表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/209

第七話 ドラゴンソード改

 グゥインに創造クリエイトを強要され続け、ついには気絶したまま朝を迎えていた。


 隣で寄り添うように眠るグウィンの姿は可愛らしいのだが、やってる事はマジでブラック企業ドラゴン。本当しんどい。


 魔力を使い切るたびに尻尾肉を食べ、ゴーレムを次々と生み出した。その数13体。13回以上の魔力枯渇を味わったのだから、それはもう……思い出したくもない。


 その中でも12体の作業用ゴーレムとは別に、1体だけリーダーゴーレムを作成した。他のゴーレムとの違いは、メインボディと手足のパーツを別で創造クリエイトして繋げた事だ。それによってグウィンの魔力を多く注入する事が出来た。他のゴーレムの倍のパワーと知性を持つリーダーゴーレムが誕生したのだ。リーダーゴーレムには付属パーツとして、グウィンの魔力を維持する為の外付けバッテリーも用意した。


 予備バッテリーが無くても、ゴーレムたちは3日は動き続けるらしい。まあ、実用性よりは今後のための実験の要素が強い。


 リーダーゴーレムはカタコトだが会話が出来る。他のゴーレムたちは言葉を理解する事は出来ても、喋る事は出来ない。その辺はこれからこれから。


 国王陛下は無駄に高い位置へと登って、ゴーレムたちに演説をしている。


「さて、ゴーレム諸君! 其方らにやって欲しいのは王国の基礎を作る事じゃ! 我らが王国『デベロ・ドラゴ』、死の大地と呼ばれるこの島で城を建築するのは至難の技じゃ! 其方らにやってもらいたいのは土地を平らにする事! それと出来うる限り栄養の残った土を城の周囲に移す事じゃ!」


 これはグウィンと事前に話し合った事だ。本来の形で城を建築するとすれば、土の栄養も、資材も全く足りない。石材はなんとかなったとしても、木材が無い。正確には、枯れ果てた木の欠片を見かける事はある。しかし中身はスカスカで、触れただけで崩れてしまうようなものだった。


 時間と魔力の事を考えなければ、オール土魔法で城を作る事は出来る。でもそれは理想の王国とはかけ離れる。俺が作りたいのは……グウィンに体感して欲しいのは、ハリボテの王国ではないのだ。それを選ぶのは、完全にそれしか方法が無いと決まってからだ。


「其方らはこの周囲一体に死の大陸の「生」を掻き集めるのじゃ! その取り組みはいずれ身を結び、死の大地に生命を生み出すに違いない!」


 コブフォーォォオー!!


 突然グウィンが炎を吹いた。興奮しているのか、パフォーマンスなのか、竜王の佇まいを見せつけて演説を終える。


 ゴーレムたちはフリーズ状態だった。唯一会話が出来るリーダーゴーレムに聞く。


「みんな、わかった?」


「ナントナク、ワカリマシタ」


 わかってないな。前世を思い出す。どんな仕事でも、わかったフリして見当違いな事をされるのが1番困るんだ。


「この周辺の土を固める。栄養がありそうなものはこの辺に持ってくる。以上」


 よりシンプルな支持を出す。これに限る。


「ワカリマシタ」


 リーダーゴーレムが動き出すと、ゴーレムたちは散り散りに歩き始めた。


「むぬぬぬ、妾がせっかく直々に伝えておるというのに!!」


「産まれたての子供に難しい事を言ってもダメだよ」


「ふん! 英太の魔力さえ足りていれば問題無かったのじゃ」


「それは言いっこなしだよ」


「うむ、すまん。嫌な事を言ってしまったな」


 すぐに謝れるのがグウィンの良いところだと思う。1000歳なのにどこか子供で、本当に素直だ。


「ところでさ、ここ『死の大地』って呼ばれてたの?」


「……うむ、そう呼んでおった者もいたというだけじゃ」


 その人はここに来たのだろうか? 居たのだろうか? どちらにしても1000年以上前にここからは居なくなったんだろう。


「わかった。よし、じゃあ俺とグウィンは『死の大地』をもう一度くまなく探索しよう。生き物はいなくても、泉が湧き出てたりする場所があるかもしれないし、植物の種が見つかるかもしれない」


「あいわかった!」


 グウィンは俺を背後から抱き抱えた。怖い怖い空の旅が始まる。


「その前に飯を食おう。あ、そうじゃ、魔力が勿体無いのう……ついでじゃ、何か『創造クリエイト』するか」


 小芝居かましてきやがった。骨の髄まで使う気でいやがる。


「わかったよ。そんで、何を作るの?」


「くふふふふっ……これじゃ!」


 グウィンが手にしていたのはドラゴンソード。それと尻尾肉周囲の皮……いや、鱗だ。


「『創造クリエイト』というスキルが土魔法では無かったのと、ゴーレムを分割して作ったのを見てだな、出来上がった剣と、この鱗を素材にして剣を強化できるのではないかと思ったのじゃ」


