表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/214

第八十話 深淵

 アラミナの教会へと足を踏み入れた。そこに広がったのはレトロRPGで目にしていた佇まいの教会その物だ。


 あれだけ黒い噂を聞いても神秘的なものを感じるとは、不思議なものだ。


 アラミナの街の教会は、さほど大きくない。代わりに隣接した神父やシスターの居住スペースがあったのだが……どちらからも気配が感じられない。


「やっぱり人の気配がしないな。ゴレミの探知能力が必要か?」


「いや、二人で行こう。万が一にも隷属魔法の使用者がいると厄介だ……お前たち二人を倒すのは、俺も苦労する」タルトが言った。


「おい、俺たちを殺す気かよ」


「戦闘不能までだよ。ゴレミはお前が回復させられるんだろ? お前は回数制限付きで欠損回復も可能……命だけ奪わなければいいんだ」


 こいつ、本気で言ってるな……


「というか、その考えだと、タルトが隷属魔法にかかった場合は詰みじゃないか」


「俺は隷属魔法にはかからないよ。前からその可能性を感じてはいたけど、今回のレベルアップで確信した」


「どういう理屈かわからないが、とりあえず信じるよ」


「お前にも耐性はあると思うぞ」


「なんで?」


「勘だよ、カン……エイタ、建物に隠蔽魔法はかかっているか?」


「いや、隠蔽看破に引っかかるものは何もない」


「もっと強くイメージするんだ。お前の隠蔽看破は、まだ成長の余地を残している。教会が使う隠蔽魔法にだって対応出来る筈だ」


「……なんだよ、偉そうに」


 隠蔽看破はオートスキルだ。強くイメージしたところで……いや、創造クリエイトの根本は想像イメージだ。俺は隠蔽を解くイメージに集中した。


「《隠蔽看破》」


 すると、地下室への入り口が浮かび上がった。


「タルト、地下室がある」


「驚いたな。本当に出来るとは……お前は勇者か何かか?


 勇者……よりは邪神グゥインの側近感が強いが……一応、同じ国王だよな。


「勇者よりは魔王に近いよ」


 俺の冗談に、タルトが笑い出す。


「はははっ……だったら、いつかは敵になるな」


 敵って……でも、そうだよな。邪神の存在を一番嫌うタイプだよな……想像出来るわ……その未来。


「仲良くしようよ」


「無理だな。俺はフレイマを壊滅させた魔王を許せない」


「良かった。どっちかっていうと邪神だからな」


「……さあ、無駄口はここまでだ……気合いを入れるぞ! ありったけの身体強化をかけてくれ!」


 何を許されるのかは不明だが、俺は指示通りに自分たちにバフをかけた。


 そして隠蔽された教会の深淵へと足を踏み入れる。


 地下室は四部屋。そのどれもから人の気配は感じられない。人が居た気配すらも……だ。


「《探索魔法サーチ》」


 タルトが痕跡を追うが、反応はなかった。しかし、俺の隠蔽看破には反応があった。


「タルト、地下二階がある」


「……この階はあくまでもダミーということか」


 俺たちは更に地下へと降り進んだ。扉を開いた瞬間にわかった。この据えた匂い……カマロ一家のアジトで嗅いだものの……数倍の体臭……そして腐臭だ。


「タルト……灯はどうする?」


「つけよう。襲いかかる敵は切り伏せればいい……それよりも、目に入るものの方が怖いな……吐くなよ」


「……頑張るよ」


 吐かないよ! とは言えない……おぞましい光景は予想できた。


「《聖なる光(ホーリーライト)》」


 光源に照らされる。今立っているのは長い廊下で、その先に大広間があった。飾り付けは教会の様相と同じだった。


 廊下には様々な種族の死体が捨てられるように並んでいた……のだろう。


 目の前の死体は、見た事もないような不自然な動きで立ち上がった。サーシャを連れて来なくて良かった……立ち上がった死体の長い耳には見覚えがある。これはエルフの死体だ。


