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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第三十五話 僕はアドちゃん

 ユグドラシルの大樹は、神々しい光を放っている。ひと月前に目の当たりにしたハイエルフの覚醒と何処か似ていた。


 間も無くして精霊たちが現れた。サーシャが召喚する精霊たちは光の結晶のようだが、ユグドラシルが生み出した精霊たちは、実体としてそこに存在している……ように見えた。


「精霊ではなく、妖精族だと思います」


 精霊と妖精の違い。前世では、あくまでも架空の存在だし、諸説あるが、ほぼ同じという認識だ。確か……イタズラするのが妖精か? 


 グウィンに聞いてみようとしたが、キラキラとした目で友達になりたそうに妖精を眺めているブラックドラゴンの邪魔は……出来なかった。


「サーシャ、契約完了なんだよ」


 また声が聞こえた。声の主は妖精たちだったのか? 依然として声は何処から響いているか掴めない。サーシャの周囲を妖精が舞い踊る。妖精族は次々とサーシャにキスをした。超絶美女にキスする妖精なんて、幻想的にも程がある。


「はぁぁぁん……」


「サーシャ!?」


 すると、突然サーシャが倒れてしまった。


「どうしたんだ、サーシャ?」


「心配ありません……少し魔力を吸われただけです」


「魔力?」


「ユグドラシルを通じて同じ魔力で繋がっておる。妖精たちはサーシャの子と言っても過言ではない。母の役目じゃな」


「妖精たちのせいじゃないんだよ」


 そこに現れたのはグウィンと同い年くらいの……妖精? 他の妖精たちと違って、サイズ感は俺たちと変わらなかった。


 もしかして……


「精霊王ですか?」


「ううん、違うよ」


「急にどうしたのじゃ?」


「ユグドラシルの大樹を鑑定したら、精霊王が宿るとされる……って出たんだ」


「ユグドラシルに精霊王は宿っていないんだよ。僕は普通のドライアドだよ。アドちゃんって呼んで欲しいんだよ」


 俺はもう一度ユグドラシルを詳細鑑定する。


備考:

ユグドラシルの大樹は「精霊王」が宿るとされ、エルフやドライアドたちの信仰の対象となっている。

人間の手で伐採や傷つけることは不可能。仮に無理に干渉すれば自然界全体の反発を招く


 精霊王が宿るとされる? 鑑定結果も曖昧だったからな……宿っていないのかもしれない。


「ドライアドって……サーシャが呼べる木の精霊だよな」


 いつもの……光の結晶のような精霊だ。目の前にいるアドちゃんは、妖精と同じく実体がある。


「そうだよ。いつもは召喚されていたんだよ。でもね、ちゃんと契約をしたんだよ」


「契約……?」


「はい。したいと願っていました」


「ハイエルフにとって良いことだよな? デメリットはあるのか?」


「ご心配なく、祖母も精霊と契約していました」


「ダーリャはウンディーネと契約していたんだよ。サーシャは僕を必要としていたでしょう? だから契約したんだよ」


 ウンディーネは水の上位精霊だ。サーシャにも上位精霊と契約するポテンシャルはあった筈……それなのにドライアドと契約したのは……『死の大地』に木々を実らせる為に……か。