「確かに、土しか素材が無いから土で剣を作ったのだ。ドラゴンの鱗を素材にすれば本当の意味でドラゴンソードが作れるかもしれない」


 でも、魔力持つかな……


「やってみるよ」


「ま、待て! 他に素材はいらぬか? ドラゴンの骨とか、牙は必要ないか?」


「いや、あったらあったで良いかもしれないけど、骨とか牙も再生するの?」


「試した事はない! しかし何事も初めては付き纏う!」


「却下」


「何故じゃ!」


「もしも歯を抜いて生えてこなかったらどうすんの? 俺は嫌だよ」


「ならば骨! この左腕を叩き切って!」


「切ったことあるの?」


「ある……ような気がする」


「却下」


 俺は鱗とドラゴンソードに手を翳して意識を集中する。魔力切れを起こさない程度に出力を上げてスキルを発動させる。


「《創造クリエイト》」


 流石ブラックドラゴンの鱗だ。相当な魔力が持っていかれた。しかし出来上がった物を見ると、魔力の消耗など瑣末なものに感じる。


 剣そのものが黒く輝いている。土の上にメッキのように重なっているのか、全てが混ざり合っているのか、それはわからないが、剣が異様な力を発している事だけは理解出来た。


「名付けて、『ドラゴンソード改』だ!」


「おおおお、凄いのじゃ!! 改すごいのじゃあー!」


 ドラゴンソード改を振り回すグウィン。無邪気だが危なっかしすぎる。


「危ない! 危ないって!」


「英太、これなら英太でも妾の尻尾を切れるやもしれぬ」


「え?」


 尻尾の硬さに押し負け、両腕を骨折した記憶が甦る。


 やりたくねーな。


「さあ、ゆくぞ!」


 グウィンはそう言って俺を背後から抱きしめた。そのまま上昇し、何も無い大地の中でも特に何も無い場所へと移動した。


「ここなら大丈夫じゃな」


「なに? なにが大丈夫なの?」


 グウィンは俺にドラゴンソードを握らせると、ゴーレムにしたように黒い魔力を付与した。とてつもないエネルギーを感じる。これなら尻尾も切れるかも知れない。


 やりたく無いけど、やらなくちゃいけない。グウィンと一緒に生き抜くんだ。


「では頼むぞ! 尻は切るな、あくまでも尻尾じゃ」


 グウィンはそう言うと空高く舞い上がった。ゆっくりと旋回を始め、次第に速度を上げていく。グウィンの姿が目で追えなくなったその時、恐ろしいほどの魔力を発現させた。


 ゴオオオオー!という音と共に、グウィンの姿が全長100メートルはあろうかというブラックドラゴンに変化した。


「マジかよ」


 その姿は、この世界に転移したばかりの頃に目の当たりにしたものだ。普段接するグウィンと同じ生命体とは思えない程に禍々しい。しかし……俺、あんなんに体当たりされて生てたの?


 ブラックドラゴンは「ここを切るのじゃ」と言わんばかりに尻尾を地面に落とした。禍々しくても中身はグウィンだ。


 よし……集中するんだ! 新しいドラゴンソードなら、あの巨大な尻尾も切れるかもしれない。また骨折したら……治してくれ!


「ゔぉぉぉぉおっ!」


 魔力を帯びたドラゴンソードを振り上げ、尻尾に向かって振り下ろす。


 一瞬の静寂。


 なんの手応えもない。空振りかと思うほどスッと刃が通った。ドラゴンソードはグウィンの尻尾を真っ直ぐ切り落としていた。


 尻尾が完全に分断したのを確認したグウィンは、またしても高くまいあがった。そのまま旋回を繰り返すと、いつの間にかいつもの姿に戻っていた。


「痛いのじゃああああぁあ!」


「え、ごめん! 大丈夫?」


「大丈夫なのじゃ! 妾の魔力が痛みを増幅させているのじゃぁあ! 痛いけど大丈夫なのじゃあ!」


 グウィンは尻に手を翳して、回復魔法をかけている。傷は塞がっていくが、痛みはヒリヒリと残っているらしい。


「継続ダメージかな?」


「ケイゾクなのじゃ。この剣で斬られると痛みが凄いのじゃ」


 俺でもグウィンの尻尾を切り落とす事が出来て、グウィンに継続ダメージを与えるとは、ドラゴンソード改の威力はとてつもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