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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第八十六話 牙たちの暗躍 後編

 ラブランは話を続けた。


「タルトは教会とカマロ一家の癒着を明らかにしようとしたんだけど、肝心のカマロすらそこを理解してなかったんだ。奴隷商人のトミーが間に入ってたんだよね。それも二重三重に保険がかけられてて、ショウグン殿が黒幕だって流れまで出来てた」


「もうその話は届いてる。俺たちは一家共々指名手配になるそうだ」


「そこでタルトは作戦を変更した。ひとつひとつ、順番に片付ける事にしたんだ」


「順番に?」


「まずはカマロ一家だ。タタンの孤児たちを攫っていた訳ではないけれど、悪どい事は沢山していたんだよ。他種族ではなく、人間を攫って奴隷商人に売り付けてた。サーシャやレミさんを攫おうとしてたのもそれだね。それもあって俺たちは『漆黒』に取り入る事に決めた」


「近くで攫われてくれれば、それに便乗すればいいって事か?」


「そうでなければ仲間として行動すればいい……とも言ってた。タルトの言ってた通り、お人好しの『漆黒』は、徳にも何にもならない奴隷解放に協力してくれた」


「それは、お前らより前に俺たちを利用しようとしていた悪徳ギルドマスターがいたからだよ」


「指名手配確定のな」ギルマスは悪びれない。


「ギルマスさんは悪い人じゃないですよ!」


 サーシャが訂正する。冗談で言ったつもりだったが、ハイエルフには通じなかったみたいだ。


 そこで、ラブランは笑い出した。黒幕ムーブか?


「なんだよ?」


「タルトも俺たちもさ、途中でその作戦を忘れたんだよ。忘れるくらいに楽しかったんだ……『漆黒の牙』としてのダンジョン攻略が……みんなで酒を飲むのも楽しかった。俺はレミさんに恋したし、アイラやリンガーはサーシャのファンになった。タルトはエイタの事を認めてたよ」


「俺たちもだよ。な?」


「はい!」サーシャはガッツポーズをした。


「……俺たちは『紅蓮の牙』をクビになったんだ」


「そうか」


「驚かないんだな。タルトから聞いてたのか?」


「ああ、タルトはお前たちの事を大切に思っていたからな。自分に付き合わせる事に葛藤してたよ」


「頑張ったんだけどなぁ……足引っ張ってばっかりだった」


「あの!」サーシャが割り込んだ。「どうしてアイラとリンガーは魔物の姿に?」


「R.I.Pの影響だよ。サーシャがタルトの隠蔽魔法を消滅させたんだ」


「私の……せい?」


「せい、じゃなくて、おかげ、だよ。俺たちは長いこと隠蔽魔法に頼り過ぎた。タルトと冒険して、もっと強くなったら、人間化が始まるかもしれなかった……でもね、ホワイトドラゴンを倒した時にわかったんだ。俺たちの強さは頭打ちになってるって」


 頭打ち……レベルのカンストの事だろう。


 ホワイトドラゴンを倒した時に入った強大な経験値……タルトだけがレベルアップで強く酔ってしまったあの時だ。俺とゴレミは99でカンストしているが、ラブランたちもそうなのだろう。


「俺たちに人化は不可能だった。中途半端な強さの魔物が隠蔽魔法で変化し続けるのは、色んなリスクがあるんだよ。それが、最悪の方向に出た」


「なんだ?」


「タルトですら、解除出来なくなってたんだ……それがわかったのは、『漆黒』と出会うずっとずっと前だった。だから、俺たちはいつでも死ぬ覚悟が出来てたし、危険なダンジョンに挑む覚悟も出来てた」


「だから、ドラゴンと戦いたいって言ってたのか」


「半分はね。もう半分はお近づきになりたかったからだ」


「サーシャのR.I.Pに隠蔽解除の効果があるとわかったのは、ダンジョンに泊まった時だった。何度かかけて貰えば魔法が解けるとは思っていたけど、二回で充分だったみたいだね」


 ラブランはすやすや眠る二人の頭を撫でた。確か、二人より年上だった筈だ。お兄さんとしての役割りを担っていたのだろう。


「タルトに『紅蓮の牙』のクビを宣告された時、エイタたちの国に移住する事を勧められた」


「……え?」


「俺たちは普通の魔物よりは強くなった。だから、魔物の姿に戻れば、それなりの魔素を放つ事が出来る……この姿で生きるには、人間国は不便過ぎるしね」


「サーシャ……」


「英太さん!」


 俺とサーシャは思わず抱き合った。予想もしないタイミングで、『デベロ・ドラゴ』の移住者第一号が決定したのだ。


「おいおいおい、そんな事なら、指名手配一家も頼むぜ」


 俺たちはギルマスに視線を移した。


「俺も半分はオーガだからな。ちったあ魔素を放出する。大聖女と、大聖女の娘も一般人よりは力になれるぞ」


「……ありがとう」


 まだ泣くのは早いのに、涙が溢れ出してしまった。あまり目立たないのは、サーシャが隣でギャン泣きしていたからだ。


「サーシャ、レミさんに挨拶したら、俺にもR.I.Pをかけてくれないか?」


「はい、わかりました!」


「タルトの隠蔽魔法には普通に解けた場合にも副作用があって、しばらく眠り続けるらしいんだ。1日中なのか、10日ほどなのか、まちまちらしい。だから、眠った俺たちを国に連れて行って貰う事になるかもしれない」


「はい!」


「それと……俺はタルトがこの後何をしようとしているのかを知っている……でも、こればかりは話せない……それが、俺たちが『紅蓮の牙』として、タルトに出来る最後の務めだと思っている」


「わかった」


 話の流れと、タルトの発言を合わせれば、ゴルディアの奴隷商トミーと貴族をどうにかするつもりなのだろう……一人でどうこう出来るものなのか……俺にはわからなかった。


☆★☆★☆★


 その後、目覚めたゴレミに対して、ラブランは同じ話をした。多少、ゴレミへの想いのターンが長かったのは仕方ない。


 《R.I.P》


 サーシャが唱えると、ラブランはすやすやと眠り始めた。それから2時間後、ラブランはゴレミの腕の中でオークへと姿を変えた。


 俺たちは再び宿を引き払い、拠点をフレイマ跡地へと移した。小さな小屋はバラして、新たな家を創造クリエイトする。より堅牢に、ミスリルの素材をふんだんに使った。


 ギルマスはマリィさんとマリヤちゃんを拠点に呼び寄せた。眠るラブランたちはゴレミに任せて、俺とサーシャはゴルディアの王都へと向かう事にした。


 タルトを止める事が出来るのか?


 止まるのか、止める必要があるのか?


 転移した俺たちが目の当たりにしたのは、圧倒的な手遅れだった。


 ゴルディアの街は何の変化もなく賑わっている。しかしその中の奴隷商は、既に血の海と化していた。

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