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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第八十五話 牙たちの暗躍 前編

「英太さん!!」


 という大きな声が響いた。


 少し酒の残る気怠い朝だった。昨日あれだけ楽しんだのだから、これくらいは仕方ないだろう。


「英太さん!!」


 扉が開く……サーシャが息を切らせながらやって来た。


「……どうした?」


「アイラちゃんと、リンガーちゃんが!!」


 アイラとリンガー……!?


「タルト!!」


 隣のベッドで寝ていた筈のタルトは、何処にも見当たらない。


 反対側のベッドでは、今までの不眠を取り戻すかのように眠るゴレミと、ゴレミの腕を掴むラブランの姿があった。


「英太さん……その二人……」


「サーシャ、『紅蓮の牙』の部屋に向かうぞ」


 俺は急いで部屋へと向かう。部屋にはすやすやと眠るスライムとコボルトの姿があった。本能的に理解した。二匹の魔物が発する魔力……それは……


「アイラと……リンガーか」


「どうして魔物の姿になったのでしょうか?」


 重い頭で昨夜の事を思い出す。あの後もタルトとは酒を酌み交わした。


 タルトのステータスの話を少しと、これまでの思い出話だった。この状況を示唆するものは……確かにあった。


「サーシャ、二人はどうしてこうなったんだ?」


「一緒に寝ようとしたんです。そしたら二人とも起きちゃって」


 サーシャは、昨夜、この部屋で起こった事を話し始めた。


☆★☆★☆★


「サーシャはさ、エイタの事が好きなの?」


 アイラはそう言ったのだという。


「わかりません。大切な存在ではあります」


 サーシャはそう答えたそうだ。


「サーシャ、タルトの事はどう思う?」


 リンガーは、そう言った。


「……わかりません。でも、大切な存在です」


 サーシャの言葉に、二人は微笑んだのだそうだ。


「サーシャ、お願いがあるの」


「なんですか?」


「私たちにR.I.Pをかけて」


 アイラはサーシャの右手を、リンガーは左手を握った。


「でも……私はレベルが下がってしまって……」


「大丈夫、自分の中の魔力を信じて」


 リンガーの言葉を聞いて、サーシャは体内の魔力と向き合ったのだそうだ。すると、失った筈の魔力が感じられたのだという。


「サーシャ、私たちは……サーシャの事が好きになったよ」


「友達になれた……そう信じてる」


 二人の真剣な眼差しに戸惑いながらも、サーシャはR.I.Pを発動した。


「サーシャ、私たちと……タルトの事を嫌いにならないでね」


 二人はそう言って、深い眠りに落ちたそうだ……そして、サーシャ自身も……


 起きてみたらこの姿に変わっていたのだという。


☆★☆★☆★


「サーシャ、みんなの事を任せていいか?」


「はい」


「何かあったらこれを」


 俺は創造クリエイト出来る最上級のポーションをテーブルに置いた。


「ちょっと、ギルマスのところに行ってくる」


 俺はギルマスが潜伏している王都跡地の小屋へと転移した。


「ギルマス、『紅蓮の牙』について教えてくれ」


「なんだよ急に」


「紅蓮の牙は、元奴隷だったんだよな?」


「ああ、そう聞いてる」


「魔物だったのか?」


「……は?」


「スライムと、コボルトだったんしゃないのか?」


「何を言ってるんだ?」


「一緒に来てくれ」


 俺はギルマスを連れて宿屋へと転移した。


 状況は変わらず、すやすや眠るスライムとコボルトがそこに居た。


「隠蔽魔法がかかっていたってのも有り得ない話じゃない。実際、サーシャ嬢の隠蔽魔法は俺には看破出来なかった。人語を操る低級魔物は見た事がないが、魔王国にはいるかもしれない」


