに 金銀財宝は、それに見合う対価となる。
── だが、これは 真っ当な取引。
「なぜ海賊に取引を?」
「海賊である俺たちに、なぜ真っ当な取引をする?」
「お前らが陸で暴れると迷惑やからや。」
── びしり!
ちがやは指をさし、 ハッキリと告げる。
それに 統領は「確かに」と納得した。
「ちゅーか、お前らが集めてるの 実質金やろ? それの 使い方を教えてるだけ やろ。」
── ぐうの音も出ない正論。
しかし、ロイは 納得しきれない様子で、渋々と口を開く。
「……だが、こんな ならず者 と、誰が取引してくれるという?」
「お前は取引してくれるかもしれんが、陸ではそうはいかんだろう?」
「ええか? 武力で脅してるうちは、一生理解されんで! 陸でも 真っ当な取引 したかったら 脅さず、誠実に相手を見んと! あと犯罪はやめろ!」
「……」
「海を探検して、ロマンを探し出すのがお前らやろがい!」
「探検するのはいいが……人は襲うなと?」
「せや! 探検も 立派な仕事 や! それで稼いだ金で物を買えばええねん!」
「わざわざ犯罪犯して、嫌われて 陸に上がれなくなって、飯も買えない なんて、バカのすることや! お前らは今、そういう状態やねん!」
「……」
「お前ら、美味い飯食いたくないんか?」
「うぐっ……」
── 何も言えない。
目の前に 大量の食糧。
これを 正当な取引で手に入れられるチャンスを逃すほど、海賊たちは愚かではなかった。
統領は、手を挙げ降参を示した。
「美味い飯には敵わん……。だが、お前は “今回は” と言った。次はどうする?」
「言ったやろ? 真っ当な取引方法を教えるって。」
「商業ギルドと繋がれ」
── どさり。
ちがやは、 宝箱ぐらいの大きな箱 を取り出した。
「……これは?」
「これは、商業ギルドにある同じ物と繋がっている。」
海賊たちは 興味深そうに見つめる。
「お前らはこれを通して 手紙で取引を持ちかけ、商業ギルドと取引する。 お互いの商品を確認して了承するまで、受け取れない仕組みや。」
「……だが、これ自体が高いのではないか?」
「何のための財宝やねん。対価はしっかりもらうに決まっとるやろ。」
── 確かに。
「でもな、商業ギルドとの橋渡しぐらいなら、ウチが手伝ったるわ。」
「海賊が……商業ギルドと取引……?」
「心配すんなや。 ウチ、それだけの発言権があんねん。 こう見えて……」
「ウチは、SSSランク商人やからな。」
「……!!??」
── SSSランク!?
商業ギルドも、冒険者ギルドと同様、 FからSSSランクまである。
その 商業でトップに君臨する存在 だと聞き、海賊たちは 驚愕した。
海賊との宴
「5隻分の海賊全員を賄うだけの財宝は、あるよな?」
「……当然だ。」
その返答に、ちがやは ニヤリと笑い、宣言した。
「ほな、宴や!!」
── どさっ!
大量の食糧 を 椀飯振る舞い。
── 当然、 対価は払わせた。
だが、 取引してくれること自体が貴重。
交渉の詳細は 明日にして、今夜は宴となった。
「ウチは 子夢茅! 商人や! お前らが食いたがってた肉、存分に食うんやで! これが、お前らの正当な対価や!!」
「おぉーー!!!」
湧き上がる 海賊たちの歓声。
食事の準備を共にする、ちがやの仲間たち。
そこには 何の垣根もなく、共に笑い合う姿があった。
── その光景が、何故か美しく見え、心が熱くなった。
「統領。」
「……久しぶりだな、こんなに騒がしいのは。」
「……そうですね。」