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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第五十一話 殲滅の厄災

 ギルマスのお宅へとお邪魔する。奥さんのマリィさんと娘のマリヤちゃんとの三人家族だという。


 若くて綺麗な奥さんに、めちゃくちゃ可愛い娘だと、この野郎! と思ったが、確かにギルマス自体も35歳と見た目より15歳は若かった。


 若くして冒険者を引退した理由は言わずもがな。左腕を失ってしまったからだそうだ。


「命を失わなかったから、こうやって娘を抱ける」


 そう言って、ギルマスは片腕でマリヤちゃんを抱えた。頬をすりすりしようとしたが、「お髭痛いから嫌だって言ったでしょ」と、拒絶されていた。


「あなた、お髭、本当に嫌みたいだから気をつけてね」


「わかったよ。ごめんな、マリヤ」


「いいよ、もうやめてね」


 マリヤちゃんは、そう言ってギルマスの胸に顔を預けた。


 随分と利発的な子だな。奥さんもしっかりしてそうだし、なんかいい家族だな。


「可愛い。グウィンちゃんより年下ですかね? マリヤちゃんは何歳でちゅか?」サーシャが言う。


「5歳だよ」マリヤちゃんは、はっきり返事をした。


「サーシャ、5歳に赤ちゃん言葉はやめなさい。それにグウィンは10歳くらいだろ?」 


 本当は2025歳だけどな。とは言わなかった。


「グウィン様は特別です。可愛らしさと厳かさが混ざり合っていますからね」ゴレミは相変わらずだ。


 マリィさんがヒノモトの果実でもてなしてくれた。


「ミヤサキ特産の果実でマングーです」前世でも聞き覚えのある南国の果実に、サーシャはヨダレを垂らし、ゴレミはその様子を眺めていた。


「ごめんな、俺に人体の知識があればゴレミにも食事を摂れるようにしてやれるのに」


「いえ、こうやって話が出来るだけでも充分です。私は英太さまとグウィンさまのおかげで幸せです」


「なあ、さっきから良く名前が出てるグウィンってのも、ヒノモトに住んでるのか?」


「ああ、いえ、ちょっと離れたところにいて」


 そうか。ギルマスは俺のヒノモト出身は疑ってないのか……確かに街でも黒髪は珍しかったもんな。ギルマスの事は信用出来そうだ……しかし、グウィンの事を話すにはまだ様子を見なければならない。


「ふーん。そうか……マリィ」


 ギルマスがマリィさんに視線を送る。


「マリヤ、パパたちは大事なお話しがあるから、ママと絵本読みましょう」


「はーい。パパ、お客さま、おやすみなさい」


 そう言って、マリィさんとマリヤちゃんは寝室へと向かっていった。


「この話をする為にアンタらを呼んだんだ。ギルドでは出来ない話だ。俺もアンタらの秘密を守る。だからアンタらも秘密を守ってくれ」


「わかりました」


「この国はもう壊滅している。残ってるのはこの街だけなんだ……俺はこの街もぶっ壊そうと思っている……それをアンタらにも手伝って欲しくてな」


「どういう事ですか?」


「そのまんまだよ。アラミナは犯罪者と汚職に蝕まれちまったのさ。まあ、もう国自体が無いから機能しなくて当然さ」


「国がない?」


「おいおい、オークと遭遇したって事は、王都の跡地に行ったんじゃねえのか?」


「王都の跡地って、もしかしてあの荒野が……?」


「そうか、知らないか……そうだよ。あの荒野は王都フレイマとフレイマ城が消滅した時の爆撃で出来たんだよ」


究極魔法アルティメットマジックですか?」サーシャが聞いた。


「いや、勇者と魔王、サシのぶつかり合いだ」


「え、それって2000年以上前の話ですよね?」


「いや、それとは違う。もう3年になるかな……あれ以来、魔王の瘴気が残り続けていて、この国は魔獣だけでなく、魔物も産まれるようになっちまった」


「そうか……だからあんなに魔物がいたんですね」


「ここからでもビビっちまうくらいのスゲー闘いだったよ。この国の王子であり勇者の子孫、七勇者の一人グレアル様は、あの闘いで命を落とされたんだ」


「勇者の子孫ですか」


「そっちのレミ嬢と同じ顔をした、拳聖・レミ様の妹君と紀元前の勇者様の子孫だ。ヒノモトは別だが、他の人間国は全て勇者様の子孫が統べている。だから王族であり、勇者でもある。これは伝承じゃねえが、勇者様は相当な色好きだったそうだぜ」


 ……それは承知しております。


「2000年前の魔王とは別に、新たな魔王が誕生したという事ですよね? 問題が起きたのはその時だけなのですか?」ゴレミが言った。


「魔王はずっと前から誕生してたんだが、不可侵をキッチリ守ってた。そりゃ小さないざこざはあるさ。でもそれは、どちらの国にとっても管理しきれない賊の類の半端もんが起こしたもんだ」


「人間国は獣人の国と戦争直前まで言ったと聞きましたが」ゴレミは続ける。


「驚いたな。国家機密だぜ?」


「逆に、何故ギルマスは知ってるんです?」


「ああ、その時の争いに俺も参加していたからな……そん時に、これよ」


 ギルマスは無い左手を指差した。


「いざこざの原因は知ってんだろ? 獣人を飼いたいって変態貴族が多かったのさ。客観的に見れば悪いのは人間国だ。でも主観で言わせて貰えばどっちもどっちだったよ……もうあんなのは懲り懲りだ。戦争ってのはあってはならないんだよ。あそこで終わって良かった……この左手で終わって良かったよ」


