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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第五十三話 安らかに眠れ

 サーシャはなかなか目覚めなかった。ダンジョン探索は中止になったし、ゴレミは街の探索に向かい、俺はポーション生成と、新たな装備品の創造クリエイトに勤しんだ。


 サーシャに合うような防具を少しでも可愛らしく作り上げる。サーシャの気を紛らわす可能性があるなら、それは喜んでやらせて貰う。


 ゴレミは昼前に帰って来た。数冊の魔導書と、魔術辞典、それと絵本を購入したようだった。


「私も魔法を使えるようになりたいのです」


「無属性魔法か……これならゴレミに合いそうではあるな」


「ありがとうございます。こちらは英太さまにと思いまして」


 手渡されたそれは魔法辞典。過去に存在したとされる全ての魔法が記載されている。


「英太さまの場合、使える可能性があると気付いた段階で使用が可能になります。この本に載っている魔法が眉唾でも、英太さまならば、もしかしたらと思いまして……それと、これはサーシャさまにお見せするべきか否か……」


 それは絵本。どうやら紀元前の勇者一行の物語のようだった。作者名は……レミ・タキザワ!?


「ゴレミ、読んでみたか?」


「さわりだけは。昨日ギルマスから伺った話の別視点といいますか……」


 俺は絵本を開いた。


『勇者と五つの種族』


むかしむかし、

この世界は 恐ろしい魔王 によって支配されていました。


人々は絶望し、希望はかすかな灯火のように揺らいでいました。

しかし、そのとき 勇者さま が立ち上がったのです。


勇者さまは 仲間たちと共に戦いました。

ドワーフの戦士、獣人の盾使い、妖精の魔女、エルフの賢者……

それぞれが力を尽くし、ついに 魔王を討ち倒したのです!


長き戦いが終わり、

世界には平和が訪れました。


けれど、それは本当の終わりではありませんでした。


——それから 数十年後 のこと。


突如として 漆黒の邪神 が現れたのです。


邪神は魔王とは比べ物にならないほどの力を持っていました。

大地は裂け、空は黒く染まり、

世界そのものが消滅しかけました。


勇者さまと かつての仲間たち は、

再び 武器を手に取りました。


闘いは 熾烈を極め、

多くの種族が 絶滅の危機に 瀕しました。


五つの種族の力がひとつになり、

ついに邪神を追い詰めました。


しかし、邪神の力は あまりにも強大でした。

何度倒しても、

何度打ち砕いても、

邪神は何度でも蘇りました。


そして、世界は選択を迫られました。


このまま滅びるか——

それとも、何かを犠牲にしてでも邪神を封じるか。


そのとき、勇者さまは ある決断 をしました。

その生命を賭けて、邪神を鎮める。


光があふれ、世界を包み込み——

気づけば、邪神の姿はどこにもありませんでした。


それから、長い時が流れました。


人々は今も語り継いでいます。


勇者さまと仲間たちがいたからこそ、今の世界があるのです。


だから今日も、

空が青く、風が吹き、世界は続いているのです。


——この世界があるのは、勇者さまと仲間たちのおかげなのです。



 なんて事の無いありきたりの内容だ。


 何度でも復活する黒い邪神……その絵がドラゴンに見えたのは……気のせいと思いたい。


 その時、サーシャが目を覚ました。俺は慌てて絵本をアイテムボックスに仕舞い込む。


「ふぁあ……ん、あ、おはようございます」


 いつもと変わらないサーシャの姿に拍子抜けをする。昨日の悲壮感は消え失せている。平気なフリなのか、本当に平気なのか、全くわからなかった。


「サーシャ、昨日の夜の事は覚えてるか?」


「え? ギルマスさんのお宅にお邪魔しましたよね?」


「お祖母さんの話は覚えてる?」


「はい。ショックでしたけど、何か事情があったのだと思います。大袈裟に伝わったのか、それしか方法がなかったのか」


「その後の事は?」


「え、宿に着いてから、寝ました」


「本当に?」


「あ、眠れなかったから……やっぱり考えちゃって。だから久しぶりに安眠魔法をかけました」


「俺にだよな?」


「はい。あ、全員にです」


「この三人?」


「はい。寝ますよーって……言いませんでしたっけ?」


「言っていましたが、それでは安眠魔法とは認識出来ません」ゴレミは言った。


「あ、ごめんなさい。それで……どうかしたんですか?」


「いや、夢とかは見なかったか?」


「夢……? あっ、ママが出て来て……」


 サーシャはそのままぼろぼろと泣き始めてしまった。


「あれ、なんでだろ? 悲しくなんかないのに……どうしたんですか?」


「いいよ、止まるまで泣こう。また目がぱんぱんになっても、治してやるから気にするな」


「はい。でも本当に悲しくないんです……なんでなんだろ?」


 サーシャの涙はしばらく止まらなかった。泣き止んだと同時に回復魔法をかける。目元の腫れは引き、いつもの顔に戻った。そしてそのまま鑑定魔法もかけさせて貰う。


名前:サーシャ・ブランシャール

年齢 : 330

種族:ハイエルフ

称号:暗黒竜ダークドラゴンの友達

レベル:21 (次のレベルまで640EXP)

HP:2800/2800

MP:4300/4300


基本能力

筋力: E

敏捷: C−

知力: C−

精神: B

耐久: E

幸運: C+


ユニークスキル

• R.I.P Lv.3


スキル

•生活魔法 Lv.3

•隠蔽魔法Lv.5

•精霊魔法Lv.4



「サーシャ、魔法のスキルレベルが上がってるみたいだ」


「やった! どれが上がったんですか?」


「精霊魔法がレベル4、隠蔽魔法がレベル5、R.I.Pがレベル3だ」


「うーん、いつ上がったんだろ?」


 俺は各スキルに焦点を合わせて、詳細を鑑定した。


「精霊魔法は……もうサーシャは妖精とも精霊とも話が出来るようになったよ。一日に生み出せる緑の量も増えたし、精霊の力で敵を攻撃したり、味方を回復したり出来る」


 これは、昨日ゴレミが確認したものだろう。サーシャは無意識に使っていたのか?