「アンデット化しやがったのかよ」


 タルトの目は怒りで満ちていた。


「《全能鑑定》」


 俺は干し肉を咥えながら、周囲の魔物を一括で鑑定する。腐敗臭を嗅ぎながら肉を喰らうのは正直キツかった。


「鑑定結果はどうだ?」


「廊下にいるのは47体……全部足したとしても、強さはレッドドラゴン以下だな」


「比較対象がレッドドラゴンか、思ったより厄介そうだな」


「弱点は炎と聖属性……それ以外の攻撃で倒しても死なない……破片になっても動き続ける」


 タルトの言う厄介とは、その点も加味してだろう。通常攻撃では勝利に辿り着けない。細切れにすればするほど、霧散して脅威に変わってしまう。


「炎が弱点なのは有り難いが、密室だしな……エイタ、聖属性の魔法はどの程度使える?」


「使った事があるのは、回復魔法と光源魔法だけだ。教えて貰えれば何でも使えると思う」


「笑っちまうな。リンガーが使っていた《聖なる鎖(ホーリーチェーン)》はどうだ?」


「やってみるよ《聖なる鎖(ホーリーチェーン)》」


 光の鎖が兎耳の獣人アンデットを縛りつける。腐った肉が周囲に撒き散らされ、アンデットは踠きながら消滅していく。


「……消滅したな。エイタ、ここまお前に任せていいか?」


「了解……《聖なる鎖(ホーリーチェーン)》」


「《聖なる鎖(ホーリーチェーン)》」


「《聖なる鎖(ホーリーチェーン)》」


 俺は魔物たちに聖なる鎖を叩きつけた。しかし本来は攻撃用でない鎖の魔法は効率が悪かった。俺は独自の魔法を飛ばしてみる事にした。


「《聖なる槍(ホーリーランス)》」


「《聖なる矢(ホーリーアロー)》」


「《聖なる散弾(ホーリーマシンガン)》」


「《聖なる輝き(ホーリーシャイン)》」


 光の槍、光の矢、光の散弾、光の光? がアンデットたちを攻撃していく。


「殲滅完了……かな」


「……エイタ、お前は剣より魔法の方が向いてるな」


「自覚はあるよ」


「ドラゴンの剣に拘りがあるのか」


「お見通し過ぎて気持ち悪いよ」


「しかし助かったよ……俺にはこいつらは殺せなかったからな」


「炎だと教会自体が燃えちゃうからな」


「……だな。しかし、教会の手の者なのかはわからないが、ネクロマンサーがいるようだな。操られた者を倒す為には跡形もなく消し去るしかない。証拠も何もあったものじゃないのさ……ここにどの種族がいたかわかったか?」


「兎耳獣人とエルフは居た気がするが……」


「エルフ、獣人、ドワーフ、ピクシー、魔人、魔物、人間、鬼人、竜人……俺が知る種族で居なかったのは、機械族くらいのものだよ」


「堂々と教会の地下に忍ばせておくって事は、バレても構わないって事か」


「いや、普通に侵入者を殺せる戦力だと踏んだんじゃないか? 聖属性魔法の使い手に教会関係者以外の者がいるのは珍しいしな」


 ふーん。人前で聖属性魔法を使うのも控えなきゃな。基本的にはポーションがあるし平気か。


「アンデットが病原菌を持っていた可能性もある。念の為に、浄化魔法をかけてくれ」


「了解。《浄化魔法クリーン》……さあ、扉を開こう」


 扉の中からは気配がしない。しかし、違和感はある。きっと何もないのではなく、遮断されているのだ。


「エイタ、扉があまりにも無防備過ぎる。罠の可能性が高い」


 タルトはそう言った。俺はゴーレムを創造クリエイトする。


「おいおい邪神殿……残酷な事をするな」


「……邪神扱いは堪えるな」


 タルトは説明無しでも、意図を理解したのだろう。残酷な思考はお互い様だ。


 ゴーレムがドアに手をかけるが、特に異変は起こらない。ゴーレムは一度こちらに視線を送ると、部屋の中に入ってしまった。


「エイタ、これは大丈夫って事なのか?」


「俺にもわからない」


 俺たちは静かに部屋を覗いた。だだっ広い広間の中には、左腕の無い男がいた。ギルドマスターのショウグン・トクガワだ。


「ショウグン殿……」


 タルトが言葉に詰まったのは、ギルマスの姿が変わり果てていたからだ。ギルマスは獣人の奴隷同様に右手両足と舌を切られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