 ギルマスが参加したという事は、そんなに昔の話では無いのだろう。人間国と獣人の国にはまだ溝のようなものがあるのかもしれない。


「別の種族同士が仲良く過ごすのは、もう無理なんでしょうか?」サーシャが言った。


「うーん、生まれてこの方……いや、そのずっと前からそうだったからな……簡単じゃ無いと思うぞ……でもな、今、俺の目の前にそれをしている奴らがいる……これを見せられたら可能性があると思っちまうぜ」


 ギルマスは俺たちを指差した。


「そうですか」


「まあ、現実的には不可侵の条約があるから、関わる事すら難しいんだけどな」


「もしも……もしも不可侵の外側にある国があるとしたら?」


「ヒノモトって今はそんな感じなのか?」


「いえ、ヒノモトではないと仮定して頂いて」


「まあ、メリットがあるかどうかだな。今より良い生活が出来るなら他種族と仲良く暮らすだろうな。偏見が無くならないなら、法で縛るしかない……自由に和気藹々ってのは……数が増えるほど難しくなるわな」


「メリットですか」


 島にある明確なメリット……ユグドラシルの大樹……アドちゃんが切り札に指名するほどの圧倒的な存在。デメリットは……邪神? かもしれない存在?


「でも、エルフ王国とは仲良く出来そうなんだろ? なんたって女王様と仲良くしてるんだから……あそこはハイエルフの絶対政権だからな」


 その言葉に、サーシャの表情が変わった。そしてサーシャはギルマスに対して真剣な眼差しを向ける。


「ショウグンさん……祖母、ダーリャ・ブランシャールについて教えてください。殲滅の厄災とはどう言う意味ですか?」


「そうか……そうだな……そもそも『ダーリャ・ブランシャール』と『レミ・タキザワ』は、紀元前の勇者と共に魔王を滅ぼしたパーティメンバーだったんだ」


「……初耳です」


「そうか、孫にも言ってないんだな……殲滅の厄災の理由な、ひとつはそのまんまだよ。厄災を殲滅したんだ」


 殲滅の厄災……だと、ダーリャさんが厄災のように聞こえるが……


「というかな、俺も伝説として聞いただけだから、そのまま話しても、それが嘘というか、誇張した作り話かもしれないって事は理解してくれよ」


「はい」


「殲滅の厄災には二つの意味がある。一つ目は、さっき言ったとおり、厄災を殲滅した。その立役者があんたの婆さんだ。つまりは英雄だ……同時にな、あんたの婆さんは規格外過ぎたんだよ。この国の伝承にはな、あんたの婆さんが殺した人間の数が書き記されている」


「殺した……人間の数?」


 サーシャの顔から血の気が引いていくのが見て取れた。


「ああ、ハイエルフのダーリャ・ブランシャールは、多くの人間を殺した……殲滅の厄災でもある」


「何故、祖母はそのような事を……」


「これも、一説によると……だがな……儀式の為らしいんだわ……」


「儀式?」


 思わず口を挟んでしまった。


「ああ、その為には、多くの犠牲が必要だった……それによって、世界に平和がもたらされたんだ」


「儀式って……どんな?」


「詳しくはわからねえ。悪魔祓いの儀式としかな。直接その儀式に参加した奴に聞くしかねえが……あんたの婆さんより長生きな奴なんてのは、早々いないからな」


 俺には心当たりがあった。そいつは記憶を無くしている。悪魔祓いの儀式と邪神の封印……同じ事なのか、別の何かなのか……


「ああ、これも伝説でしかないがな。『アンカルディア』が生きていれば……ってところだな」


「アンカルディアさん?」


「ああ、永遠の命という呪いを得た大魔導師だよ。勇者パーティの一人だから、ダーリャの仲間でもあるな。今も生きていて、人里離れて暮らしているって伝説になっている」


「その伝説って、絵本か何かになっていますか?」


「絵本? いや、それも口伝えだな……悪魔祓いに関してのあらましは大聖堂教会の本部に保管してあるとか聞いた事はあるが、開示してくれるとは思えないな……教会は上に行くほど腐ってるんだ……アンタらなら教会もぶっ壊……なんて考えるのはやめておけよ」


 ハイエルフに伝わる絵本と同じ話だと思うが、内容は違っている……不可侵になった事によって、自国に都合の良いように言い伝えが変わっていったのかもしれないな。


「それは、この街の教会とは違うのですか?」


「信仰してる神様は同じだが、全くの別物さ……なあ、サーシャ・ブランシャール……あんたの婆さんはな、基本的に感謝されてるんだぞ」


 その言葉は、サーシャの長い耳には入らなかったようだった。頭の中は人間を蹂躙する祖母の姿で埋め尽くされているのだろうか?


「ギルマス、街をぶっ壊すとはどういう事ですか? あの街を破壊するなんて事は出来ませんよ」


「いや、物理的な破壊は最終手段だよ。俺が狙ってるのは、経済的な壊滅だ。もうその算段は出来てんだ。ダンジョンを攻略して、街の主たる収入源を止める……それだけで、アラミナの価値はほぼゼロになる。問題は、魔王の発した魔素が新たなダンジョンを生み出すことだ。そうなったら現状維持になっちまう」


 魔素……持って帰れるなら持って帰りたいですけどね。


「魔王が生きてるうちは、どうしても魔素が残っちまうんだとさ。だから魔物も産まれちまう」


「そうか……勝ったのは魔王なんですよね? 王都を殲滅した以外の被害は無かったんですか? 侵略とか……」


「ああ、そりゃ違う!」


「違う?」


「魔王はフレイマを救いに来てくださったんだ」


「え、救いに来た?」


「ああ、自国を滅ぼそうとした勇者グレアル王子を魔王デスルーシが退治してくださったのさ」


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