水中探検
翌日、ダイビング体験
ハンスやジェイソンが「潜るのが楽しかった」と言っていたため、せっかくならと ネアに依頼し、ダイビングを経験してみることにした 。
今日は潜るということで、専用の ダイビングスーツ を着込んでいる。
水中はとても寒いため、ダイバーにとって必須の装備 だ。
さらに 呼吸用の魔道具 により、長時間の水中探索が可能となっていた。
── いざ、水中探検!
ドボン! と海へと飛び込み、ゆっくりと目を開ける。
昨日とはまた違う、 美しい光景 が広がっていた。
浅瀬とは異なり、生物も多く、群れをなして泳ぐ魚たちの姿が見える。
大きな水中生物も悠々と泳ぎ、生き生きとしている。
目を キラキラ させる一同に、ネアが「進んでみよう」と合図を送った。
こくり と頷き、全員でその後をついて行く。
魚とのふれあい
水深 10m ほどの海底に辿り着くと、魚たちが寄ってきた。
どうやら ダイバーたちが度々現れるため、人馴れしている ようだ。
人差し指を突き出すと、魚たちは ツンツン とつついてくる。
可愛い。
予め渡されていた餌をあげると、 パクパク と食べ始める。
── 皆で笑い合った。
もう少し進んでみると、さらに 深い場所へと到達 する。
水中での出会い
「ぶくぶく(イルカや!?)」
「ぶくぶく(可愛いです!)」
水中では話せないことを忘れ、 思わず息を漏らすちがやとリリス 。
イルカ が歓迎するかのように、ちがや達に 擦り寄ってくる 。
なんと 5頭もいる 。
全員でスキンシップを楽しんだ。
── ここのイルカは、ジェイソンにすら懐いている。
彼も 心なしか嬉しそう だ。
「これなら空飛ぶクジラもいけるんじゃね?」
そう思ったものの、個体差の可能性もあるので、断言はできない。
そもそも ここには空飛ぶクジラはいないだろう 。
そんなことを考えながら、目の前のイルカとふれあう。
── 感動だ。
日本でも、ここまで近くで触れ合えることはなかなかないだろう。
イルカが指し示すもの
貴重な体験に微笑んでいると、 イルカが何やら上を鼻で指し示している 。
ネアに尋ねるが、彼女にもわからないという。
思い切って、イルカの言う通り水面に浮上してみた。
── すると、イルカも顔を出す。
そして、 あっち と言わんばかりに鼻で指し示す。
「…あんなところに 島 なんかあったか?」
「なかったはずよ。私も初めて見たわ。」
── そこには、海の上にぽっこりとそびえ立つ島があった。
どこかで見たことがある気がする、とちがやは考え込む。
すると、ルナが ピン! と閃いたように、その島の正体を教えてくれた。
「ちがや! あれ 玄武様 よ!」
「……あっ!」
そういえば 前に会った時も、上にいたのに気づかないほどデカかった 。
思い至り、近づいてみることにした。
玄武との再会
「ちがや、玄武ってなんだ?」
「四聖獣や。前に会ったことあんねん。」
「四聖獣!!?」
初めて聞いたハンスとネアは、 大層驚いている が、気にしない。
久しぶりに会いに行こう。
そう決めると、イルカに頼み、玄武の近くまで引っ張ってもらった。
「おーい! じっちゃーん!」
── ざばーん!!
激しい波と共に、 四聖獣・玄武 が ひょこりと顔を出した。
「おお、ちがや達か。久しぶりじゃのぉ。」
玄武は、ちがや達のことをしっかり覚えていたようで、 穏やかに話しかけてくる。
玄武の悩みと決意
「じっちゃん!? もっとゆっくり起きてくれや!? 死ぬかと思ったで!」
超巨大な玄武が顔を出しただけで、軽い津波が発生する。
もしダイビング装備でなければ、確実に溺れていただろう。
他の皆も なんとか水面に顔を出した。
「すまんすまん、ちがやの声が聞こえたから、ついな。」
毒気のない玄武に 呆気にとられていると 、今度はゆっくりと頭を寄せ、 上に乗せてくれた。
「ちがや… 四聖獣様に乗っちゃってよかったの?」
これには ネアも焦っている。
本来なら 出会うことすらありえない存在 の上に乗っているのだ。
その事実に、恐怖すら感じていた。
「大丈夫やて! じっちゃん、見ての通り優しいからな!」
ちがやの言葉にひとまず安堵するが、聖女のリリスは フェンリルに続いて玄武に出会ってしまったことに震えている 。
「お姉ちゃん… まさかと思いますが… 四聖獣様全員と会ったことが?」
── そういえば、話すのを忘れていたな。
ちがやは 軽く目を逸らす 。
「ポチを助けた時に、ちょっとな…」
── 姉なら、不思議ではない。
しかし、それでも 四聖獣を“じいちゃん”呼ばわりしている 姉に、リリスは 驚愕していた 。
海を荒らす不届き者
「それより、いつもここにいるのか?」
「いや、いつもはもっと奥にいるのだが… 最近、この海を荒らす不届き者がおってな。 近付かせないために、ここで見張っていたのだ。」
玄武は 南を守る四聖獣 。
つまり、 その仕事をしていたのだろう。
「不届き者ってどんなやつなん? 魔物?」
「人間だ。所謂“海賊”というやつらだな。」
── やはり、海賊か。
ちがやは どう対処するか考えを巡らせる。
決意
「ほな、明日いこか。じっちゃんは、一応ここ守っててや。あとはこっちで何とかしてみるわ。」
「本当か? 助かる。」
その日は 玄武と別れ、ホテルに戻り、翌日の準備を始める のだった。