「凄いです。試していいですか?」


「後で街の外に出ようよ。その時試してみよう」


「はい! 隠蔽とR.I.Pも教えてください」


「隠蔽魔法は消費魔力が格段に下がったみたいだ。丸一日でも24。一時間1の消費で姿を隠蔽出来る。それと、看破もされにくくなった」


「え、英太さんも見えなくなりました?」


「いや、俺の看破には通用しないみたい」


「残念。でもいいです。仲間だし!」


 鑑定を阻害したあれはなんだったのだろうか? 隠蔽魔法でないとすると、R.I.Pか、もしくは誰かからかけられた魔法?


「で、R.I.Pなんだけど……」


R.I.P(Requiescat In Pace)(とても残念)


Lv.1: 安眠

周囲の者に心地よい眠りをもたらす。


Lv.2: 夢見の加護

眠っている間、精神的な回復が促進される。悪夢や精神干渉系のスキルを軽減。


Lv.3: 魂の籠手

無意識に発動し、対象の精神に深刻なダメージを与える幻覚や記憶を遮断する。トラウマ級の衝撃を受けても、一時的に意識を飛ばして保護する。


 俺は読み取れた全てをサーシャに説明した。レベルが上がるにつれて効果が足されていくものなのか、選択出来るものなのか……少なくとも、三つ目はオートスキルのようだった。


「精神を保護……スキルに助けて貰ったんですかね?」


 サーシャの悲しみを消し去った? だから悲しくもないのに涙が出た……便利だけど、さみしいスキルだな。それと夢遊病が繋がるのかどうなのか。


「サーシャ、昨日の夜……出歩いた記憶はないよな?」


「ありません」


「そうか……サーシャ、R.I.Pの隣に『とても残念』って書いてあるんだけど、これは……」


 すると、サーシャは急にテンションを上げた。


「はいダメー! トラウマ解消! 記憶よ無くなれ! 滅殺なりっ!!」


 サーシャは祈るが、R.I.Pが発動する事はなかった。どうやらそれは、R.I.Pのスラングらしい。覚醒出来ないサーシャを陰でそう呼ぶエルフたちも居たそうだ。


 サーシャは拗ねてしまった。


 サーシャは滅多な事では、拗ねるや怒ると言った事をしないのに。そんなに嫌だったんだね。ごめん。


 気分転換を兼ねて、森へピクニックに向かうことにした。宿は一日しか手配していなかったので、再び押さえなければならないのは面倒だった。しかし、昼過ぎまで部屋を使わせてくれただけでも感謝しなければならない。


「今夜の部屋は一部屋にしますか、二部屋にしますか?」ゴレミが言った。


 そう言えば、小屋では当然のように同室だったけど、普通は男女別室だよな……お金も急に余裕が出来たし……別室にするか?


「じゃあ、二部屋にしよう」


「承知しました。では、そのように手配しますね」


 ゴレミはテキパキと受け付けに向かって、支払いを済ませていた。


 ゴレミに乗って空の旅に出る。もちろん隠蔽魔法で透明になっている。本来ならば顔が変形するほどの風の強さなのだが、そこは風魔法を使って相殺している。便利だぜ、風魔法。


 俺たちは森の中で果実や木の実を収穫した。鑑定魔法のお陰で食べられる、食べられないだけではなく、糖度や熟し具合までわかるのは発見だった。少し多めに収穫して、サーシャのご機嫌窺いに使うとする。楽しそうにしているサーシャを見て胸を撫で下ろした。R.I.Pには疑問と不安が残るけど、それはユニークスキル全般に対してもそうだった。


グウィンの『リポップ』もそうだし、俺の『創造クリエイト』もそうだ。


 ん……他に誰かユニークスキルを持ってた人いたよな? 隠蔽スキルで作ったんだっけ……アドちゃん? ユグドラシル? 誰だ?


精霊召喚ドライアド・サモニング


 サーシャが呪文を唱えると、地面から木の根が生えてうねうねとうごめいた。


「凄いです! 自由に動かせます!」


「ゴレミ、サーシャに木の実を投げて! サーシャはそれを木の根で防御して!」


「承知しました」


「防御します!」


 ゴレミは木の実を凄まじい力で投げた。それも連続して10投もだ。木の根はその全てを塞ぎ切り、根の先端で木の実を集めていた。


「英太さん、木の実食べてもいいですか?」


「いいよ。サーシャ、防御は自動追尾だったのか?」


「自動? はい。防御! って考えたら守ってくれました」


 これは便利だ。サーシャを守るのは精霊たちに任せて、戦闘に集中出来る。


 その後、ゴブリンを攻撃するように促したが、やはりサーシャは攻撃出来なかった。ドライアドとサーシャの意識は、深いところで繋がっているのかもしれない。

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