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宝の持ち腐れ

 「ルナ……うち、稼ぐ意味なくなってきたかもしれへん……どうしよう」


 商人としてお金を稼ぐことは目標だった。

 だが、今やSSSランクの超大金持ちとわかったちがやは、働く意味を見失いかけていた。


「人って目標を失うとこんな顔になるのね……しっかりして! お金なんてどうせ使うんだから大丈夫よ!」


 ルナが励ますも、ちがやは力なく笑う。


「へへ……この前使った大金……1日で回復したんやて……不労所得やで? 働く意味ないやん」


「あの金額が!? さすがSSSランク商人ね……もう何か投資でもしてみたら?」


 これにはルナも驚いたが、さすがは公爵令嬢。

 すぐに金の使い道についてレクチャーし始める。


「商業ギルドにはもう投資されているのですよね?」

「せやで……」


「冒険者ギルドに投資……と思ったけど、何か意味あるかしら」


 冒険者ギルドも資金を使う機会は多い。だが、素材や依頼料などの収入があり、投資先としては不透明だった。


「個人や団体、商会はどうだ?」


 そんなちがやに、ジェイソンが心配そうに提案する。


「団体……団体かぁ……ふむ」


 悪くない気がしてきた。

 そうだ、仕事だ!

 ちがやはワーカーホリックだった。


「大阪区に作った職業訓練施設を各地に作る?」


「せや、仕事斡旋も行って各地で仕事を失った人たちに提供するんや。雇用が増えれば経済は潤う。経済が潤えば人々も安心して暮らせる。世界中に存在する貧困層を少しでも減らすんや」


