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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第九十二話 宴の準備

 ルーフと共に転移魔法テレポーテーションで結界を越えた。結界の隙間が開いているタイミングだと転移魔法が使える。それは同行者に対しても有効である……これは発見だ。


 タルトがしているように、結界魔法で隙間を広げられないかと試したが、今の俺では不可能だった。レベルの問題なのか、イメージの問題なのか……そうそう上手くはいかない。


 第一区画にやって来たゴレミたちと合流して、王都に戻る事になった。しかし……第一区画のマナファンガスたちは……多すぎないか?


「第五区画に植えようかとも考えたんだよ。でも森の美観が損なわれるし、サーシャも嫌がると思ったんだよ」


「否、サーシャが、それしきの事を嫌う訳が無い! 貴殿はサーシャを理解していない!」


「してるんだよ。サーシャの好きな果物から、サーシャの好きな草花まで、何でも理解してるんだよ」


「やはりドライアドだな。草木にしか精通しておらぬ! 人間国でのサーシャの振る舞いっ! それを知る我の方がっ!!」


「僕はサーシャが産まれた頃から目をつけてたからね。エルフ王国のサーシャを知ってるんだよ。子供のころのサーシャも可愛かったんだよー」


「ぐぬぬぬぬぅっ……」


 ……早速バチバチに争ってらっしゃる。武力のルーフか、狡賢さのアドちゃんか……喧嘩はやめてね。ルーフ、とりあえずその爪仕舞って。


「マナファンガスから放出される魔素も含めると、魔素切れになるのはどれくらいになりそうなんだ?」


 そうなのだ。素人目で見ても、相当量の魔素が放出されているのはわかる。


「僕とグゥインそれに、ルーフを加えても問題無いくらいだよ」


「うむ、これだけの繁殖力は異常だ。アドちゃんの力は認めざるを得ない」


「でも、ユグドラシルの大樹を考えると……」


「だよ。全然足らないね」


 俺たちが王都に戻った頃には、マリィさんとリーナさんが正気を取り戻していた。アドちゃんの指導の元にマソックマッシュルを口に入れ、二人は耐性を獲得した。


 ……さて、グゥインだ。身長が伸びた事に気付かなければ……こういうの苦手なんだよな……髪の毛の変化とか、気づくタイプではあるんだよ。自然に言うのが苦手なの……うーん。


「グゥイン、戻ったよ!」


 素知らぬフリでみんなの元に向かう。座っていたグゥインが急に立ち上がった。そして俺の隣に立って背筋を伸ばしている……実にわかりやすい……言える……今なら言えるぞっ!


「グゥインちゃん、背が伸びたんですよ」


 サーシャ、3秒早いっ! いま言えそうだったのにっ!


「あ、そ、そうだよな。わかってたよ……ははは」


 ダサい! 自分でもあまりにダサ過ぎるっ!


「全く、英太は鈍感な男じゃの……それだからサーシャと番になれぬのじゃ」


「……あっ! そうだグゥイン! お前に言わなきゃならない事が沢山あるんだよ!」


 旅の最中、俺とサーシャをくっつける為に散々仕掛けられたゴレミトラップ。絶対に指示をしたのは……


「英太さま、全て私の独断です」


 ゴレミのカットインが早い。そして圧が物凄い。主の責任にする訳にはいかないよな……でも、このシステムは良く無いな……グゥインのやりたい放題になる。


「英太よ、サーシャと番になるのは諦めよ。他にも生きの良い雌が増えたしのぅ」


「マリヤ、ちょっとウルフさんたちと遊んでおいで」


 さすが元冒険者、ギルマスったら、体格に似合わず判断が早い。


「ウルフちゃん、おでかけしよう。パパったらおかしいよね。私もつがいくらいわかるのに」


 一枚上手な5歳児……将来が楽しみでぇす!


