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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第八十九話 思わぬ商才

 長い一ヶ月が終わり、ついにデベロ・ドラゴへと戻る当日となった。


 満月を今夜に控えた俺たちは、最後にエルヴィンさんの墓参りと、リーナさんにお別れの挨拶をする事にした。


「もう湿っぽいのはお腹いっぱいだから、お腹いっぱいになるところ見てもらおうよ」


 リーナさんの提案で、墓場でピクニックが行われる事になった。アラミナの街に残った人たちが総出で参加する、一大墓参りとなってしまう。


 ちゃんと話した事がある人はリーナさんくらいだったが、なんだか楽しいピクニックになった。


 そう言えば、外で卵かけご飯食べるのは前世も含めて初めてだな。暖かいご飯と生卵が必須だもんな。ピクニックには不向きだな。


 リーナさんの提案通りにお腹いっぱいになった俺たちは、エルヴィンさんとの別れも済ませて、三度目のチェックアウトを行った。リーナさんの宿屋には、既にお客さんは一人もいない。俺は勇気を出して、リーナさんを口説いてみる事にした。


「リーナさん、一緒に俺たちの国に行きませんか?」


 リーナさんは薄く微笑んで、こう言った。


「当たり前でしょ! 置いてくつもりだったの?」


 リーナさんの指示で、調理器具をアイテムボックスにしまっていく。その途中でサーシャが言った「宿ごと収納すればいいのに」という言葉には感心させられた。


 かくして、一軒の宿屋はアイテムボックスに収納された。何も無くなった宿屋の跡地を目にしたリーナさんは、少しだけ俺たちから顔を背けた。そして、満面の笑顔を覗かせて、こう言った。


「エルヴィンよりもいい男、移住させなさいよ」


「リーナ」


 街の老人たちが、リーナさんを取り囲む。老人たちの笑顔を見れば、リーナさんが如何に愛されているかがわかった。


「エイタさん……」リーナさんが困り顔で俺に近寄って来た。


「どうしました?」


「なんか、お爺ちゃんたち……たくさんくれるって」


「え? なにを?」


「……家畜?」


 自給自足をしながら暮らしていくという老人たち。しかし残された家畜は多すぎて老人たちの手には負えないそうだ。


「俺としては有難いけど、家畜がいないと大変だろ?」


「最低限は残すって……で、くれるっていうか、交換して欲しいって事なんだけど……」


 老人たちは、ある程度の魔獣の死体を要求して来た。塩漬けにして保存食にするらしい。


 保存食か……だったら。


 俺は老人たちにマジックバックを渡す事に決めた。物流の途絶えるアラミナにでは、物を腐らせないで保管出来るマジックバックが必要だろう。


 こちらが出すのはマジックバックひとつとオーク肉20匹ぶん。それを牛10匹、豚20匹、鶏40匹と交換した。


「エイタさん、マジックバックの価値わかってます?」リーナさんは呆れ顔だ。


 金額で言えば100倍近い差があるだろう。しかし俺には、アラミナをこの状態にした責任がある。


 たとえ、いずれはこうなっていたとしてもだ。


「わかってますよ。デベロ・ドラゴの国民には教えますね……俺、マジックバックくらい、いくらでも作れるんですよ」


 リーナさんは目を丸くして、すぐに商売人の顔に戻った。


「大量生産しないで、質の高い物を貴族に売りましょう……お爺ちゃんたちには『そのマジックバック売ったらアラミナ滅ぼすぞ!』って言っておきます!」


 ……リーナさんは頼りになりそうだ。


 俺はリーナさんと家畜さんたちを連れて王都跡地へと戻った。もうすぐ日が落ちる……結界の割れ目が発生するまで1時間といったところだろう。


 最後の一仕事とばかりに、リーナさんと共にルウィネスに転移する。


 メキキノさんの商業ギルドに、マジックバックを卸す為だ。


 メキキノさんは、俺を見るなり身を隠し、最大限の警戒体制を取った。ギルマスが居ないのを確認すると、ようやく姿を現す。


「この人、変じゃない?」リーナさんには人を見る目がある。


「ギルマス恐怖症みたいで、警戒されてます」


「今日はどのようなご用件で? 前回のような取り引きは出来ませんよ」


「わかってますよ。ギルド潰れちゃいますもんね」


 俺はマジックバックを取り出し、メキキノさんに手渡した。


 リーナさんがプレゼンを始める。


「貴族様専用の高級マジックバックです。量産は出来ませんが、受注精算は出来ます……適正価格で取り引きしたいと考えておりまして、是非メキキノ様に窓口になっていただきたいのです」


