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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第六十六話 『紅蓮の牙』

 A級冒険者・タルトナービス率いる『紅蓮の牙』


 すぐに再会するとは予想していたが、まさか宿屋で鉢合わせるとは思わなかった。


 だが考えてみれば当然だ。ここは街で一番の宿だし、ギルマスが手配してくれた宿でもある。


「俺もその卵かけご飯というものが食べたい。大丈夫、《上級状態異常回復魔法ハイキュアヒール》は使えるから」


 ちっ……タルトの奴、しっかり見てたんだな。


「ですが、衛生面……」リーナさんが言葉を挟む。


「文句は言わない。四人前で金貨5枚でどうだ」


「かしこまりました」


 さすが若女将、切り替えが早い。


 しかし金貨5枚って……ダンジョンのフロアボス攻略報酬と同額じゃないかよ。


 リーナさんに促されるまま、エルヴィンさんが卵かけご飯の準備を始めた。卵かけご飯なんて前世では誰でも作れる料理の代表格だったが、ここでは異国どころか異世界の珍味だ。


 テーブルに並んだ卵とご飯を前に、一度見ただけで手際よく調理を進めるエルヴィンさんの姿は、やっぱりプロの料理人だ。


「うん、美味いな!」


「サラサラいけちゃう!」


 『紅蓮の牙』のメンバーたちが舌鼓を打つ声が響き合う。スプーンを動かす音と笑い声が、宿屋の食堂に活気を添えていた。


「ねえ、英太くん。これってキュアヒールが使える人なら食べても平気なの?」リーナさんが真剣な顔で聞いてきた。


「あ……まあ……それか、鑑定魔法持ちに卵の状態をチェックして貰うか」


「それよ! ありがとう!!」


 突然リーナさんにハグをされる。それを見ていたエルヴィンさんは余裕の表情だ。くそっ、なんか腹が立つ。


「エイタさん、良かったら一緒にどうだい? 一杯奢るよ」


 タルトが手招きをしてくる。周りのメンバーを見ると、嫌そうな顔はしていない。どうせそのうち絡むことになるなら、このタイミングで少し話しておくのも悪くないかもしれない。


「すみません。片付け……」


「いいよ。エイタは弟子の前に客だし、良いもの教えて貰ったしな。またこいよ。また教えてくれ」


「ありがとうございます」


 弟子入りした覚えなんて無いが? まあいいか。次までにスパイスを集めておこう。カレーで驚かせてやる。


 タルトたちの席に向かうと、エールの入った樽ジョッキがすでに用意されていた。


「エイタ、でいいか? 俺たちにも敬語はいらん。仲良くしてくれ」


「わかった。それでいいよ」


「じゃあ、敬称なしの仲に乾杯だ」


 ジョッキが軽くぶつかり合い、泡が弾ける音が響く。『紅蓮の牙』のメンバーたちから改めて自己紹介が始まった。


「私はアイラ、魔法使い……四大魔法と無属性魔法が使える。15歳」


「リンガーです。同じく15歳です。僧侶で、一般的な回復魔法と聖属性魔法が使えます」


「ラブランだ。21歳の盾使い。仲良くしてくれよな。俺たちみんな、ウェルネス王国から来ている」


 へー……優秀なのかな? A級冒険者が居るパーティーだもんな、きっとそうなんだろう。自分がチートすぎるせいで、リアクションが薄くなってしまう。けど大袈裟に驚くのもわざとらしいか。


「エイタ・カブラギです。15歳で……ヒノモトから来た魔導商人です」


「ヒノモトから来た魔導商人……転移魔法が使えるとは聞いたが、万能鑑定も使えるのか?」


 うっ……また選択を迫られる瞬間だ。まあ、転移魔法がバレてる以上、隠し通すのも難しそうだ。


「使えます。見てもいいですか?」


「勿論だ。開放する」


「《詳細鑑定》」


 視界にタルトのステータスが浮かび上がる。


名前:タルト・ナービス

年齢:24

称号:紅蓮の牙リーダー

   灼熱の騎士

   A級冒険者

職業:剣士


レベル:71(次のレベルまで30,200EXP)

HP:26,800/26,800

MP:7,200/7,200


基本能力

筋力:A

敏捷:B+

知力:B

精神:A−

耐久:A−

幸運:B


ユニークスキル

• 紅蓮の魂 Lv.3

闘志が高まるほど身体能力が向上し、炎属性の攻撃が強化される。火炎耐性を持ち、炎の中でも自由に行動可能。戦闘不能になった際、一度だけHPを半分回復し再起可能クールタイムあり


