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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第三章 亡国のフレイマ

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第四十七話 新スキル『交渉』

 早朝、早速出発の準備をする。俺は小屋を収納して、代わりにドラゴンの土像を創造クリエイトした。一ヶ月後に出現する筈の結界の割れ目の目印にする為だ。そしてサーシャがその像に隠蔽魔法をかける。


「これで大丈夫ですか?」


「私の目には何も見えません」ゴレミが言った。


「大丈夫だ。俺の目には隠蔽前の姿がダブって見えるんだ。ちなみに、見ないように念じたら映らなくなる」


「へえー……凄いですね、隠蔽看破」


 サーシャの隠蔽魔法も充分凄い。隠蔽をする、しない対象を選択して姿を変えられるのだ。その対象を隠蔽後に変更も出来る。今はゴレミにも竜の像が見えている。


「さあ、今日はここから300キロほど先にある『アラミナ』の街に向かう。昼過ぎの到着を目指して移動。道中出会った魔獣を狩りながら、サーシャのレベルを上げていく」


「はい!」


 緊張気味のサーシャの手には、ドラゴンボウガンが握られていた。あれから定期的に訓練をしていたようで、本人曰くめちゃくちゃ上達しているらしい。


 俺たちは一度隠蔽魔法で姿を消し、ゴレミに乗って、訳280キロを飛行した。小さく街が見えたところで地面に降りて隠蔽魔法を解く。ここからは魔獣を倒しながら街へと向かう。


「《身体強化》」


 俺は全員にバフをかけた。オークロードを倒した昨夜のゴレミ程ではなくとも、サーシャも多少はレベルを上げておきたい……と、ここで問題が発生した。


「あ……やっ……」


 サーシャが矢を放てないのだ。技術的な事ではなく、生き物に対して弓を引く事が出来ない。それはゴブリンなどの人型の魔物だけではなく、ホーンラビットなど、獣の姿をした魔獣に対しても同様だった。


「ごめんなさい。私はダメなハイエルフです」


 いいよ、気にするな……とは言えなかった。エルフと大魔導師以外(俺は除く)は精霊魔法を使えない。表立って精霊魔法を使えない現状、自衛の手段は持っていて欲しい。もちろん、サーシャを危険に晒さないように立ち回るが、不測の事態はいつ訪れるやわからない。


 試しに俺とゴレミが魔獣を狩ってみたが、その経験値がサーシャに加算される事は無かった。


「本当にすみません」サーシャは項垂れる。


「この問題は追々解決しないとだな。とにかく街へ向かおう」


 俺たちは『アラミナ』の街へと向かった。そこは想像していたよりもかなり大きな街で、数組の旅人や冒険者が入場手続きの順番待ちをしていた。


 その列に並びながら、門番と旅人のやり取りを観察する。何やら通行証のようなものと……銀貨を渡していた。


 やばい……金がない。


「英太さま、三人の通行税に銀貨2枚が必要な模様です。それと、あれはギルドカードですね」ゴレミも気付いた様だった。


「ゴレミ、ここからでも見えるのか?」


「はい。見えますし、聞こえます……ギルドカードは街の中で作る事も可能なようです。しかし、その場合は保証金として倍の銀貨が必要……と、簡易鑑定が行われるようです」


 どちらにしても金が必要か……どうする? 金を作る為には……街の外で行商でもするか? ポーションを売ればそれなりの価格に……いや、列を離れるのは怪しいな……目をつけられても……また姿を変える?


 俺は覚悟を決めた。


「ステータスオープン」


 自分のステータスを開き、隠蔽前のステータス画面から、スキルスロットを選択する。


「《創造クリエイト》」


 そして、新たなスキル「交渉」を創造クリエイトした。そしてそのまま元気の無いサーシャに声をかける。


「サーシャ、元気を出してくれ」


「ごめんなさい」


「矢を放てなかったのは、サーシャの優しさが原因だ。だから謝って欲しくない」


「でも……」


 「《交渉》」と心の中で念じた。


「元気を出さないと、ローエルフの称号与えちゃうぞ」


 すると、途端にサーシャの顔が明るくなった。


「わかりました! 元気出します!」


 よし……どうやら発動したみたいだ。


「英太さま、新しいスキルですか?」


「うん。人間国で立ち回る為には必要なスキルだと思って。いつまでもスキルスロットをけちってられないからな」


「左様ですか。ですが、スキルでサーシャさまにあれやこれやするのは……」


「しないしないしない」


 そうか……そんな事も出来るのか……? いや、しないよ?


