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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第四十八話 冒険者ギルド

 正直、ちょっと興奮していた。


 ゲーム開発者として、本当に多くの街を作り上げてきた。デフォルメされているのにリアルな街……沢山の人が何十パターンもの台詞を喋る。開発途中だった『エターナル・コード』は、街のモブキャラすらも自我を持ち、一人の人間として物語を刻んでいる……


 という作品になる筈だった。


 そんな無念さを掻き消す程の、完全たるファンタジーの街が目の前に広がっている……当然ながら人には人格が宿っている。


 もう見渡す限りの人、人、人だ。まるで渋谷じゃないか。いや、渋谷は言い過ぎか……吉祥寺……下北沢……? とにかく東京の適度にいい感じの街!


 それくらい人が居た……ように感じた。広い荒野に二人だけだったからな……今となっては仲間が増えたけれど……こんな景色をグウィンにも見せてあげたい。


「英太さん! ご飯食べましょ!」サーシャが声を張り上げる。


「サーシャさま、今のままでは無銭飲食になってしまいますよ。犯罪を行うと奴隷落ちしてしまいます」ゴレミは冷静にサーシャを嗜めた。


 奴隷とかあるのか……でも、世界観的にはあるよな。


 さて……奴隷にならない為にもまずはお金の調達だ……どうすればいい? 武器屋か道具屋で何かを買い取りして貰うか……


 結果として、それは不可能だった。買い取りにはギルドカードが必要だったのだ。身分証無いとダメなんですね……前世でもそうでした。


 個人間での取り引きも不可能だった。出来ると言えば出来るのだが、これもギルドカード無しで行った場合、『見つかったら』取り締まりの対象になるそうだ。危険な橋を渡る場面ではない。


 俺たちは素直に冒険者ギルドに向かった。ギルドだってさ……またしてもワクワクしちゃうよね。ニヤニヤしちゃうよ。


 この街の冒険者ギルドがたまたまそうなのか、ギルドそのものがそうなのか、建物は大型の体育館程のサイズがあった。


 中に入ってみると合点がいく。建物の半分が冒険者と商業のギルドで、もう半分が酒場になっていた。酒場はかなり賑わっていて、昼過ぎにも関わらず酒をかっ喰らう冒険者の姿で溢れていた。


「英太さん、後であのお店に行きましょうね」サーシャが嘆願する。


「英太さま、酒場の人間たちが我々に注目しております。特にサーシャさまと私の胸を舐め回すような視線を感じます」ゴレミは冷静だ。


 確かに、いやらしい視線がこちらに向いている。


「二人とも美人だから、ある程度は仕方ないが……ちょっとガラが悪いな」


 そうなのだ。明らかにガラが悪い。冒険者というか……野盗にしか見えない者もいる。


「おい姉ちゃーん! 銀貨3枚でどうだ?」


「おい、あんな上玉3枚な訳ねーだろ。俺は5枚は出すぜー」


「ゴレミちゃん、見ちゃダメだよ。アレはお金で身体を買おうとしているの」


「存じております。人間の営みは一通りアドちゃんさまから教わっておりますから」


「アドちゃんが?」


「はい。それはそれは詳細に語ってくれました。植物のある部屋になら侵入出来るそうで、目前で学習したそうです」


 アドちゃん、精霊だからって覗きと不法侵入はどうかと思うよ。


「胸だけでいいからさ、銅貨で頼む!」


「ぺろっぺろってさせてー」


 うるっせーな……っつーか、こいつら本当に普通の冒険者なのか? 輩が過ぎるぞ。


「《詳細鑑定》」


 タチの悪そうな数人を詳細鑑定してみた。能力は低い。死んだ冒険者の持ち物を盗んだ事もあるようだが、モラルはともかくとして、生き死にがかかった場所で咎められる行為……なのかというと、難しい……扱いとしては紛う事なき冒険者だった。冒険者ってそんなものなのか?


