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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第八十四話 借りを返しただけさ

 タルトとサーシャは二人で宿の外に出て行った。タルトの気遣いで、部屋から二人の姿が覗けるようになっている。


 当然、二人の周囲には音声遮断ノイキャンがかけられていたが、そもそも盗み聞きしようなんて考えはない。


 しかし……タルトがよく分からなかった。サーシャを好きと言っていたが、自分のものにしたいと言う訳でもなさそうだ。


 プラトニックな恋?


 なにか企みがあるのか?


 俺は視線をアイラとリンガーに移す。二人とも気持ちよさそうな寝顔だ。


 ……しかし、確かに酒くさい。


 この世界では15歳は成人だもんな。酒飲んでも何の問題もない。けど、この世界では同い年だが、どうしても保護者視点で見てしまう。


 違法奴隷問題の解決までは程遠いが、アラミナの街に関しては一応ひと段落したのだ……それに、俺たちとの別れもある……酒が進んでも不思議じゃないか……


 こいつら、タルトが本当は足手纏いだと思ってるって知ったらどう思うんだろ?


 でも……気付いてない訳無いよな……


 俺は二人を鑑定しようとしたが、やめておいた。疑わしい相手ならともかく、勝手に仲間の女の子を鑑定するのは良くない。


 そう考えて、俺は『紅蓮の牙』を仲間だと認識しているのだと気が付いた。


 外にいるタルトとサーシャに視線を移す……タルトはサーシャを抱きしめていた。二人にとっても別れだし……ハグくらいなんて事ない……


 その時、タルトは身体を動かして、サーシャを覆い尽くすような体制を取った。 


 あれ? キス……?


