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第六話 英太のスキル

 よく晴れた灰色の空の下、俺はグウィンと共に土塊に手を合わせていた。爆散したゴーレム初号機の弔いだ。


「うむ、これが弔いというものか、初めての経験じゃ」


「俺のいた国には物にも魂が宿るって考え方があってさ、しかも人の形をしてただろ? 一瞬の付き合いだったけど、なんだかさ」


 そういう思想とかではないが、ばあちゃんがよく言ってたからなんとなく意識している。その考えもあってか、自分が創る物語にも、キャラクターにも同様の意識を向けていた。架空にも命は宿る。


「さあ、今日はゴーレムを完成させるぞ!」


 グウィンにとっては、特に感じるところは無かったみたいだ。でも、一緒に手を合わせてくれるだけでも嬉しくはある。


「昨日と同じものでいいか?」


「よい! 妾が魔力を調整する」


 土の塊に手を伸ばし、呼吸を整える。


「《創造クリエイト》」


 魔力が体から一気に引きずり出される感覚。土がうねり、ゆっくりと人型の形を成す。頭、胴体、腕、脚。昨日と同じ形ではあるが、より強度を意識した。


「さぁて、妾の出番じゃな」


 グウィンがゴーレムの後頭部を触り、黒い魔力を放つ。昨日とは違って、相当抑え込んでいるのがわかる。


「ふぅう……」


 グウィンがへたり込んだ。魔力の加減には相当な集中力が必要なのだろう。


「どうじゃ? 壊れてはおらぬが……」


 その瞬間、ゴーレムの目が金色に光った。ゆっくりと立ち上がり、グウィンの方を振り返った。


「おおっ! 動いたぞ!」


「ふふふ、流石は妾じゃ!」


 ゴーレムは鈍く頷き続けている。


「少し頭が悪そうじゃな。妾の魔力を原動力にしたならば、人語を自在に操る知性と、大隊の騎士団を殲滅するだけの戦闘力を兼ね備えたゴーレムになる筈なのじゃが」


「仕方ないだろ、器が俺の魔力なんだから。でも俺はこれが可愛い! これから一緒に頑張っていこうな!」


 ゴーレムはカクカクとした動きで手をかかげた。本当に可愛い。やばい。


「そうだ、名ま……え」


 と、その時、俺の意識は消滅する。全魔力を注ぎ込んだのだ、当然魔力はすっからかんだ。


☆★☆★☆★


 食欲のそそる匂いで目が覚めた。グウィンが肉を焼いているようだ。


「英太よ。ほれ、肉じゃ」


 グウィンが尻尾肉を串焼きにして差し出す。香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、魔力の回復が約束される。


「……いただきます」


 肉を齧ると、再び魔力が沸き上がってくるのを感じた。


 グウィンの尻尾がまた無くなっている事に気付いた。俺が気絶している間に尻尾を切り落とし、捌いていたらしい。


「あまり無理をするな、妾は英太に死んで欲しくない」


「わかってるよ」


「よし、では二体目を作るぞ!」


「言ってる事とやらせてる事が矛盾してるよ」


「毎度毎度倒れていては身が保つまい。そうならぬように限界値のギリギリ直前までの出力で魔力を調整すればよい」


「理屈はわかるけど、それってかなり難しくないですか?」


「時に英太よ、このゴーレム作成にMPはどれほど使うのじゃ?」


 消費MP? そりゃあ……


「MAXだから、50かな?」


「50!?」


「なんだよ? え、なになに?」


「50でこの程度とは……よほど魔力効率が悪いのじゃな。ちなみに土魔法のスキルレベルはいくつじゃ?」


「土魔法? いや、わからない。全属性魔法しかないから」


「全属性魔法……そうか、だからか」


「なに?」


「全属性魔法は、ユニークスキルを除いた全ての魔法を使いこなす事が出来る究極の魔法スキルじゃ。その見返りとして、魔法消費量が通常の数倍となる」


 ええ! そんなの聞いてない! 確認もしてないんだけどさ!


「まあ、しかし、術者の熟練度によって効率化されるのじゃ。全属性魔法を使える者はすべからく熟練の魔術師であるから、熟練度で魔力効率の悪さを補っているのじゃが……英太はそうではないようじゃの」


 新事実に打ちのめされる。スキルレベルというものは、魔法に限らずそのスキルを使えば使うほど上がっていくものらしい。全属性魔法は特殊で、全属性魔法の中の、どの属性魔法を使ったかによって個別にスキルアップするようだ。


ステータスを開く。


ステータス


名前:鏑木英太カブラギエイタ

年齢 : 15

職業:デベロッパー

レベル:1

HP:100/100

MP:50/50


ユニークスキル

創造クリエイト


スキルスロット

1.全属性魔法

2.言語理解



 スキルスロットは個別に開く事が出来た。全属性魔法のスロットを開く。中には《火Level 1》《水Level1》《風Level1》《土Level1》と記載されていた。


「全部レベル1みたい」


「うむ、レベル5にでもなれば、通常と同じ魔力で魔法が使えるようになる」


 そうか。かなり先ではあるが、今よりは楽になるのだろう。


「ちなみに、言語理解ってやつも成長するの?」


「うーむ、妾の知る限りでは言語は万国共通のはずじゃ。動物や精霊には通じぬがな。成長するとしたらその方向ではないか?」


「ふーん。じゃあ創造クリエイトってスキルは?」


「クリエイト……生成時に英太が口にしているアレか。それは土魔法ではないのか?」


「いや、俺のユニークスキルみたいなんだけど」


「ユニークじゃと!? なんとまあ、英太には驚かされる」


「ユニークスキルって、もしかして珍しいの?」


「どころの話では無い。その種族に一人か二人現れるかどうかのレベルじゃ……エルフ族やドワーフ族ならハイエルフ、ハイドワーフ、魔物であれば魔王クラス……人間ならば……」


「人間ならば?」


「わーっはっはー! どう見ても英太は勇者には見えぬがな!」


 グウィンは高笑いをする。まあ確かに、物作りスキルは勇者とは程遠いとは思う。しかし、自分の存在が思ったよりも特別なものでありそうで、戸惑いを感じる。ドラゴンと二人だけのこの生活にも、もしかしたら特別な理由があるのかもしれない。


 ちなみにこの後、現在のレベルが1である事を伝えたらとてつもなく驚かれた。普通は成人(15才)にもなればただ生活しているだけでレベル3にはなっているらしい。


 俺が転移者だからなのだろうか? わからない事がまだまだ多い。今、確実にわかっているのは、


「英太よ! 本日中にゴーレム10体は作ろうぞ!」


 過酷なブラックドラゴン労働環境だけだった。

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