「あれやこれやしたいなら真正面から堂々と立ち向かうべきです。であるならば、このゴレミ、グウィンさまの鱗に誓って後押しをさせていただきます」


「何に誓ってるんだよ! 別にそういうアレじゃなくてさ」


「どうしたんですか?」元気を取り戻したサーシャが抱きついてくる。


 あれ? 抱きつけなんて交渉してないけどな、これがサーシャの元気な姿なのか?


「英太さま?」ショートカット美女のゴレミがジト目を向けてくる。うーん、これはこれで悪くない……じゃないっ!


「違う……しない! これは価値観の相違!」


 ゴレミの誤解は解けた……と思うことにした。しかし、列に並ぶ他の旅人から羨望の眼差しが飛んでいた。美女二人に囲まれ、そのうち一人から抱きつかれた平凡な旅人は、街への入場前から目立ってしまっていた。


 そしてそれは門番も同様だった。心なしか当たりが強い。


「あの、すみません……俺たち、ギルドカードが無いんですよ……」


「ギルドカードが無いだと?」


「怪しいな……何の目的でここにやって来た?」


 門番たちは明らかに見下した態度を取っている。


「行商で。ヒノモトからやってきました」


「ヒノモトか……確かにヒノモト人は意味もなく謝る癖があるな」


 はい! 日本人の悪い癖! いや、美徳か? いや、悪い癖だな!


「船は運行しているのか? フレイマがこの状況だというのに……」


「フレイマ?」


「何だ? 知らんのか?」


「主、教えたではないですか。アラミナの街は七大国のフレイマ随一の街であります」


 ゴレミ、ナイスフォロー! 知らないのは勉強不足の俺だけ設定! アドちゃんにも感謝!


「おい、こいつらだけに構っている時間はないぞ」


 入場待ちの列はまだ続いていた。


「そうだな。通行税として銀貨2枚、保証金としてプラス2枚だ。それと……そこの女……簡易鑑定を行う……代表でこの石を触れ」


 鑑定は全員じゃないのか……ならば俺が良かったが……しかし、鑑定って水晶じゃないのか?


「鑑定を石で?」


「それも知らんのか? 指名手配犯でないかの確認だ。鑑定スキル持ちなどA級冒険者でも稀だし、水晶は値が張るからギルドでしか扱えないんだ。お前は本当に行商人か?」


「ははは……ヒノモト人なので……」


 ゴレミが石を触るが、何の反応もない。


「よし、問題ない。後は支払いだ」


「あの……すみません。途中で盗賊に襲われまして……お金が無いんです」


 門番たちは俺の言葉に明らかな疑いの目を向ける。当然だ。逆の立場なら俺も疑う。心の中で「《交渉》」と唱える。


「こちらを担保にしてはいただけないでしょうか?」


 俺はポケットの中でアイテムボックスを開く。売れそうな物の中で一番平凡な、鉄の剣を取り出した。ポーションは価格が読めないし、それが原因で目をつけられる異世界転生モノを観た記憶もある。


「マジックバック持ちか?」


「いや、衣類にマジックバックを取り付けているのか……盗賊対策か?」


「ええ、そうです」


「なら金もしまっておけば良かっただろう?」


「いや、金を渡さないと向こうも納得しませんから。それに連れを危険な目に合わせる訳にもいきません」


「金で盗賊が女を見逃したというのか?」


「カマロ一家とは別の賊が現れたのか?」


「そんな話は聞いていないぞ」


 門番たちは、何やら警戒を強め出した。


 やってしまった……そうだよな、この器量だ。盗賊ならサーシャもゴレミも攫うに決まってるよな。ここは一気に交渉してしまえ!


「この鉄の剣ですが、金貨一枚の価値があります。これを担保に……街で金の都合をしてから銀貨をお支払いします。それを認めてくだされば……支払い後にその剣は差し上げます」


「おい、ふざけるな……鉄の剣が金貨なん……」門番が口を開けて固まってしまった。


「どうかしましたか?」


「これは……本当に鉄の剣か?」


 あれ? 様子がおかしいぞ?


「ええ、ヒノモト特性の……ですが」


「とすると……ヒヒイロカネが混ざっている可能性も……」


「ミスリルと同格じゃないか」


「これは金貨一枚の代物じゃないぞ……」


 しばしのヒソヒソ話の後、俺たちは快く門を通される事になった。これは……交渉スキルのおかげなのか?


「交渉材料が過剰だったようですね」ゴレミが言った。


 交渉スキルは役に立つ……が、使い手が交渉に不慣れ過ぎて違和感バリバリの結果になってしまった。スキルレベルも個人的な交渉力も鍛えねば……


 無事にアラミナ街へと入場出来たのはいいが、ぶっちぎりで目立ってしまった。はっきり言って、先行き不安である。


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