スキル

• 剣術Lv.8

• 体術Lv.6

• 炎魔法Lv.6

• 万能鑑定Lv.3

• 空間魔法Lv.5


備考

熱血で正義感が強く、仲間想いなリーダー。「紅蓮の牙」というA級冒険者パーティのリーダーで、戦場では率先して前線に立つ。炎を纏う剣技を得意とし、持久戦にも強い。戦いが激しくなるほど力を発揮するタイプ。


 なんとも主人公らしいステータスだ。絶対にパーティメンバーを置き去りにしないタイプのリーダーだろう。ざまあには縁が無さそうだ。


 火魔法じゃなくて炎魔法ってのも、格好良さに磨きをかけている。


 「エイタのも確認させて貰うぞ。」タルトがそう言って、「《鑑定》」と唱えた。俺のステータスを確認した後、首を捻る様子が見えた。


「どうかしたのか?」


「いや、エイタのステータスにどうこうではない。『漆黒』がダンジョンに挑戦した際に、中間層のボスがドラゴンになるという現象が気になってな。サーシャさんにもその原因となりそうなものは無かった。エイタにもない……レミさんかルーフにあるのか?」


「フェンリルは序盤いなかった筈だよ。ね、エイタ?」


「ええ、まあ……」


「うーん、となるとレミさん……か、それ以外の何かか……エイタ、心当たりはあるか?」


 そりゃあるけど、暗黒竜ダークドラゴンの加護なんて口に出せるわけないよね?


「いやー……どうだろう?」


「では質問を変える。『漆黒』の装備に、ドラゴンの素材が練り込まれているというのは本当か?」


「あー……そう……かも?」


 弱い! あまりにも追求に弱すぎるっ!


「漆黒のドラゴンというと、ブラックドラゴンか……いや、そんな化け物が存在するとは思えない……」


「フェンリルが居たし、居てもおかしくないよ」


「そうだな。その装備は何処で手に入れたんだ?」


「それは、秘密ですよ」


「それはそうか。商人にする質問では無かったな。では、いくらなら売れる?」


「非売品だよ」


「そうか、では、一緒にダンジョンに潜らないか?」


 ……え?


「私たちもドラゴンと戦いたいの。ドラゴンなんて魔王国の奥深くと、龍人国にしかいないんだから。ダンジョンで出会えるなら倒したいのよ」アイラが言った。


「……でもドラゴンは強いよ。他のボスの方が……」


「あなた達は倒しているんですよね? タルト程ではないけど、私たちもD級冒険者ではあるんです。それに、パーティとしての戦闘経験も豊富です」リンガーが真剣な眼差しを向けてくる。


「君たちが既にクリアした階層で構わない。一時的に俺たちとパーティ契約を結んでくれれば、経験値は君たちにも分配される。もちろん、戦うのは俺たちだけだ」ラブランが熱く語る。


「うーん……ギルマスに相談してもいいかな?」


「よし、善は急げだ」


 タルトの姿がふっと消えた。ギルマスの元へ転移したのだろう。しまった……タルトの勢いだと、全てをポジティブに捉えて報告するだけだ。ギルマスが断れるはずがない。


 タルトの交渉上手! いや、強引さ! こういうタイプの方がモテるんだよな!


 数分後、タルトが戻ってきた。


「ショウグン殿からの許可は得たぞ」


「やったな」


「宜しくね。エイタ!」


 『紅蓮の牙』のメンバーたちが色めき立つ声が響く。


「ただし、安全面を考えて、一日に挑戦出来るボスは一体までだそうだ。それに加えて『漆黒』も『紅蓮の牙』に死傷者が出ないよう最低限のサポートをするのが条件となった」


 よくも勝手に決めたものだ……でも、ギルマスらしいちゃらしい。俺たちを同行させることで、『紅蓮の牙』のダンジョン攻略に制限をかけた。教会内部を調べるまでの時間稼ぎが大成功だ。


「エイタ、これは手付け金だ」


 タルトがそう言って、白金貨を5枚取り出した。鈍い光を放つコインがテーブルの上に並ぶ。


「……え? こんなに?」


「何を言う。君たちのダンジョン攻略の邪魔にもなるんだ。当然の対価だよ」


 こうして、なし崩し的に連合パーティが結成される流れが決まった。


「みんな、エイタはギルマス案件で明日はダンジョン攻略に参加出来ない。一度ウェルネスに戻って準備を整えるぞ」


 え……俺、明日ギルマス案件あるの? 聞いてないんだけど……


「エイタ、ギルマスが呼んでいたぞ。時間がある時にギルドに向かってくれ」

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