胡蝶はダストエンドに侵入する
ダストエンド
トレードフロントから西に進んだ森の中の開けた場所にあると言われている
ちがやの商人ネットワークによるとバルザックがダストエンド方面にコソコソと護衛と一緒に進んでいるところを見たらしい
ダストエンドは都市伝説なようなもの
あると言われているが存在が確認できない
その場所が確かなのか確認するのと入口を突き止めるためにルナの追跡魔法でバルザックの後を付けた
ちがやとルナは迷彩ローブで隠れながら後を追うと案の定噂の場所に辿り着いた
ちがやは証拠にするために音とフラッシュを消して写真をパシャリと撮影
ルナにも頼んで魔法で別角度からパシャリと撮影する
気分はパパラッチだ
ちがやの記者魂が燃え上がる
そんなことを考えていると例の場所で何やら魔石を取り出し手にかざしている
するとシュピンとバルザック達の姿が消えた
なるほど、何も無い広場に見えるここで魔石を鍵しにして転移するんやなと感心するちがや
「いやいや!魔石ないと入れんやん!?てかあの魔石なに!?」
ちがや、早速躓く
侵入方法も場所もわかったのに鍵がない状況だ
しかもただの鍵では無い
転移できる魔石だ
そんなもの見たことも聞いたこともない
そう思っているとルナがちょんちょんとちがやの肩をつつく
「ねぇ、ちがやなら作れるんじゃない?普通の鍵ならともかくあれ魔石でしょ?」
そうだった
ちがやは普通の鍵はピッタリのものを想像できないので宗教国家でもジェイソンに壊してもらったが今回は違う
魔石、つまるところ魔法なので細かい鍵の構造は考えなくていい
正確には複雑な魔法式が必要なのだが、ダストエンドまでの道とバルザックの後を追うことを想像すればなんとかいける
ざっくり系創造神ちがやなのだった
ポンっと出したちがやの魔石をかざすとあっさり入れた
バルザックもいる
成功だ
「ここって地下みたいね・・・どうやって作ったのかしら」
日差しが差し込まない薄暗い洞窟の中のようだ
結構広々としているが人為的に掘り進めたとは思えなかった
バルザックの後を追うとそこには地下とは思えない小さな集落のような場所があった
奴隷のような首輪を繋がれた人や山賊なようなやつもいる
よく見ると薬物までも取引している
これにはちがやも眉間に皺を寄せる
必要悪と思っていた
思っていたが想像以上に酷いかもしれない
それなりに人で賑わっているがそれはスラムとは違う
悪い意味で人が賑わっている
目を覆いたくなるような事実がそこにはあった
そしてここにきたバルザックは奥へ進み顔を隠した男と取引を始める
金を渡し受け取ったのは薬物だった
ちがやとルナはその証拠を掴んだ
だが、このままでは薬物が表に流通してしまうと思ったちがやはバルザックにバレないように違法な薬物を紅茶の茶葉に変えておいた
これで設けることも無ければ薬物依存になることもない
まぁ、既に薬物に依存してる奴らは怒るだろうがそこまで面倒見る気にはなれなかった
バルザックが帰っていきちがや達は中を探索することに決めた
中身が紅茶とわかったバルザックのことはもうどうでもいい
ダストエンドはそこそこな広さがあった
とはいえ、どこへ行っても違法なことしかしていない
何度ぶち壊そうとしたか
奴隷など被害に遭ってる人もいるのでなんとか我慢した
ここは地下、暴れたらどうなるかはわかるというものだ
崩壊したら目も当てられない
そんな時だった
一番奥の牢屋にここには不釣り合いな男が捕まっていた
男はルナの兄に負けず劣らずイケメンで何やら気品があるように見える
それに一番奥の牢屋に1人という状況がこの男は特別なのだとわかる
「ルナ、あいつなんか他の奴隷とちがくない?」
「そうね。座り込んでいるのに何かオーラがあるというか・・・」
「ルナ、ちょっとそこに人避けの魔法張ってや」
「ちがやまさか!?」
ちがやはひょひょいと魔法で牢屋を破壊し中にいた男の腕を掴む
「っ!?お前達どこから・・・」
男は突然現れたちがやに驚愕するが手を引かれあれよあれよという間に夢境の中に連れ込まれた
「ひとまず避難するで~ルナ~」
「はーい」
ルナも一緒に夢境に入りちがや製の夢境ハウスの中にでる
「え?え??」
牢屋から一気に景色が変わり困惑している
ちがや達は男を椅子に座らせ話を聞く準備をしていかのだった
「ここは・・・地上・・・なのか?」
牢屋と繋がっているとは思えない程綺麗で明るい家だ
窓の外には自然もある
陽の光もある
それなのに静かで何故か落ち着く
当たりをキョロキョロしているとちがやが説明してくれた
「いや、それとは別の空間や。あんちゃんに話聞きたいけどあそこだと不安やったからな。ちょっと安全な場所に移させてもろたで」
「ダストエンドのやつじゃないってことか・・・それならいいが・・・」
「まぁ、ひとまず疲労してるやろから茶でも飲んでや」
といいつつコップに入れたスポドリを手渡す
「ん?なんだこれは!?美味い!!じゃなくて力が回復していく!」
「おぉ、ルナみたいな反応するんやな。意外とおもろいやつかも」
捕まって肉体も精神も疲労してるだろうとスポドリを選んだのが正解だったようだ
ちがやのスポドリは体力や魔力も回復するスグレモノ
男は嘘みたいに回復した自分の身体をぺたぺたと触って確認している
「誰だって同じこと思うわよ!」
「ルナだと?もしかしてルナ公爵令嬢か!?」
「え?私のこと知ってるの?」
「あぁ・・・まさかと思うが君がミラなのか?」
「お、ミラの名前が出るとは思わんかったわ~!もしかして帝国の人なん?」
ミラのことを知っている人は少ない
そして、ルナのこと知っているということは自分達を捕まえて研究材料にしていた帝国の連中かと思い至った
「私は帝国の第一王子ハンスだ・・・君達のことは捕まる寸前に知った・・・帝国の第一王子として謝罪させてくれ!この通り!」
男は椅子から立ち上がり地面に床を擦り付けるように土下座をした
本来なら王族がそこまですることはありえないことだ。
なのにこれ以上ないほどまで誠意を込めて土下座している
それだけ申し訳ないと思っていることが伺えた
「思わぬ大物出てきおったな・・・帝国にもまともな王子がおったことの方が驚きやわ」
「ひとまず顔を上げて。捕まってこんなところにいるってことは何か事情があるんでしょ?」
ふむふむと感心してるちがやに変わってルナが王子を立たせる
「話せば長くなる・・・」
そして語られる帝国の現状
どうしてここにいたのかを