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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第三十四話 ユグドラシルの大樹

 サーシャの覚醒から、はや一ヶ月が経とうとしていた。


 木の伐採はサーシャの精霊魔法で再生出来る範囲で行って、アイテムボックスに収納している。再生前提の普段の伐採とは別に、大量の木を根っこから抜き取る事になった。


 森の中にログハウスまでの道を作る事にしたのだ。普段はグウィンに運んで貰っているが、徒歩で向かうとなると道は欲しい。


 王都からグウィンが普通に飛んで15分。グウィンが急いで飛んで3分。ゴーレムたちが走って5時間。俺が歩いて丸一日といったという距離感だ。ちなみに不眠不休で丸一日なのであしからず。


 島全体の面積を北海道くらいと思っていたが、そこまでの広さは無さそうだった。東京23区くらいなのかな? 東京は端から端まで徒歩で一日かからなかった気がするから、東京より大きいという事になるか?


 島の緑が復活したら、ゴーレムたちに正確な面積を計測してもらおうと思う。取らぬ狸の皮算用なのは重々理解しているが、各区画に移住してくれる種族に無用な争いを生まない為にも必要だと考える。


 既に森と化した第五区画。エルフ国の女王であるハイエルフが生み出した森だ。もう既にエルフたちのもの感がある。果たして移住してくれるエルフがいるのかどうか……の前に、ここに来られるのかどうか……


 うん。また皮算用だ。でも、積極的に皮算用していこうと思う!


 いずれエルフたちの住処として機能してもらう為にも、主要の道は必須なのだ。道を作る為には木を根っこからくり抜く必要があるのだが……ここで『創造クリエイト』が躍動した。


 俺はゴレンヌに乗りながら、『創造クリエイト』で木を引っこ抜き、そのままアイテムボックスに収納する、という作業を繰り返した。


 今までになく『命をいただいている』という実感を得ていた。前世では木に対して感じた事の無い感情だ。環境問題やSDGsなどで意識する事はあった。しかし、生き物の命と同じように感じていたかというと、それは少し違った。


 『死の大地』に転移してからの短い期間ではある。土しかない荒野で、焦がれた植物でもあるし、サーシャが生み出した瞬間も目の当たりにしている。この命は大事にしなければならない。


 ゴーレムたちは大忙しだった。俺と一緒に道を作る部隊、指定した区画に水を撒く部隊、グウィンのお供としてひたすら無茶振りに耐えるゴレミ。


 三者三様の大変さがある。


 ゴーレムたちの活躍もあって、ログハウスまでの道は3日もかからずに完成した。俺はそのまま、ログハウスの周囲に生えていた木も引っこ抜いて、集落に出来そうなスペースを作った。


 精霊創樹スピリットクリエイションツリーという、サーシャが生み出した木の中でも高い精霊の加護を得た木である。何か特別なものを作る時の素材として、大事に使わせて貰う事にしよう。

 

 ログハウスの脇には、死の滝の水を溜めた小さな湖も作った。それによって、ログハウス周辺がちょっとしたキャンプ場のような姿に変貌した。


 第五区画の整地がひと段落した事もあり、ささやかながら、ハイエルフ誕生一ヶ月祭を行う事になった。


「えーそれでは、僭越ながら乾杯の音頭を取らせていただきます、英太です! 今日は皆さんとこうして集まれること、大変嬉しく思います。サーシャのハイエルフ覚醒一ヶ月を祝って、乾杯!」


 前世でも避けて来た乾杯の音頭。まさかハイエルフとブラックドラゴンの前で披露するとは思わなかった。


 二人は乾杯ではなく、拍手をした。異国の文化として楽しんでいたのだろうか?


「変わった挨拶ですね……カンパイとは、ヒノモトの風習でしょうか?」


「ふむ、英太は記憶を失って迷い込んだからのぅ……そんな事も覚えておらぬとは、全く厄介な奴じゃ」


 グウィンったら、自分の事を棚に上げすぎていて逆に天晴れです。


「乾杯は、こうやるんだよ」


 俺は二人の持つコップにコップを当てた。カタン、と小さな音が鳴る。酒ではなく水の入ったコップをグイと飲み干した。


「なるほど」


「カンパイなのじゃ!」


 3人でグラスを掲げ合った。もちろん、全員水だ。


「アルコールも製造出来るようになるといいですね」


 そうサーシャが言った。


「サーシャもお酒を飲むの?」


「飲んだ事ないんですよ。ハイエルフになるまでは、禁酒だったんです。だから少し憧れていて」


「アルコールか……まあ、優先度は高くないけど、欲しいものではあるよなぁ……」


 なんとなくの知識はあるが、正確なレシピも素材も無いんじゃお手上げだよな。


「頑張ります! 私のスキルレベルが上がったら、果実も育てられる筈ですから!」


 サーシャはそう言うが、そもそもの作り方がなぁ……発酵目指して腐らせそう……もしかして、『創造クリエイト』なら出来るのか? 発酵……発酵魔法? 


