胡蝶、未来を改変する
バルザックが聖女の力で嘘を付けない状態にされた
リリスは神々しい光で輝きながら杖を構えている
最初からそれ使えば余裕やったんちゃう?
と考えるちがやだがまだバルザックへの警戒を緩めたわけではない
証拠を集め終わり、状況を整えた、でもバルザックはまだ手札を隠してると考えていた
だからこそここで合流し力を合わせてトドメを刺そうと考えていた
だが、バルザックが最後の最後で取り出したそれはとても見覚えのあるものだった
魔法国家で何度も目にしたちがやの父親がばら撒いたスタンピードを巻き起こすための魔道具
街ごと道連れにする気かと手を伸ばすが届かない
魔道具が起動しゴゴゴと大地が揺れ始める
ジェイソンとヴァルガは瞬時に外へ出て応戦しにいく
だが、どう頑張っても間に合わない
でも・・・全てをひっくり返すことはまだできる
「今日が満月でよかった・・・」
窓の空には暗闇を照らす満月が輝いている
そして隣にはわかったと言わんばかりのルナがいる
最高の状況だ
その瞬間、バサリとちがやの月光蝶の羽が雄々しく広がり展開された
世界は一瞬で虹色に染まりその中でちがやだけが行動している
時が止まった
亜神として覚醒したちがやは時を変質させ自在に変えられる
ちがやは固まったバルザックの元にゆっくりと近づく
ひらりはらり
胡蝶の羽が輝きを散らす
誰もが絶望し諦めた世界
それはもう確定してしまったのかもしれない
だが、ちがやは考えていた
あの魔道具がもしも
もしも最初からスタンピードを引き起こすための魔道具じゃなかったら?
破滅を望む者へ一矢報いることができるのではないか?
魔道具に手をかざし変質を開始する
禍々しい姿だった魔道具は真っ白でまんまるの綺麗な石へと変化していく
それはちがやのちょっとした意趣返し
破滅を生みだす魔道具を街全体を守る魔除けの石にする
父親の思惑もバルザックの思惑も全てひっくり返す行為
ちがやはにやりと笑って変質を終わらせ・・・
バルザックが魔道具を起動する前まで時を巻き戻した
「こうなったら・・・!ん!?」
道連れにするためにスタンピードを巻き起こす魔道具を取り出したはず
はずなのに
なぜかその手には禍々しさを一切持たないまるっこい綺麗な石に変わっている
起動してみるが結界が展開しただけで何も起こらない
心なしかこの石に守られてる気さえする
「ちがや・・・もしかしてなにかした?」
「ルナのおかげやで」
その日バルザックは何もできずに警備隊に捕縛された
ちがやの変質の力によって魔道具は街を守る魔除け石になり
魔道具で破滅した未来は、最初からなかったことにされてしまったのだ
誰も傷付かない未来に変えられた人々は知らない
この街が一度滅びかけていたことを・・・