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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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幕間 隻腕の理由

 左腕を失って五年が経過した。


 その傷はすっかり癒えていたが、同時に背負った失恋の傷は未だに癒えないままだった。


 心の底から惚れた女は、けして結ばれるはずのない男に恋をしていた……いや、惹かれ合っていた。


 身分の違う者同士の恋だなんて、高尚な演劇だけで充分だ。俺が苛立ったのは、責任も負えないくせに女を孕ませやがったことだ。


 こんな奴は、王子でも勇者でも親友でも無え! ……そう言い切れたら、どれだけ楽だっただろうな。


 俺は親友に決闘を挑んだ。


 笑っちまうくらいの惨敗だった。


 そこは、黙って親友に殴られておけよ!


 正々堂々全力を出すんじゃねえよ!


 こちとら、左腕が無えんだからよ!


 それだってそもそも、お前の代わりに……いや、やめとこう。


 決闘の後、俺たちは必要最低限の会話しかしなくなった。


 そして、父親のわからない子を妊娠した『大聖女』は聖女の地位を剥奪された。


 生命を授かることが汚らわしいだと……? ふざけたことを抜かすんじゃねえよ!


 俺はブチ切れた。


 喧嘩だコラァ! 大聖女を孕ませたのは俺だコラァ!!


 ……教会本部に殴り込みをかけるのを、元聖女様に必死で止められた。


 そのお返しに、必死で口説いてやった。


 この俺ですら気が狂うほどの口説きだったんだから、口説かれる方はたまったもんじゃねえだろう。


 最初の一年は門前払い。二年目でようやく、まともに話を聞いてもらえた。


 「お前の娘を幸せにしてやれるのは、俺しかいねえ」


 それだけを伝えたら、ポカンとした顔のあと、ボロボロ泣かれた。


 馬鹿か俺は。


 こんなに強がってる女を、一人にしちまってたんだからよ。


 二年かけて、俺たちは家族になった。王都のギルドマスターをしていた俺は、王都から離れた小さな街のギルドマスターになった。薬草採取やドブさらいの依頼をまとめて、毎日を回していく。


 刺激は無いが、最高に幸せな日々だ。


 俺にちっとも似て無い可愛い娘は、今日も俺の右腕の中ですやすや眠っている。


 「パパ大好き」


 こんな単純な一言で、心臓を撃ち抜かれるんだから、父親って生き物はちょろいもんだな。


 娘が生まれてから、俺の妻は穏やかな笑い方をするようになった。


 「この子がいれば、もう何もいらないわ」


 おいおい、そんなこと言うなよ。俺もいるんだからさ。


 平和な日々は続くと思ってた。


 ……続くはずだったんだ。


 ぶっ壊しやがったのは、俺の元親友……いや、今でも親友だと思っている奴だ。グレアルのやつめ、勝手こきやがって……


 フレイマの王都が燃えていた。王都だけではない……王都を中心とした数百キロは、爆風にすべてを攫われ、跡形もなく消し飛んでいた。


 「必要だった」なんて、理由にならねぇんだよ!


 お前じゃなくても、出来たはずだろうが。


 なのに、お前は自分でやった。


 一人で背負って、カッコつけるんじゃねえよ!


 この国をぶっ壊して何になるんだよ!


 お前こそが、真の勇者なんだろ?


 紀元前の勇者の生まれ変わりなんだろ!?


 ……だったら、また生まれてこいよ!


 その時までに、この国は俺が完全にぶっ壊してやるからな!


☆★☆★☆★


 あれから三年が経過した。


 魔王が遺した魔素のせいで、ダンジョンができた。人間国に新しく出来たダンジョンは評判を呼び……この街の治安は最悪になった。


 タチの悪い冒険者は増え、チンピラは喧嘩を売り、ならず者どもは好き勝手に暴れまわる。


 そのたびに、俺は拳を握りしめる。


 腐っても元S級冒険者だ。そこいらのチンピラなんざ、片手で圧倒出来る。


 街を守るってのは、結局のところ、暴力のバランスを取ることに他ならねえんだ。


 ……笑っちまうくらいに、やりがいに満ちている。


 しかしよ、こいつらの幸せってなんなんだ? 奪って、騙して、その場を楽しんで……


 可愛い娘の顔でも見てた方がよっぽど幸せだろうがよ!


 ……ん? 防犯装置に反応があるな……誰かが鑑定魔法を使いやがった……それも、上位の鑑定魔法だ……


「ギルドマスター!」


 扉が乱暴に開かれた。


 いつも冷静な受付嬢のニーナが、息を切らして駆け込んできた。その瞳……何か魔法がかけられてやがる。


「ポーションを買い取れ?」


「ギルドカードも持ってねえ?」


「金も無いだと?」


 ああ、こりゃあ面白え。


 この街に、また厄介な奴らがやって来たみてえだな。

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