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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第三十一話 美しく萌ゆる第五区画

 目が覚めると、そこには美しく萌ゆる緑が広がっていた。


 寝ぼけていて理解が追いつかず、異世界に転移した事も、ここが死の大地である事も忘れてしまっていた。子供の頃に来たキャンプ場なのか、遠足なのか、そんな場所に迷い込んだのか、夢なのか……


 思考が追いついたのは、俺以上に思考が追いつかないでいるサーシャの姿を目の当たりにした時だった。


 呆然と木々を眺めているサーシャ。腕の中にはドラゴン人形のツバサがいた。


 あれ? ブラックドラゴンは何処に行ったんだ? 見渡しても気配はない。きっと森の誕生で浮かれてるんだろう。俺はサーシャの元に向かった。


「おはよう。体調は平気?」


「英太さん……これ、私がやったんですか?」


 よく見たら目がぱんぱんに腫れていた。またギャン泣きしたのだろうか?


「そうだよ。その前に……《治癒魔法ヒール》」


 サーシャのむくみが取れていく。いつも通りの美しいサーシャだ。だが何処か違う。昨夜のようなハイエルフの神々しさを感じた。


「あれ? サーシャの目の色ってさ……」


 そう……初めて会ったあの時……サーシャの瞳は紫色に輝いていた。あの時や昨日のように魔力を放つ圧力こそ無いが、サーシャの瞳はあの時と同じ色に変わっていた。


 俺はアイテムボックスから、鉄を磨いた鏡もどきを取り出し、サーシャに手渡した。瞳の色を見た瞬間、サーシャはハイエルフ覚醒を確信したのだろう。一瞬だけ顔を歪めたが、凛とした佇まいで俺に微笑んだ。


「ありがとうございます。改めまして、ハイエルフのサーシャ・ブランシャールです。この大地の発展の為に尽力させていただきます。宜しくお願い申し上げます」


「ああ、こちらこそよろしくお願いします……でも、エルフの国に戻らなくてもいいのか?」


「戻り……たくても方法がわからないです」


 そうだった。その方法は誰にもわからない。


「それも探していかなきゃだな」


「はい。でも、エルフ王国は大丈夫です。国家運営に関しては私より大臣たちの方が向いていますし。いずれは戻らないといけないでしょうが、10年くらい不在にしても問題ありません」


 10年って、まったく長命種の感覚は……


「私がするべき事は、この島に木々を定着させる事。それと並行してこの結界を出入りする方法を見つける事です」


「出入り?」


「はい。エルフ王国に戻ったとしても、私は何度でも二人に会いに来ますからね」


「はっはっはっはー! 良い心掛けじゃあ! サーシャよ! 貴様には『デベロ・ドラゴ』の交通税免除を約束してやるぞ!」


 タイミング良く舞い降りた国王グウィン。面白いくらいに目元がぱんぱんだった。


「《治癒魔法ヒール》」


「なんじゃ! 藪から棒に!」


「目がぱんぱんだったからさ。何? グウィンもギャン泣きしたのか?」


「違う! 草木と戯れておったらこのようになってだな……くっしゅん! むずむずとするから鱗で擦っておったのじゃ……くっしゅん! くっしゅん!」


「ダメですよ、顔を鱗で擦ってはなりません」


 おいおい……ブラックドラゴンさん……花粉症なのか? アレルギー持ちのブラックドラゴンって、ちょっと面白いけど、2000年ぶりの木と触れ合ってすぐに花粉症を発症って可哀想だな。


「うーむ、なんだか鼻も変なのじゃ……汁が出て来て……」


 グウィンは鼻水を垂らしている。


「《創造クリエイト》」


 俺は土でティッシュペーパーを作った。それをグウィンの鼻に被せる。


「何をする?」


「鼻をかむんだよ。これに……ちーん……ふーっ! って汁を吹き付けるんだ……全力でやるなよ。あと炎もダメだ」


「うむ、難しいのじゃあ……」


 グウィンは初めての鼻をかむという行為に四苦八苦していた。


「グウィンちゃん、ちょっといい?」


 サーシャは瞳を閉じて、小さく詠唱をした。


「《精霊魔法ドライアド・サモニング》」


 詠唱と共に精霊たちが現れた。楽しそうに手を繋いだ精霊たちがグウィンの周囲をぐるぐる回っている。何かを喋っているが、上手く聞き取れない。


「サーシャよ、なんなのじゃこ奴らは? 何を言っておるのじゃ?」


 グウィンは精霊たちを手で払おうとする。それはさ、精霊たちに悪くないか?


