海賊島を自立させよう
海賊への交渉準備
一旦ホテルに戻ったちがやは、明日に必要になりそうな物資を用意していた 。
「海賊のこと、どうするの?」
ルナが気になっていたことを聞いてみる。
「自立させて、『こっちくんな』って言いにいく。」
「……危なくない?」
「海賊も賊だぞ? 素直に言うことに従うとは思えんが……」
「今日の飯にありつけず 死ぬこと と、 まともな方法で飯にありつくこと 、どっちを選ぶと思う?」
ちがやは、海賊たちが 食糧目当てで陸地を目指していたのではないか と考えていた。
五隻も船があれば、海で獲れる食糧だけでは足りない。
そうなると、いずれ 陸に上がって奪うことになる。
でも、それを させたくない。
ならば、拠点となっている 海賊の根城を「自立」へと導くしかない。
それも、真っ当な方法で。
自分たちが 飢えるかどうかがかかっているなら、やらざるを得ない だろう──ちがやはそう推測していた。
「まぁ、腐れ外道しかおらんかったら、海の底に沈めればええやろ。」
海賊島への潜入作戦
「これでいいの?」
── 海賊島に到着。
ちがや達は 空を飛んで侵入 し、BBQコンロを取り出す。
厚切りステーキ を炭火でじっくりと焼き始めた。
香ばしい 肉の香り が辺りに広がっていく。
そして、その 匂いをルナの魔法で島の中心へと風で流した 。
「そろそろかな。」
ちがやがそう呟くと──
ガサゴソ……
島の奥から、 肉の匂いに釣られた海賊たち が現れ始めた。
「お前たち、どこから入ってきやがった!? ここは俺らの島だぞ!?」
三下っぽい海賊が威嚇してくるが、 ちがやは無視して肉を焼き続ける。
「というか、なんで肉なんか焼いてるんだ!? おい! 聞いているのか!?」
海賊が手を伸ばした瞬間──
バチィン!
結界くんが はじき飛ばした。
弾かれた海賊は ムキになって何度も攻撃するが、まったく通じない。
その上──
ちがやは仲間たちに美味しそうな肉を切り分け、幸せそうに食べ始める。
── 羨ましい。
さらに 肉の匂いに釣られた海賊たち が次々と現れ、 肉欲しさに攻撃を仕掛けるが、すべて弾かれる。
肉なんて何ヶ月も食べていない。
それなのに──
目の前で、美味しそうに食べるちがや達。
その光景に、海賊たちは 嫉妬で歯ぎしりする。
ちがやの交渉術
「にひひ……お前らも食べたいんか?」
「ぐぬぬ……」
「魚ばかりだと飽きるもんなぁ~。たまには肉も食べたいよなぁ~?」
── ちがやは、あえて 煽り倒す。
彼は 海賊たちが肉を食べたがっていることを知っていた。
なぜなら 陸に上がれず、何度も玄武に追い払われているのだから。
きっと 魚やエビは捕まえられても、肉は手に入らない。
「真っ当に稼いだ金で買った肉は、美味いなぁ~!」
海賊たちは、ぐぬぬと悔しそうに唸る。
どうせ俺らは海賊だ、と言いたいが、それを口にすると さらに煽られそうで言えない。
かといって 手を出せば、また弾かれる。
── まるで、餌の前でお預けされている犬のような状態だった。
「お前ら、肉食いたい?」
── 集まった海賊たちは、一斉にブンブンと縦に頭を振る。
ちがやは シメシメ と何かを企んでいる。
「ほならウチと、真っ当な取引せぇへん?」
「……!?」
ちがやの思いもよらぬ発言に、海賊全員が ポカンとする。
「お前ら、陸に上がれんで困っとるんやろ? 陸に上がらなくても仕入れができるように、真っ当な方法教えてやるいうてんねん。 無論、それによって肉も買える。」
── 買う?奪うではなく?
海賊たちは 引き込まれていく。
財宝の活用提案
「仮に取引するとして……何が欲しいんだ?」
海賊の1人が質問する。
「お前ら、海賊なら財宝たんまり溜め込んでるんやろ? でも 財宝は食えへんもんな~!」
「……!!」
「いくら海を探検して財宝を見つけても、食べられへんかったら意味ないやん?」
「魚魚魚魚!!」
一部の海賊が 「もう魚は嫌だぁ!!!」 と叫び出す。
最近は 特に陸に上がっていないので、食糧不足が深刻化している。
── 魚は採れるが、 毎日魚ばかりでは、いずれ限界が来る。
……すでにその限界が来ていた者たちもいる。
「お前らは財宝を探す。それを取引材料に、食糧や欲しいものを買う。 そういう提案を、ウチはしてんねん。」
── いつの間にか、ちがやを中心に海賊たちが耳を傾けていた。
心なしか、統領より統領っぽい。
床に ふんぞり返り、悪どい笑みを浮かべるちがや。
海賊のボスのもとへ
「何ボサっとしとんねん! 取引したいなら、今すぐ ウチらを海賊のボスのところに案内せんかい!!」
その勢いに押され、 海賊たちは慌てて案内し始める。
── 気づけば、BBQ道具も片付いていた。
(肉……くれないのかよ)
と、ちょっと思ったが、今は仕方ない。
島の中心部へと向かう。
ちがやは 堂々と後をついていく。
仲間たちは警戒を強めていた。
当然だ。
今から海賊の本拠地に向かうというのに、ふんぞり返るちがやがおかしい。
でも 逆らえなかった。
── これは、海賊全員の運命がかかっているからだ。
こうして、ちがや達は 海賊の本拠地へと辿り着くのだった。