「俺には『隠蔽看破』っていうオートスキルがあるんだよ。見抜けない訳がない」


「……そう言われてもな」


「リンガー……《状態異常回復魔法キュアヒール》かけてくれ……」


 そこにラブランがやって来た。二日酔いで今にも吐きそうな顔をしている。


 俺たちとアイラ、リンガーの姿を目の当たりにしたラブランは、一瞬にして全てを察したようだった。俺はラブランに《状態異常回復魔法キュアヒール》をかけてやった。


「ラブラン、話を聞かせてくれないか?」


「エイタ、タルトは?」


「朝から姿が見えない。昨日、タルト自身の事は聞いた。でも、この状況の事は聞かされていない」


「タルト自身の事?」ギルマスが睨みを効かせた。


「他言無用と言うことだったので、秘密にさせてください」


「ショウグン殿、話せる事は俺から話すよ」ラブランが言った。


「わかった。それでいい」


「俺たちは、ルウィネス王国の『ママス』っていう貴族に飼われていた奴隷だったんだ。魔物を飼って、痛めつけるのが流行ってただろ?」


「って事は、ラブランも……」


「ああ、俺はオークだよ。でさ、ママスに飼われてたんだけど、ルウィネスの貴族はゴルディアとは違って穏やかだからさ……手足を切ったりとかは無かったんだ。せいぜい御子息様の戦闘訓練で、相手としてボコボコにされるくらいで……ちゃんと回復もしてくれるし」


 それでも充分酷いが……比較すればマシなのだろう。


「でもね、御子息さまが成長するに連れ、俺たちじゃ相手にならなくなったんだよ。だから、処分される事が決まったんだ……そんな俺たちを報酬として引き取った冒険者がいた……それがタルトだよ」


「ラブラン、『俺たち』ってのは、『紅蓮の牙』の三人以外にもいるのか?」


「ママスのところ以外でも、処分される予定だった魔物はたくさんいたからね。タルトはありとあらゆる手段を使って、俺たちを救ってくれた」


「タルトの経営する孤児院に入ったのか?」


「そうだよ。他の六大国の孤児院には人間しかいなかった。でも、俺たちがいたところには、魔物も獣人も、エルフも、オーガもいた」


「そんな孤児院聞いたことねえぞ、何処にあるんだ」


「もうないよ」


「……って事は……フレイマか?」


「そうだよ。勇者と魔王の争いで、俺たちの孤児院は消滅した」


「なんて名前の孤児院だったんだ?」


「タタンって名前、知ってるでしょ?」


「知ってるも何も……マリィが支援していた孤児院だ……マリィも知ってたのか?」


「どうだろう? タルトに聞かないとわからない。でも、マリィさんは俺たちが魔物だとわかっても同じように接してくれたと思う」


「そうか……俺にも話してくれないとはな……」


「知らない可能性もあるよ。タルトの隠蔽魔法は特別だから」


「やっぱり、タルトも隠蔽魔法が使えたんだな」


「孤児院の全員を人間に変えてくれた」


「……それって、教会の?」


「教会の隠蔽魔法っていうのは嘘だよ。タルトの隠蔽魔法だ。タルトにしか使えない……結界魔法の変化系? みたいなものだって」


「じゃあ、カマロ一家に隠蔽魔法をかけたのもタルトなのか?」


「そうだね。カマロ一家に取り入った振りをして、違法奴隷売買の流れを探ってたんだ……元々はダンジョン攻略中の野盗たちを暗殺して間引きする予定だった。でもアイツらはダンジョンになんか入らなくてさ……無理矢理連れ込むって手もあったんだけど、邪魔な冒険者が現れて」


「『漆黒』か」


「そうそう。そいつらはいつの間にかフェンリルまで仲間にしちゃって……」


「ちょっと待て、何でお前らはそんな真似をしたんだ? 『紅蓮の牙』っていったら、正義感に溢れる面倒なパーティだって聞いてたぞ」


「正義には色んな形があるからだよ。タタンの孤児院にいた魔物が、ゴルディアで死体になって発見されたんだ。貴重な『魔物の素材』として、オークションに出されてた」


「孤児院が爆破で消滅する前に攫われてたってことか?」


「そうだろうね。だから調べた。フレイマのカマロ一家にたどり着くのも、教会の奴隷売買ビジネスにたどり着くのも早かった。マリィさんが主導したって線が一番わかりやすかったけど、証拠は無かった」


「当たり前だろ、勇者と魔王の争いだ……避難させたならわかるが……避難?」


「たぶん、避難させた先が教会の奴隷斡旋ビジネスと繋がってたんだろうね。タルトから聞いたよ。タタンに居たみんなは、エイタが成仏させてくれたって」


「……俺が?」


 思い出して、強烈な吐き気に襲われた。


 教会の地下でタルトが「殺せない」と言ったアンデットたち……あれが……


「英太さん、大丈夫ですか?」


 サーシャが背中をさすってくれる。


「大丈夫だ。ラブラン、続けてくれ」


 俺はこの話を最後まで聞く必要がある。


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