「とりあえずギルドだ。食事は後々考えよう」


 俺たちは冒険者ギルドの受け付けに向かった。受け付け嬢のニーナさんに事情を話し、新規ギルドカードの作成と、手持ちが無い事を説明する。


 何とかしてくれると期待したが、このニーナさん……全く融通を効かせてはくれなかった。


「ダメです」「無理です」「不可能です」端的な回答で、とりつく島も与えない。


 ギルドカードを作るにはお金が必要。


 物を売る為にはギルドカードが必要。


 融通が効かなきゃ詰みな状況です。


 わかります。ルールですものね。無一文で結界を飛び出る方が悪い……というか、レアケースですものね。


 《交渉》と心の中で呟いた。


「お願いします。このポーションでしたらきっと冒険者の皆様のお役に立つと思います」


 俺は水魔法で生成した『ポーション水』を手渡した。先程までのニーナさんであれば、突き返したであろうが、交渉の効果が出ていた。


「鑑定しても宜しいでしょうか?」


「ええ、もちろん」


「では失礼致します」ニーナさんはポーションを持って立ち上がった。去り際にゴレミに目をやり、頭を振りながら扉の中へと消えていく。


「英太さま、大丈夫でしょうか?」ゴレミが言った。


「大丈夫だと思う。ギルド職員だからって、そうそう隠蔽看破は出来ないよ」


「看破出来ずとも、違和感を与えてしまったのかもしれません。私がもっと人間の機微を熟知していれば……」


「大丈夫、人間そのものだよ」


 その悔やみ方も、人間の営みを理解してる様もな。


「エイタ・カブラギ様……こちらにどうぞ。お連れの方々も」


 戻って来たニーナさんに案内されるまま、ギルドの応接室へとやって来た。


「英太さま、大丈夫でしょうか?」


 聞かれる度に不安は増していくが、これしきでリーダーが慌てふためくわけにはいかない。


「いや、大丈夫……だろ?」


「そうではなくて、また過剰スペックだったのではないですか?」


「いや、そんな事ないぞ。確かにBランクポーションだ」


 そう。入念に鑑定した。製作者や水魔法で作った事は隠蔽せずとも調整出来た。これはちょっと制作過程が違うだけの真っ当なポーションだ。


「こちらにお入りください。私は失礼いたします」


 そう言ってニーナさんは受け付けに戻ってしまった。俺は恐る恐る応接室のドアを開けた。


 応接室には、一目見てギルドマスターですよね? という風貌の屈強な中年男性がいた。2メーター近い長身に筋骨隆々……そして、隻腕だった。


「おう、あんたがヒノモトの商人さんか……俺の名前はショウグン・トクガワだ。ヒノモト出身で、この街のギルドマスターだ」


 ヒノモト!? こんなに早く嘘で首を絞められる事になるなんて……くそっ!! ヒノモトの事を何も知らない!!


「エイタ・カブラギです」


「あんた、どこの出身だい? 俺はトマコっていう北の町なんだが」


「トマコ?」


 苫小牧みたいだな……くそっ適当な名前だすかか……ここは会社のオフィスのあった……


「俺はシブヤ出身です」


「おお、シヴヤか! 良いところに住んでんな! 大都会じゃねーか!」


 あった!! シブヤじゃなくてシヴヤだったけど、なんとかなった!


「俺の出身、本当はトマコマエって街なんだがな、ちょっとカマかけてみたんだ。すまねえな」


 トマコマエ……本当に似てる街があるんだな……


「いえ、それで……買い取りの方は……」


「おう、条件次第では買い取るぜ。特別待遇だな」


「そうですか。条件というのは?」


 心の中で《交渉》を唱える。その瞬間、嫌な手応えを感じた。交渉が弾かれたのだ。


「ほー。ニイチャン交渉スキル持ちか……悪いな、ここでは一切のスキルを発動出来ないようにしてある」


 どうして、こうもやることなす事が裏目に出るのか……


「ははは、すみません。少しでも交渉を有利にというのが商人の性でして……」


「商人ってのも怪しいな。ニイチャン、さっき鑑定スキル使ったよな?」


「ええ、ポーションの品質を確認しました」


「そうじゃねえ、酒場のボンクラ共の値踏みしてただろ?」


「あはは、バレてしまいましたか……ずいぶんと物騒な輩が多いなと不安になりまして……なにせ、連れがこのような器量なもので」


「ふん、鑑定スキルな……凄いのか馬鹿なのか……よし、《封印解除》スキルの発動を許可した。俺を鑑定してみろ。大丈夫だ。レベルに関わらず見られるように解放してある」


 信じるしかないか……でも、詳細鑑定はやめておいた方がいいな……


「《鑑定》」


名前:ショウグン・トクガワ

年齢:35歳

職業:ギルドマスター

称号:元S級冒険者

   隻腕の猛将

レベル:72

HP:6400/6400

MP:1800/1800


ユニークスキル

•《豪腕》Lv.3


スキルスロット

1.闘気操作 Lv.3

2.鉄壁の構え Lv.3

3.万能鑑定 Lv.4

4.封印魔法 Lv.3



「ショウグン・トクガワ……さんですね」


 正直、色々突っ込みたい能力が見えたけど、ここは無難な事だけしか触れないでおう。


「ほう、こりゃ驚いた……本当に万能鑑定持ちか」


「ええ……万能……」


 しまった! え、なんで? 余計なこと言ってないだろ?


「普通の鑑定スキルはな、商売用なんだ。だから商人でも使える。でもな、人様の能力を覗き見出来る万能鑑定って言ったらそうはいかねぇんだよ。使える奴なんざ、全世界で50人も居ねえだろうな」


「ははは……」


 マズイ。言い訳も思いつかない……


「いやな、俺が興味もったのは、ニイチャンじゃねえんだよ。そっちの可愛い子ちゃん二人だ」


「可愛い子ちゃん!?」


 おいサーシャ、こんな場面でも喜ぶのかよ。


「ああ、どう考えてもおかしいんだよな」


「俺がこんな美人を連れているのがですか?」


「いや、まぁそれもあるが……アンタら、ヒノモトの英雄『レミ・タキザワ』と、殲滅の厄災『ダーリャ・ブランシャール』だろ?」


 サーシャとゴレミが目を合わせた。そして、二人同時に……


「いえ、違いますけど」と言った。


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