「木の精霊、ドライアドです。この地に定着してくれました。グウィンちゃんともお友達になってくれるそうです」


「友達? ま、まぁ、望むならばなってやっても構わぬぞ」


 グウィンは腕を組み、偉そうに精霊に許可をする。精霊たちは笑顔でグウィンの元を離れていった。


「友達よ! 何処へ行くのじゃ!」


「ちょっとお休みです。私の力不足です。まだ長い時間召喚するのは難しいみたい」


「うむ、あいわかった。またそのうち呼んでやるがよい」


「はい。あ……それで、グウィンちゃんは木の精霊の加護を授かりました。これで鼻はむずむずしない筈です」


「ん? 確かに……むずむずが無くなったのじゃ……汁も出てこぬ……凄いぞサーシャ! 今夜は肉を食わせてやる!」


「いつもだろ」


 と言ったところで、気がついた。草木が生い茂っているという事は……植物も食べられる!?


「サーシャ、ここにある草って食べられる?」


 振り返ると、サーシャは爆睡していた。


「サーシャ?」


 鑑定しても異常は見当たらず「安眠」と記されているだけだった。


「まだ身体がハイエルフの力に慣れておらぬのじゃろう。その上、精霊魔法まで使用したのじゃ、魔力が枯渇したのかもしれぬな」


「うーん、でも魔力はそんなに減ってないんだよな」


「そうなのか……では、単純に眠かっただけかもしれぬな」


「むにゃむにゃ……ユグドラシル……ドライアド……むにゃ」


「いい夢見てそうじゃの」


「どうする? 食材や素材として伐採するにも、サーシャに断りを入れてからにするべきだよな」


「そうじゃの。それがスジであるな」


「でも、ぱっと見……果物やキノコは見当たらないんだよな……食べられるものあるのかな?」


「英太には鑑定スキルがあるではないか、試してみるが良い」


 確かにそうか……


「《鑑定》」


 目の前の木を鑑定してみる。あまり木には詳しく無いが、定番の杉とかヒノキなら加工もしやすいのかな? 



名称:精霊創樹スピリットクリエイションツリー

年齢:1日

ランク:A+

状態:完全成長(精霊力 100%充填)


特徴:

サーシャの精霊魔法によって突然変異的に生成された木。通常なら数百年かかる成長を一瞬で完了しており、森の魔力循環に即座に貢献する力を持つ。葉や樹皮には高濃度の魔力が宿り、エルフに力を与える。


備考:

自然の精霊樹とは異なり、サーシャの魔力と深く結びついているため、サーシャが離れると徐々に力を失う可能性がある。


 

 もの凄く神聖な木じゃないか……こんなの素材として使用していいのか? それと、サーシャが離れると力を失うって……可能性とはいえ、サーシャが島を出たら木は枯れちゃうって事なのか?


「どうじゃった?」


「うん、なんか凄い木だった。これ……全部この凄い木なのか?」


「ここから離れたところに生えておった木は、それほど魔力を感じなかったがな」


「離れたところ……」


 広範囲や遠距離の鑑定って出来るのかな? 出来ると思うと出来るのがクリエイトスキル。鑑定も出来ると思ってみよう!


「《鑑定》」


「うぉぉぉぉぉおっっ!!!」


 凄いっっっ!! 出来たどころじゃない!! 一面鑑定しまくってる!! でもダメだ!! 情報に押し潰される!!


 一点に絞れ! 遠くの木、一本だけだ!



名称:精霊芽吹樹スピリットスプロウトツリー

年齢:1日

ランク:B

状態:完全成長(精霊力 10%)


特徴:

精霊魔法の力で生えた、加工可能な木。魔力含有量は少なめで特別な効果はほぼないが、花粉にはほんのりと癒しの力があり、近くの者をリラックスさせる。幹は適度な硬さとしなやかさを持ち、道具や建材として扱いやすい。


備考:

自然の木材とほぼ同じ性質を持つが、若干の魔力残留があるため、加工品に微弱な魔力反応が残ることがある。

特別な加工をしない限り大きな効果はない。



 ふぅー。ヤバかった……広範囲鑑定恐るべしだな。今度から気をつけよう。


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