「グゥイン、人間は雌じゃなく、女性って言うんだよ。相手を尊重していかないと嫌われるぞ。ざまあされるぞ!」


「うむ、嫌なのじゃ! 撤回する! 女性たちよ! 仲良くしてくれ!」


 グゥインの発する堂々たる言葉の裏に、若干の恐怖心が宿っているのを感じた。移民から受け入れられるのか……自分が邪神と呼ばれる存在である自覚……俺はグゥインの手を握った。


「大丈夫だよ」


「よろしくお願い申し上げます。国王様」リーナさんが頭を下げる。


「家族共々お世話になります」マリィさんも同様だ。


「ガハハハッ! 女じゃねえけどよろしくな! じゃねぇな! よろしくお願い申し上げます。グゥイン様」ギルマスも続く。


「我もだ! 宜しく頼む」フェンリルは独特だ。


「グゥインなりの普通でいい。でも、相手を尊重していこう……出来るな」


「うむ、出来るのじゃ!」


 グゥインの姿にギルマスが笑った。


「ゴレミ嬢が言ってた通りだ。可愛らしさと厳かさを兼ね備えてるな」


「本当、こんなに可愛いとは思わなかった」マリィさんはくびったけだ。


「グゥインちゃんは可愛いんです!」何故かサーシャが胸を張る。


「むむむ、可愛いと言われるのはこそばゆいのじゃ! よし! 貴様らに命令じゃ!」


「何?」


「貴様らを友達として任命する! 妾をグゥインと呼び捨てにするのじゃ! 妾も其方らを呼び捨てにする! 五分の盃じゃ!」


 突然の盃宣言に皆がポカンとする。


 今はまだ国とは名ばかりのだだっ広い集落のようなものだ。しかし、国を運営するとなると、秩序は必要不可欠になる。


「呼び捨てはまあ良いとして、国王なんだから五分はやめとこう。みなさん、仲良くしてあげてくださいね」


 その場にいた全員がグゥインを受け入れた。あぁ、この瞬間を見る為に俺は頑張ったんだ。


 ……あ、ヤバい……このパターンだと、いつものあれが来るかも……嬉しょん、ならぬ、嬉炎が……


「グゥイン、炎は……」


 あれ、来ない? あんまり嬉しくないのか?


「英太ヨォ、妾をいくつだと思っておルゥ? そうそう炎など吐き散らかさぬわァ!」


 粘着質な言い方は相変わらずだな。にしても、炎……我慢出来るようになったんだな……俺のいない間に何があったんだ?


「さぁて! 今宵は歓迎会じゃぁ! 皆には最上級の肉を振る舞うぞ!」


「あ、ごめん、その話しはみんなに言ってない。言ったら引かれるかと思ったし」


 今日はドラゴン肉ではなく、人間国料理を楽しんで貰おう。卵かけご飯も飽きて来たし、今日は餃子あたりを……あれ、皮って小麦粉だっけ? 薄力?


 結局、オーク肉のステーキ以外の食事はリーナさんとマリィさんに任せっきりになった。俺が焼こうと思ったが、火加減完璧なグゥイン王に奪われてしまった。


 リーナさんの宿屋をアイテムボックスから取り出し、王都の空き区画にドッキングする。宿屋として、立地的にはどうなんだろう? 王城建設予定地に近過ぎるのも……まあ、移動出来るからよしとしよう。


 デベロ・ドラゴでの宴は何度か経験しているが、今夜は格別だった。仲間が増えた。肉以外の料理がある。フルーツがある。酒があるっ!


 グゥインの飲酒に僅かな不安があったが、こちらにはフェンリルも居れば、安眠魔法もある。封じ込める策はあるのだ!


 マリヤちゃんとウルフも戻ってきた。ゴーレムたちも集結する。妖精さんたちもグゥインを小馬鹿にしている。後は料理の完成を待つばかり……ふいに、足りないものの存在に気付いた。


「英太よ、どうしたのじゃ?」


 周囲を探すが、何処にも見当たらない。


「いや、ツバサは?」


 俺のひとことに空気がピリついた。ん? なんだこの感じは?


 ゴレミとゴレオも俺と似た反応をしていた。


「英太さんたちが飛んで行ってからでしたね。グゥインちゃんから聞いたの」サーシャが俯いた。


「何が?」


「英太よ、落ち着いて聞くのじゃ……ツバサは死んだ」


 楽しい楽しい宴会の始まりは、少し遠そうだ。

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