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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第五十二話 真夜中のサーシャ

 翌日の目覚めは快適だった。まだ街は動き出していない。朝の5時前後だろうか。色々あったからなのか、知らない街の知らない宿屋のベッドは最高の睡眠を提供してくれた。


 サーシャはまだ眠っているようで、ゴレミの姿は部屋にはなかった。


「ゴレミの奴……勝手に出歩いて絡まれたらどうすんだよ」


 ゴレミが簡単に負けるとは思えなかったが、トラブルを起こしては欲しくない。


 ゴレミも心配だが、サーシャも心配だ。大好きなお祖母さんの二つ名が殲滅の厄災で、勇者パーティーにいた事や、人間を生贄にして悪魔祓いをした事を知った。あの後はいつものサーシャに戻っていたけど、きっとまた、無理して明るく振る舞っていたのだろう。


 ドサッ、と音がした。


 ゴレミが戻ってきたが様子がおかしい。その両脇に平均的なチンピラ冒険者を抱えていた。


「ゴレ……」


 話しかけようとすると、口元に人差し指を立てられた。


「サーシャさまを起こさないようにお願いします。それと、至急Cランクポーションをご用意ください」


 用途は明白だ。俺はポーションを創造クリエイトしてゴレミに手渡した。ゴレミはポーションを冒険者に振り撒き、口元にも流し込んだ。


「適当な場所に捨てて参ります。少々お待ちください」


 そう言いながら、ゴレミは冒険者を抱えて飛び去っていった。


「何があったんだ……」


 俺はベッドに横たわる。隣のベッドで眠るサーシャの頬には、涙の跡が滲んで見えた。


 数分後、戻ってきたゴレミから、昨夜の出来事を聞いた。ギルマスの自宅から宿屋に戻って来た後、サーシャは俺たちに安眠魔法をかけて、部屋を出て行ったという。


「安眠魔法……R.I.Pか」


「はい。サーシャさまのユニークスキルです。幸い私には効かなかったもので、サーシャさまの後を追いかけました。サーシャさまは真っ直ぐ教会に向かわれ、一時間ほど教会から出て来られず、出て来た時には心かにあらずといった様相で」


「教会でお祖母さんの事聞いたのかな」


「恐らくは……そこに、先ほどの冒険者が現れまして、サーシャさまに声をかけたのです」


「ああ、夜中に一人で出歩く治安じゃないよな」


「冒険者は口も憚られるような言葉をサーシャさまに浴びせました。要約すると『ヤらせろや』の品を落としたような発言でした」


「助けには入らなかったのか?」


「最善は尾行がバレないまま、無事に宿まで戻っていただくことでした。サーシャさまが汚される可能性が僅かでもあれば、このゴレミ、命に変えても救い出す所存でした……ですが」


「ですが?」


「サーシャさまは『死ぬ覚悟があるならいいよ』と言いました」


 思わず天を仰いだ。サーシャがそこまで追い込まれていた時に、呑気に寝ていたとは……


「冒険者たちは『こんな良い女抱けるなら、いくらでも死んでやるよ』と言いました。サーシャさまは無言で歩を進めました。そして、木陰に入ると同時に、冒険者はサーシャさまの身体をまさぐりました」


「想像したくもないわ」


「ほんの一瞬でした。すぐに冒険者の身体に木の根が巻きつき、身体を締め上げました。そして、冒険者の骨は砕け、気を失い、サーシャさまは宿へと戻られました」


精霊魔法ドライアド・サモニングか?」


「恐らく。サーシャさまに殺意はありませんでしたが、死んでもおかしくない攻撃力でした。私は速やかに冒険者を回収し、宿の屋上に隠しました」


「隠しましたって……さっきのだろ?」


「はい。サーシャさまが眠り、英太さまが起きるのを待っていたのです。ポーションを与えねばと」


「死んだらどうするんだよ」


「その時はその時です。証拠を隠滅し、冒険者の死体を魔獣の住処に運ぶつもりでした」


「本当の事を言えよ。今回は誰も死んでないんだよな?」


「はい。グウィンさまの鱗に誓って」


 何に誓ってんだよ。でも身体の一部だもんな。おかしくないよな。


「信じる。今回の対応は咎めない。でも、ゴレミにも人の命を大切にして欲しい」


「承知しました。しかし、私の責務はグウィンさまの生存確保とお二人の護衛です。お二人に危険が及ぶのであれば、その限りではございません」


「うん。わかった……無理にでも起こしてくれたら良かったのに」


「R.I.Pを無理に解除した場合、どうなるのかが判断出来なかったもので」


「そうだな。わかった」


「昨夜のサーシャさまなのですが、意識を失っていたように思えました」


「でも、会話してたんだろ? 精霊魔法も使ってたって……」


「はい。しかし、教会から出て来たサーシャさまは全くの別人というか、抜け殻のようでして」


 初めて会った時のサーシャがそんな状態だった。魔力に当てられた……とグウィンは言っていたが、あの時のグウィンは既に記憶を失っていた。間違えた事を言っていたとしても不思議ではない。


「ちょっと鑑定してみる《詳細鑑定》」


 すると、鑑定が弾かれてしまった。


「どうなさったのですか?」


「鑑定出来ない。一体どうなってるんだ?」


 サーシャはしばらく目覚めそうになかった。俺はこの場をゴレミに任せて、ギルマスの元に向かった。


 一連の出来事が大きなトラブルに発展する可能性もある。掻い摘んで事情を説明すると、ギルマスは『サーシャの対応に関しては』問題ないと言い切った。


「夜中に女を襲おうとする奴が悪いに決まってるだろ」


「そりゃ大前提でそうなんだけど、過剰防衛だし顔も見られてる」


「防衛に過剰もなにもねえぞ。命あってのモノダネだ。その冒険者がやり返しに来たら殺すつもりで撃退する事だな。ギルマス権限で守ってやる」


「冒険者ってそれが普通なんですか?」


「少なくとも、アラミナに出稼ぎに来てる奴らの九割はそういう奴らだ」


「とりあえず、ダンジョン攻略は明日以降にさせて貰えますか?」


「ああ、ところで、サーシャ嬢が向かったのは、街の外れにある教会だったか?」


「宿屋の近くの教会ですね」


「教会……そうか、そうだな……可能性はあるわな……」


「なにか?」


「いや、気になった事は今回の事とは別件だ。こっちで調べてみるから、確証を持てるまで預からせてくれ。これは仮定だが、サーシャ嬢は催眠魔法にかかったんじゃないか?」


「教会でかけられたって事ですか?」


「その可能性が高いとは思う。それ以外のタイミングがあったなら別だがな」


 ……ない。タイマーがセットされているタイプならあり得るが、直接のタイミングは無かっただろう。ゴレミに確認してみるか。


「ニイチャン、また何かあったら何でも頼ってくれな。ダンジョン攻略は絶対に行って貰うからな」


 本当にギブアンドテイクなおっさんだ。


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