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堕ちた勇者の四天王ヴァルガ

ヴァルガには主がいる

 太古の昔魔王と戦い打ち勝った勇者

 それがヴァルガの主

 だが、時が流れ勇者は堕ちた勇者としてこの世界で暗躍している

 その仲間が四天王の憤怒を司るヴァルガなのだ

 そんなヴァルガだが、仕事で請け負ったとはいえあまり乗り気ではなかった

 なぜならヴァルガは、怒りの矛先になってくれる存在を探しているからだ

 依頼にあるのは年端もいかない少女

 怒りの矛先にするにはいささか物足りなさを感じていた

 彼女は宿を借りて生活しているらしい

 そしてその宿は簡単に見つけられた

 依頼は暗殺、目立つのは避けた方が良いかととりあえず様子をみることにする

 しばらくするとターゲットの少女が元気に外に出てきた

 それも一人だ

 これはチャンスだとしばらく背後をついていくと自分から路地裏に入っていく。

 誘い込まれている

 これはバレてるなと思い大人しく姿を見せる

「おっちゃん、うちのストーカーやろ!」

 ビシリと指差す少女にそうだけどそうじゃないと叫びたかった

「お前に恨みはないがお前を殺してくれと頼まれてな。悪いが死んでくれないか?」

「ふむ、うちを殺しにきたんか。まぁ、思い当たる節しかあらへんもんな」

 なんだこいつ、調子が狂いまくる。そこはもっと怖がって逃げたりするべきだろう

「あと、うちをねらうちゅうことはジェイソンを呼び出すってことやからな」

「なっ!?」

 気付いたら俺と同じぐらいの男が背後に立っていた

 全く気配を感じなかった

「大丈夫か?」

 男は俺を無視して少女に声をかけている

 なんなら俺に背を向けて心配している

 こいつには余裕を感じた

 相当な実力者だ

 でも無視すんなよ

「平気や、なんかこいつあんまり悪いやつのように思えんでな。いまだって、殺すチャンスいっぱいあったのに」

 それはお前のせいでもあるんだが、乗り気じゃないのは確かだ

「よくわかってるじゃねえか。正直この依頼はあまりやりたくねえんだわ。どちらかというと俺のが戦いたいのはお前」

 そう、ジェイソンという男

 俺はこいつと戦いたい

 圧倒的余裕を放つこいつに一泡吹かせたい

 そしてこいつから『憤怒』を引き出してやりたくなっていた

「俺だと?」

 ジェイソンがギロリと睨んだ気がする

「俺の怒りをぶつけても受け止めてくれそうなほど強そうだからな!ジェイソンだったか?俺と遊んでくれよ!!!!」

 俺の力は相手を強制的に憤怒状態にする

 それは自分の同じで怒りの大きさによって強さも変化する

 そして俺はそいつの本質を暴くのだ

「これは!?」

「お前も怒りが湧いてくるだろう?これが俺の力烈火の炎だからな。過去の怒りを押し殺しているなら思いっきりぶちまけようぜ!」

 そう、俺がジェイソンとやり合おうとしていると小柄少女ことちがやが鬼の形相でドロップキックをかましてくる

 俺は咄嗟に回避するが小柄の少女から放たれた蹴りとは思えないほど威力があった

「なにウチを置いてよそ見してんのやごらあああああ!」

「お前もこっち側なのか!?」

 こいつどんだけ過去を背負ってやがる

 これだけの憤怒、なかなかないぞ

「なんか腹たってきたわ~!これがお前の力なんやっけ?」

「だとしてもお前のような少女に何ができる!」

 俺の力で強化されてるとはいえ元は物理タイプではないだろう

 そう思っているはずなのになぜか気持ちが焦る

「亜神となったうちをあまりなめんほうがええぞ?ジェイソン!お前にも送っておいたから一緒に叩きのめすぞ」

 亜神?何を言ってるんだこいつ?

 そんなことを考えているとジェイソンまでが戦闘に入る

 しかもちがやがジェイソンを強化しているようにも見える

 ジェイソンはこっちの方がいいとほくそ笑んでいる気がする

「ありがとう・・・やはりこちらのほうがいい」

「最高な展開だ!!俺の憤怒受け止めてみやがれ」

 こうなったらヤケだ

 俺は真っ先に弱そうなちがやを狙うが彼女を手をかざした瞬間に一気に怒りが鎮まる

「ほい、消失」

「な!?」

 どうなっている?と考えていると鬼人の如く勢いでジェイソンが殴りかかってきた

「誰だか知らんがくたばれ!!」

「ぐはああああああ!!!」

「まだいけるやろ?立て!」

 凄まじい威力の拳をくらい建造物を破壊しながらようやく停止する

 いやいや、なんだよこれ!?

 まだまだやる気なようだが俺はそんな力残ってねぇよ!

 一発でボロボロなんですけど!?

「ちょやめ・・・やめてええええええ」

 その日俺は学んだ

 怒りを引き出したらいけない相手がいることを

 そしてボコボコにされた


「すんませんでした・・・もう狙ったりしません」

「憤怒のなんちゃらとかいって強そうだったのに呆気なかったな」

 せめて名前ぐらい覚えてくれ

 泣きたくなる

「そのアイデンティティ消されたんだから降参するだろう」

「怒りは落ち着いたがこれで完全にお前の能力は切れているってことでいいんだな?」

 人の力を汚物のようにいうのやめて?

