魔除けの石、愛される
ちがやが変質させた魔除けの石は大阪の教会に丁重に奉納された
真っ白でまんまるの姿がどこか可愛らしく運ぶ時のシスターは微笑ましい気持ちになった
まるで産まれたばかりの純粋無垢な赤ちゃんのような雰囲気を感じるのだ
それにこの石、不思議と触るとぽかぽかしている
魔除けの効果は確かで強力な結界を展開していることはわかるのだがぬくもりがあるのは生き物のようだった
シスターは毎日祈りを捧げ御神体の石に微笑みかける
教会にきた大阪の人々も不思議とこの石に愛着を持っていった
シスターと同じようにまんまるでなんか可愛いと言っている
やはりこの石からそのような雰囲気が出ているようだ
シスターは毎日綺麗に磨いてあげることにした
特に汚れているわけではないがなぜか触れ合いたかった
よしよしと微笑んでいるとますます愛着が湧いてきた
まんまるなのですぐコロコロ転がってしまうので細心の注意が必要だ
でも、一度だけうっかり落としてしまって焦ったことがあったのだが全くの無傷だった
汚れないし超頑丈、傷すら付かない
結界を張って魔除けをしているので本体にそのような効果があっても不思議ではない
不思議ではないがこれを渡してくれたちがや様のことを考えるとまさかなと思った
まんまるですぐ転がってしまうので座布団のようなものを敷いて転がり防止を施した
以前まで使っていた木製の台よりしっくりくる気がした
毎日祈りを捧げていたら座布団の上で少しだけ動くようになった
急いでちがや様に報告したら驚いてはいたが何か心当たりがあるようだった
完全に意思を宿しているようなので名前を付けてあげるようにお願いした
結果「ましろ」という名前になった
真っ白いからましろ 純粋という意味も込めたという
ひと目見た時から赤ちゃんみたいと思っていた私にはすごくぴったりだと思った
ちなみに女の子の名前らしいのでましろちゃんと密かに呼ぶようになった
案の定大阪の人にも呼ばれるようになり今まで以上に動くのでヒヤヒヤした
座布団を大きくしよう
動ける範囲が広がったせいか大きな座布団の上をコロコロ転がっている
心なしか楽しそうだ なんだかほっこりした
大阪の大工さんが落ちないようにふかふかな仕切りを作ってくれた
座布団より外にでるとストンと止まるのですごく安心した
完全に赤ちゃんを育てる母親の気分だ
そんなときだった
ついにましろちゃんが話せるようになった
祈りを捧げている時に話しかけてきたので最初は神様かと思った
でも眼の前でコロコロと転がりながら自己主張しているのでさすがに気付いた
名前の通り純真無垢な子どものように話しかけてきてくれる
とても賢く今までのこともしっかりと覚えているらしい
私もお礼を言われたので思わず抱きしめそうになった
転がりやすいのでギリギリで我慢した
その代わりそっと抱き上げてよしよしと撫でてあげた
ちがや様がきて話し合った結果この子はこの子の意思でここに残ってくれることになった
その場で飛び跳ねて喜んだ 外聞なんか気にならない程嬉しかった
この子のことをよろしく頼まれ私のことをましろのママと言ってくれた
育ての親程度に思っていたためちょっとだけ泣いた
ちがや様はこれからも顔を出してくれるようだ
旅をしているので本当にたまにだが、ちがや様もこの子をしっかり気にしてくれていて嬉しかった
私はこれからもこの子を見守っていこう
そしてこの子はトレードフロントを見守ることだろう