「妾は酒は好かぬ。酒のせいで知らぬ間に一国を滅亡させていた事があるのでな」


「一国ってお前……」


 まあ、グウィンなら余裕で可能か……ん? 


「お前、記憶無いんじゃないのか?」


「妾は覚えておらぬ。そう聞いただけじゃ」


「そっか。ま、お子様に酒は与えられないな」


「くぬぅー! 英太よ! 消し炭になるが良い!」


 グウィンは大きく息を吸い込んだ。


「待て待て! 冗談! 冗談だから!」


「グウィンちゃん! 森が無くなっちゃいます!」


 グウィンはわざとらしく溜め息を吐いた。


「冗談に決まっておろうが。大切な友達と森を同時に無くしたくはないぞ」


「でもな、グウィン……お前には圧倒的な力があるんだから、そんな事をしてたらみんな怖がって冗談も言ってくれなくなるぞ」


「ぬ、あいわかった……強き者の宿命として改善を約束する」


 グウィンは以前のように落ち込む事が少なくなった。ドラゴン人形のツバサを妹のように思っているのだろう。カッコ悪いところはけして見せない。


「偉いっ! さすがはグウィンちゃんです!」


「だな。この国の王に相応しい」


「でもお人形の前では、赤ちゃんになってるんだよ」


「な、何を言っておる! 妾は赤ちゃんではない!」


「そんなことないです。あの日以来ばぶばぶしているのは見ていません!」


「俺は本当に何も知らない」


「僕は知ってるんだよ。巣をお引越しして、バレないようにばぶぅしてるんだよ」


「そのような事はしておら……ぬ?」


 沈黙が森を包んだ。俺とサーシャとグウィンが目を合わせ、一斉に周囲を見渡した。俺たち以外に誰かいる!?


「グウィン、ゴーレムたちは?」


「ゴーレムハウスで休ませておる」


「あっ……」


「サーシャ、どうした?」


「何か……不思議な感覚が……」


「そこは危ないんだよ。もうちょっとお家に近づくんだよ」


 声だけが聞こえて来る。俺たちはログハウスに近づいて声の主を探った。


「君は……誰なんだ?」


「ちょっと待って……もうすぐ満月になるんだよ」


「満月じゃと?」


 俺たちが視線を上に向けたとき、ドゴオォォォンッ!! と、轟音が鳴り響いた。


 俺が集落の為に更地にした場所、校庭程もある地面いっぱいから、巨大な樹木が飛び出して来た。そのまま空に届こうかという勢いで伸び続ける。


「何だよ……これ……」


「うむ、とてつもない魔力を放出しておるぞ」


「違います。似ていますけど、これは精霊力です」


 サーシャは覚悟を決めたようにそう言った。精霊力? もしかして、俺がサーシャが生やした神聖な木を引っこ抜いたから……


 やがて大樹はその成長を止めた。


「この木はねぇ……」


 あの声が再び語りかける。サーシャはそれを収めるように木の名前を口にした。


「この木は……ユグドラシルです」


 ユグドラシル? ユグドラシルの大樹……神話にある世界を支える木……根っこは地底まで伸びていて、葉は天にまで届く……伝説の大樹?


 何で『死の大地』に? サーシャが覚醒した影響か?


「サーシャ、エルフの国にはユグドラシルが生えていたのか?」


「いいえ。伝説の存在でしかありせん……でした」


 サーシャも初めて見るのか……確かにこの迫力には説得力がある。グウィン同様の圧倒的な力を感じるが、鑑定出来るだろうか?


「《詳細鑑定》」



名称:ユグドラシルの大樹

年齢:不明(推定数万年)

ランク:SSS

状態:健康(精霊力 100%充填)


特徴:

世界の中心にそびえる伝説の大樹。その根は大地深くに広がり、幹は雲を突き抜けて天に届くといわれる。森や自然界全体の魔力循環を支え、すべての生命の源とされている。枝葉からは穏やかな魔力が絶えず放出され、大地を豊かにし、空気を清浄に保つ。


効果:

ごく稀に落ちる「ユグドラの果実」には欠損部位さえも復活させる力があり、その中でも稀有な「ユグドラの神果」には、生命を復活させる程の力がある。


備考:

ユグドラシルの大樹は「精霊王」が宿るとされ、エルフやドライアドたちの信仰の対象となっている。

人間の手で伐採や傷つけることは不可能。仮に無理に干渉すれば自然界全体の反発を招く


警告:

ユグドラシルの精霊力は非常に高密度なため、魔力耐性のない者が近づきすぎると肉体や精神に異常をきたす危険性がある。


 世界の中心……精霊王……とんでもないものが根付いてしまったみたいだった。

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