「夢はありますけど、莫大な費用が必要ですよ……いくらちがや様でも、そこまでは……」


「金は使ってなんぼや! うちはまだまだ稼ぎたいねん! いくらでも稼いでやる!」


 使わない金は、貧しい人のために使おう。

 利益はないが、それでいい。

 なぜなら、どうせまた増えてしまうから。

 そんなことよりも、新しい商売をして商人として働きたい。


 ちがやは、仕事欲しさに投資することを決意したのだった。


「ふわあ! 神様ちがや様!! 人員はこちらにお任せを!! 各地の根回しも商業ギルドで行いましょう!」


「交渉成立やな……ほな……これ、新商品な」ドサッ


 そして、ちがやは大量の新作を置いて販売を任せたのであった。


「……ありがとうございます!! 神様ちがや様!!」


商品を考える楽しみを取り戻したちがやはギルマスに呼ばれ商業ギルドに皆で赴いていた


「え?各国別荘??」


 それはちがやの貯めすぎたお金の使い道


「はい、事業自体はかなり順調で正直余っていますので思い切って別荘の購入はいかがですか?」


 職業訓練の事業に多大な費用を使用したにも関わらずちがやの資産は増える一方だ


 それはちがやが新商品を絶えず販売してくれるおかげでもあるのだが、逆に言うとそのせいでもあった


「各国って、帝国、魔法国家、宗教国家、商業国家、魔王国全てですか?」


 貴族のルナも別荘ぐらいは持っている


 とはいえ各国にはさすがにない


 ちがやの資産の巨大さがわかるというものだ


「全てです!場所は首都か王都ですね」


 物価が高い首都で尚且つ5件


 これなら確かにちがやの資産も減りそうだ


 だが、ちがやは現実主義だった


「それ必要か??」


 そう、貧乏庶民だったちがやには必要性がわからない


 家なんて1つあればええやろと考えなのだった


「ちがや様ご一行はこれからも旅をされるのですよね?でしたら国ごとに別荘を持っていてもいいのではないですか?」


「管理はどうすんねん?」


 渋るちがやにギルマスも負けじと提案するが買ったあとのことも考える


「そこは責任を持って商業ギルドの方で手配致します。」


「魔法国家と商業国家はええけど宗教国家は実家があるからええわ。帝国と魔王国に関しては自分でみて決めさせてくれ。その2国は不安すぎるわ」


 これは買うまで返してくれないなと思ったちがやは妥協案を提示する


 ギルマスも納得し、物件の書類を見せてくれた


「それではこちらが物件の詳細ですね。まずは魔法国家から」


「え?なんかでかくない?別荘ちゅーか屋敷やんこれ」


 見取り図と写真を見ると思っていたのとなんか違う


 公爵家とまではいかなくともそれなりでかい


 普通に屋敷と言えるサイズだ


「ん?別荘だしこれぐらいじゃない?」


「ん??」


 2人は何か噛み合っていないことに勘づく


「「ん?」」


 そしてギルマスまでも


 3人は価値観が全く違っていたのだった




「なるほど、ちがや様の別荘は一軒家ぐらいの大きさだったのですね。通りで話が噛み合わないわけです」


 その後、話し合った結果


 ちがやが想像していた別荘は日本でもあるような一軒家サイズの別荘


 そして、ルナ達が想像していたのは屋敷を小さくしたような別荘


 故に噛み合わなかったのだ


「だって、たまにしか帰ってこんのに屋敷サイズは維持する意味がわからんわ」


 持った無い症候群のちがやには理解できなかった


 たまにしか帰らない屋敷


 それってもったいなくない?と


「たまに帰るためでしょう?」


「公爵貴族の価値観!!」


 根っからのお嬢様のルナは当たり前のように首を傾げるが即座にツッコミを入れられる


「ですがちがや様、貴族より稼いでいるので一軒家を購入してもあまり意味がありませんよ。」


「ええやん!うちは狭いほうが落ち着くねん!根っからの貧乏気質やねん!」


 金は使わないといけないけどちがやの性格に合わないのだ


「ちがや様は貧乏とは程遠いかと・・・」


 ごもっともなツッコミが飛んでくる


「わかっとるわ!!」


「要するにお金を流すためでしょう?屋敷を買えばお金を使えて維持するために雇用が産まれる。なんならそこに住んでもらったらその人にとって住む場所もできる。」


 建設的な意見でちがやを説得しようと試みるもちがやはジト目で駄々を捏ね続ける


「嫌な性格なやつに乗っ取られそう・・・」


「そこは私達でしっかり調査しますって・・・」


「お姉ちゃん、雇用する人の面接をしたらどうですか?それなら住んでもいいと思えませんか?」


「面接っちゅーても他国やろ?行ったり着たり大変ちゃう?」


 ちがや達も帝国から商業国家までかなりの月日を費やした


 国内ならまだしも国外から面接にだけ来てもらうのはあまりにも申し訳ない


 と思っていたのだが


「くじら航空があるのでそこまで時間かかりませんよ?」


「くじら航空??なんやそれ?うちら歩いたり馬車できたんやぞ?」


 ちがやが一度も聞いた事ない単語に困惑する


 まさか、自分達の努力は水の泡だったのではと考えると魂が抜けそうな思いだった


「超巨大な動物でとても温厚なので空を飛んで運んでくれるんです。空港に行かないとみないものなのでそれで気付かなかったのでは?」


「そんな楽しそうな動物おるなんて思わんやん!!なんやくじら航空って!めっちゃ乗って見たかった!」


 ちがやの中でおっきなクジラと楽しく空を飛んでいる自分を思い浮かべる


 ただでさえ見た事ないクジラが空を飛ぶという不思議がちがやの好奇心を燻った


「私達、目立つの避けてたでしょ?だから言わなかったの・・・」


「これから機会がありますよ?ね?お姉ちゃん」


 「リリス・・・せやな・・・取り乱してごめん」


「あとこれは推測なんだけどね、ジェイソンがいるから乗れないかも」


「あ・・・すまんジェイソン」


「いや・・・気にするな」


 一番悲しいのはジェイソンだと分かったちがやはそれ以上クジラのことを聞かなかったのであった

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