 普通に傷付くぞ

 「それはそうだが・・・なんでお前らの方がきれてんだよ!」

 烈火の炎が切れてるはずなのにまだイライラしているように見える

 いやそりゃあ、俺が悪いんだけどもう勘弁して欲しい

「ウチ、元から短気やし」

「俺も似たようなものだ」

 この2人普通じゃない

「そもそも2対1は卑怯じゃないか?俺はジェイソンと戦いたかったんだ」

「サポートもなし?」

「なし!お互い憤怒状態で戦いたいんだよ!本気のぶつかり合い!熱いだろう!?」

 もう暗殺なんてどうでもいい

 プライドも捨てるだから俺は自分の本心をさらけ出し説得する

 まぁ、無理だろうと思っていた


思っていたのだが

 「というわけでやり直し」

 ちがやはあっさり了承してくれた

 そしてジェイソンも承諾してくれた

 普通じゃないとか言ったのは取り消そう

 こいつらはいいやつだ

「ジェイソン!!もっと怒れ!今まで溜め込んでいた分全てぶちまけてみろ!」

「なら、本気で行く!」

 1体1でぶつかり合う

 これだよこれ

 リミッターを外した全力同士の戦い

 これをやりたかったんだ

 あまりに楽しく笑いが込み上げてくる

「おお、なんか空とんでんな・・・・これが憤怒状態の二人の実力」

「これだよこれ!!最高だジェイソン!!」

「ああわかってきた!俺もわかってきたぞヴァルガ!」

 お互いノリにノル

 ボコボコに殴り合う

 それでも一歩も引かない熱い展開

 でも、冷えきった目でこちらを見ているやつが一人

「なんか盛り上がってるし帰ろう・・・・」

 まぁ、いいか

 何故ならこの楽しい時間を終わらせたくないからだ

 その後も俺たちはぶつかり合い

 最後に力尽きてお互いを賞賛しあうのであった


「がっはっはっは!お前の拳最高だったぞ!」

「ふふ、お前もな」

「おお、殴り合ってわかり合ってきたみたいやな」

 ちがやが冷めた目で見てくるが気にしない

 「ジェイソンはダチだ!」

「あぁ、そうだな」

「男同士わかりあうのはいいんだけどさ・・・それ大商人から依頼されたちがやの暗殺じゃなかったの?」

「この人が暗殺!?なんか話の分かるいい人にしか見えませんけど」

 仲間のリリスという少女が俺を見てくる

「あの依頼はやめだやめだ!そもそもやりたくなかったんだ!胸糞悪い」

「ということは寝返ってくれるんか」

「おうよ、あの腐れ商人ぶっ飛ばしに行くならいくらでも協力するぜ」

 元からいけ好かない野郎だとは思ってたんだ

 今更あいつの肩を持つ気は無い

 むしろこいつらの善良さに当てられて苛立ちすら覚えてしまう

「それでは相手と同じですよ」

「お、おう・・・リリスだっけ?」

 そういえばそうだったと思い直す

 こいつちっこいのに言いたいことはハッキリ言うんだなと感心する

「はい、ジェイソンお父さんと互角に戦うなんてすごいですね!」

 そう言われると悪い気はしない

 というか父親だったのかあいつ

 いや、見た感じ血の繋がりはないのだろう

 まぁ、そんなことは些細なことだ

「それで、あなたは誰であなたに暗殺を依頼した商人はどんなやつなの?言っておくけど私はお姉ちゃんだからちがややリリスのようにちょろくないわよ」

 ギロリと睨まれるが当然のことだろう

 むしろ1人ぐらい警戒心があるやつがいて安心ってものだ

 俺は素直に自分のことと商人のことを吐露した


「大商人バルザック・・・やっぱり目をつけられたかぁ」

「まぁ、あれだけ派手に動いてたらそりゃあね。」

「ヴァルガ、お前も始末されるんちゃう?」

「あぁ?そうなったらやり返すだけだろ?それにお前達にも刺客を送られるだろう」

 さっきまでやり合ってたとは思えないほど俺の心配してくるんだなこいつ

 俺はどうにでもできるがお前らのほうがやばいだろう

「うーむ・・・毎回追い返すのも面倒やな・・・」

「殺されるとは微塵も考えないのな」

「考えてないわけじゃないで・・・ただまぁ、逃げるのはもうやめただけやわ」

「肝が座ってんな・・・」

 わかっていながらその態度か

 見るからにまだ子どもなのにどんな修羅場を渡ってきたんだ?

 普通そんなに達観できねぇよ

 というかこいつ面倒くさいとしか思ってなさそう

「ねぇ、その大商人って悪いこともやってるのよね?国が捌いたりしないの?」

「あいつは証拠を消すのが上手いからな。そりゃあ、証拠があればこの国でも捕まるだろうがそれを出来ないからこうやって俺を送り込んでるんだろう」

「一応、捕まることはあるんやな。ほならやり方はあるわ」

 そりゃあ、この国自体が完全に腐敗してたら詰んでるかもしれないが簡単なことじゃねぇぞ

「お前まさか・・・あいつを引きずり下ろすつもりか?」

「ふひひ」

 俺は察した

 こいつらがなぜちがやを中心にしているのか

 こいつはあれだ

 敵に回したら駄目なやつだ

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