「……はぁ」


 メキキノさんが鑑定をする。惚けた表情が一変した。


「これは、あり得ない容量ですよ? 一体どうやって」


 リーナさんが微笑む。


「ある神の加護を得た、魔導商人『エイタ・カブラギ』の最高傑作です」


「白金貨800枚です」


「は?」


「これは白金貨800枚の価値があります」


 8億円? 


 驚く俺にリーナさんが耳打ちをした。


「英太さん、適当に容量小さいの作って……試供品にする。容量1/10!」


 俺は急いでマジックバックを創造クリエイトした。容量はキッチリ1/10。価値は……8,000万円!?


「メキキノ様、こちらは試供品です。どうぞ国王に進呈なさってください。それと……私たちはしばらく旅に出ます。次にこちらに伺えるのは、数ヶ月後になりますかね、英太様?」


「あ、そうですね。そうなりますかね」


「それまでに、マジックバックの在庫を増やすよう努めます。どうか、宜しくお願い致します」


「承知しました。このマジックバックの作成者をエイタ・カブラギ様で登録しておいても宜しいでしょうか?」


「ええ……そうすると、どうなるのでしょう?」


「魔導具製作者としての実績が残り、受注が増えます」


 ブランド力が上がるって事か……悪くないかも。


 俺の表情を読み取ったリーナさんが、俺とメキキノさんの間に割って入る。


「今回は保留とさせてください。貴族の介入する未来が手に取るように見えてしまいます。名前を打ち出す場合は、個人名ではなく、製作団体名として打ち出す事にしましょう」


 貴族の介入は……確かに面倒くさそうだ。奴隷問題も貴族の戯れで起こったものだしな。それに、制作団体名ってのは……ブランドみたいなものか?


「制作団体名というと……」メキキノさんには伝わっていないようだ。


「個人名ではなく、製作者たちのチームの名前って事ですよね? 『紅蓮の牙』とか『漆黒』とか」


「ひいいいいっ!! し、漆黒っ!?」


 メキキノさんは『漆黒』という名前に酷く怯えてしまった。どうやら、アラミナのギルマス、ショウグン・トクガワが産み出した暗殺チーム……と伝わっているようだ。風評被害も甚だしい。


「名前は……『D&D』にしてください」


 『デベロッパー&ドラゴン』だ。デベロ・ドラゴをそのまま使うのは良くないだろう。


「素晴らしい名前です。では、よろしくお願い申し上げます。メキキノ様」


 リーナさんのウインクに、メキキノさんは胸を突き刺されていた。おじさんが恋する瞬間……いただきました。


 しかし……リーナさんのお陰で、交渉はスムーズにいった。ひょっとしてスキル持ちなんじゃないの?


「マジックバックがそこまで高価だとは」


「常識です。でも、英太さんの作ったものは、更に特別だったみたいですね」


「というか、お爺ちゃんたちに渡したマジックバックも……もしかして……」


「お爺ちゃんたちは価値を知りませんからね。安心してください。マジックバックを盗まれたら死活問題です。こっそり使うように言ってあります。それに、魔物の大群の中を掻き分けてまで、今のアラミナに向かう人なんていませんよ」


「魔物たちに襲われる心配もあるよな……一緒に来てくれたらいいのに……」


「先に移住した私が、良いところでしたよ! って言えばイチコロ。その為にいい国にしないとですね!」


 リーナさんの笑顔に救われた。知れば知るほど頼りになる人だ。

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