 俺の角度からは見えなかったが、体制は明らかにキスをしている。タルトから身体を離したサーシャの表情も、キスされた女の子のそれだった。


 なんとも言えない心持ちで、俺は視線を部屋へと戻した。


☆★☆★☆★


 戻って来たタルトと共に、アイラとリンガーを『紅蓮の牙』の部屋に戻した。サーシャも二人と一緒に寝たいというので、ラブランのベッドを借りる事にした。


 反対にラブランは『漆黒』の部屋だ。


 残された俺、タルト、ゴレミの三人で、酒を飲み直す事になった。


 リアルうわばみのゴレミは、酒を次々と飲み干していく。


「ゴレミ、酔っ払ってるの?」


「いえ、その機能はございませんので問題ありません……ですが……」


「なに?」


「もう少しで、味がわかりそうなのです」


「本当に?」


「はい。食感といいますか、喉越しといいますか、口内にぶつかる感覚が変わって来たのです」


「そうか……でも、無理するなよ……ゆっくり変わっていけばいいからな」


「はははっ、エイタは親のようだな」


「ああ、ある意味そうかもな」


 ゴレミは俺が創造クリエイトしたし、まだ生後4ヶ月だ。


「とすると、グゥインさまとエイタさまの子供になります……ツバサさまの姉になるのでしょうか?」


「そうだな……姉になるなら、ツバサをちゃんと教育してやらないとな」


「その為には、もっと強くならねばなりません。エイタさま、更なる強化を願います」


「それは今度な……ちなみに今はどんなもんなんだ?」


 俺はゴレミを鑑定してみた。



名前:ドラゴレミ

年齢 : 0

種族:ゴーレムドラゴン

称号:暗黒竜ダークドラゴンの側近

レベル:99

HP:98,000/98,000

MP:9,000/9,000


基本能力

筋力:S

敏捷:A+

知力:A

精神:S+

耐久:B

幸運:A


スキル

・言語 Lv.5

・変形 Lv.5

・献身 Lv.10

・人化 Lv.1



「強っ!!」


 俺は思わず天を仰いだ。既に俺の敵うレベルじゃない。


「何を今さら、ゴレミの戦い振りを見ていればわかるだろ」タルトは呆れたように言う。


「そうなのですか?」ゴレミは不思議そうだ。


「ゴレミ、新しいスキルが増えてる……人化だって」


「人化ですか? どのようなスキルなのでしょう?」


「きっと、人間に近づいているのだろう。常時隠蔽魔法を使い続けた魔物に起こり得る症状だ」


「症状って……スキルだぞ」


「普通はデメリットしかないんだ。そもそも、発動するくらい永続的に隠蔽魔法をかけられる者も少ない」


 サーシャ……人間国に来てから隠蔽魔法を使わせ過ぎた。成長著しかったが……今はMPが少ない。スキルレベルが下がっていないのが唯一の救いか……


「ある程度の能力がないと、禁断症状で苦しんだり、変化の限界が来て、隠蔽魔法が効かなくなったりする。ゴレミはある程度どころのレベルじゃないからな……元々無かった人間の機能も手に入れつつあるのかもしれない」


「……味覚か?」


「だな」


「では、このまま機能を手に入れ続けたら、私もラブランと番になる事が出来るかもしれませんね」


 ゴレミの発言に、俺とタルトの思考が停止する。


「え、その気あるの?」


「その気とは?」


「好きとか?」


「わかりません。しかし、好意を持たれてからというもの、ラブランに好感を抱いています」


 確かに……恋愛にはそのパターンもあるけどさ。


「ラブランに聞かせなくて良かったよ」タルトは優しく微笑んだ。


「なんで? 喜ぶだろ」


「……まあな」


「ラブランともお別れですから」


「ゴレミ、寂しいのか?」


「そうですね。本当にほんの少しですが、寂しいかもしれません」


 本当にほんの少し……感情を持たなかったゴレミが寂しく思うというのは、凄い変化だと思う。


「なあ、お前たちの帰る場所って、どんなところなんだ?」


 酒を飲んだゴレミは、タルトの不用意な質問に対して、これでもかとばかりにグゥインの素晴らしさを語り始めた。嘘は言っていないが、大概大袈裟だ。


 タルトが喰いついたのは、グゥインさまの素晴らしさとは別の場所だった。


「ユグドラシルの大樹が本当に根付いているとは……お前たちでなければ、信じようとは思えないが、お前たちだからな」


「それ、同じ事をギルマスにも言われたよ」


「運命……なんて、安い言葉は使いたくないが、これは運命だったのかな」


「何がだよ? サーシャと出逢えた事がか?」


 タルトはフッと笑った。


「それも運命だったな」


 くそっ! 顔のいい奴はこんな台詞でも似合ってしまう!


 そこで、ゴレミがあくびをした。


「ゴレミ!?」


「……なんでしょうか? ぼんやりします」


「睡魔じゃないか?」


「これが……ですか……心地よいですね」


「寝てみたらいい。なんならラブランの隣が空いているぞ」タルトは不適な笑みを浮かべる。


「はい。眠ってみるのも良いかもしれませんね」


 ゴレミはふらふらと二階に上がって行った。


「……本当に番になったらどうするんだよ」


「その時は、祝うだけだろ」


 まあ、めでたい事なのか……うむ、グゥインさまに聞かないとわからない。


 ゴレミの姿が見えなくなると、タルトは表情を変えた。


「エイタ、サーシャのユニークスキルには気をつけろよ」


「R.I.Pか……実際、わからない事が多すぎるんだよな」


「俺も詳しくはわからない。眠らせる、という事に関連した何かだが……ちょっと想像を超えそうだ」


「そうか……でも、しばらくは使えそうにないんだよな」


「レベルの件か?」


「サーシャから聞いたのか?」


「許可を得て鑑定させて貰った。能力の前借りのせいで、なかなかハイエルフに覚醒出来なかった過去もな……国に侵入した魔物なんか捨てておけばいいのに」


「サーシャは後悔してなかったよ。なんなら今でも、その魔物の事を心配していた」


「それは……サーシャらしいな」


「とってもな」


「エイタ、お前だけには俺のステータスを開示する。他言無用だぞ」


 俺はタルトのステータスを《詳細鑑定》した。


 とてつもないステータスだったが、いくつか気になる事があった。


「タルト……レベルって、200超えてたんじゃなかったっけ?」


 タルトのレベルは180と表示されていた。それでも凄いが、そうなった理由があるのだろう。


 そして、その理由は……残りの疑問から推察出来た。


「借りを返しただけさ」


 タルトはそう言った。

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