「アドちゃんよ、妾はこの『デベロ・ドラゴ』の王、グウィンである。まずは妾に挨拶をするのが筋であるぞ」


 凛とした姿で威圧するグウィンだが、案の定尻尾はぶるんぶるん揺れていた。


「グウィン、尻尾」


「くぬぅ!! こんな尻尾切り落としてくれるわ! ゴレミ! ドラゴンソード改をここに!!」


 ここにいないゴレミに指示を出すグウィン。遠くから薄っすらとゴレミが駆ける音が聞こえて来た。


「グウィン、ゴレミ来ちゃうよ。お休み中可哀想だから帰してあげて」


「ゴレミよ! ハウスに戻れ!」


 ゴレミの足音が消えた。すまんな、ゆっくり休んでくれ。


「ごめんね。王様。ご挨拶遅れました。ドライアドのアドちゃんだよ」


「妾はグウィンである。グウィンと呼ぶがいい」


「ありがとう、グウィン……ちょっとサーシャと話してもいいかな?」


「構わぬぞ。話すがよい」


 ふらふらのサーシャに魔力ポーションを手渡した。サーシャはなんとか起き上がり、アドちゃんと向き合う。


「サーシャ、さっきはごめんね。妖精たちだけじゃなくて、僕もサーシャの魔力を吸ったんだよ。契約に必要だったんだよ」


「ありがとうございます」


「僕もサーシャを望んでいたんだよ。サーシャに呼ばれて嬉しかったんだよ。僕が来た事によって、ユグドラシルの大樹が産まれる環境が整ったんだよ」


「そうなんですか?」


「それとね、妖精たちがサーシャから直接魔力を吸うのはこれで最後。あとは森のエネルギーで生活して行く事になるんだよ」


「それは寂しいかも」


「僕もサーシャから魔力を貰ったし、サーシャの魔力が流れているんだよ。でもね……僕とサーシャの魔力は相性が良くないみたいなんだよ」


「え、悲しい」


「サーシャのせいじゃないよ。じゃんけんみたいなもので、どれがいいとか悪いとかないんだよ。サーシャは僕以外の精霊と深く繋がっているんだと思うんだよ」


「相性の悪い魔力でも平気なんですか?」


「もう吸わないんだよ。契約の時だけ。僕は本来、大気中の魔素を吸って栄養にしているからね」


「グウィンと同じだな」


「妾は肉を食らう事も出来るぞ。1日でオーク200匹は必要だがな」


 確かに、ブラックドラゴン形態ならそれは納得出来る。そんなんじゃ島に生き物が定着しても、一瞬で生態系が崩れるぞ。是非とも省エネ小学生女児形態でいて欲しい。


「グウィンはその姿が一番可愛いよ」


「ふむ、受け入れてやる」


「グウィン、この島の魔素を分けてもらうよ」


「かまわぬ」


 ……ん? ちょっと待てよ……この島の魔素って確か……


「グウィン、この島の魔素って減ってるんじゃ無かったっけ?」


「んー。多分そうじゃ」


 忘れてるな。


「そうなんだよ。魔素を発生させるのは生命体だけだから、生命体が極端に少ないこの島だと魔素は減る一方だね」


「大丈夫じゃ、心配するでない。魔素などあと200年は持つじゃろう」


「200年? そんなに持たないよ」


「なんじゃと?」


「グウィンだけなら200年くらいは生きられそうなんだよ。それでも、だいぶ省エネ生活してるでしょ? そのちびっ子ボディも省エネなのかな?」


「くぬぅ! お主の方がちびっ子ではないか! くぬぅ!」


「それで、魔素はどれくらい持つの?」


「うん、僕とグウィンが生きる為だけなら100年かな」


 少しホッとした。単純に倍になったが、急を要する訳じゃない。


「でもここにはユグドラシルがあるから、1年……」


「え!? 1年……!?」


 急に一年って……ユグドラシルの大樹……えげつないぞ……


「だよ。この島に生まれた草木、妖精たちを駆逐しないのなら、半年が良いところかな」


「……そんな」


 サーシャは絶句していた。


「駆逐って……妖精たちを殺せって事なのか?」


「そうだね。「殺す」よりは「契約を切って追い出す」が近いけど、契約を切られた妖精たちは生きられないからね」


 静寂が『死の大地』を包んだ。妖精たちは知ってか知らずか、ニコニコとサーシャの周りを浮遊している。


 どうすればいい? 

 

 魔素の消費を減らすには、アドちゃんはともかくとして、ユグドラシルを何とかしなくてはならない。


 しかし、ユグドラシルは伐採出来ない。無理に干渉すれば自然界全体からの反発を生むという。


 ユグドラシルは放棄出来ない。


 魔素を産み出すには生命体が必要。


 生命体を呼ぶ術はない? 妖精たちは放棄……イコール死なせるしかない? 


「私は、誰にも死んで欲しくないです。妖精ちゃん達にも、誰にも」


「うん。その為には、ここに生命体を連れて来るしかないんだよ」


 アドちゃんの言葉に覚悟が決まる。そうだ……やるしかないんだ……あと半年の間に生命体を連れて来る……それしか方法はない。


「なあ、アドちゃんは元々ここに居たわけじゃないよな? 島の外からやって来たのか?」


「そうなんだよ」


「それは、どこから?」


「サーシャと同じ結界の隙間なんだよ」


 アドちゃんが指を刺した場所からは『死の滝の水』が流れ出していた。


「やはりそうであったか……アドちゃんよ、其方が姿を現したのは、今宵である必要があったのではないか?」


「そうなんだよ。2ヶ月前からこの島には来ていたけど、精霊力が足らなくて契約出来なかったんだよ。だから、封印が弱まるのを待っていたんだよ」


「封印が弱まる? グウィン、知っていたのか?」


「知らぬ。しかし、サーシャがやって来た夜と、覚醒した夜……それに今宵は不思議な感覚がした」


「そうなんだよ。僕も理由はわからないけど、満月の夜だけ封印が緩むんだよ」


「満月……」


 確かにそうだ。あれから1ヶ月毎に変化が起きている。


「じゃあ、今夜なら外に出られるって事か?」


「そんなんだけど、今日は難しいんだよ」


「どうして?」


「結界が緩むのは3時間だけなんだよ。でも、徐々に広がって徐々に閉じていくから、人が通れる時間は10分くらいしかないんだよ……それと……」


「それと?」


 アドちゃんはふらふらとサーシャの元に歩いて行った。そしてサーシャにぺとりと寄り添って、寝息を立て始めた。


「どうやら、今夜はアドちゃんも限界のようじゃな」


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