第二十九話 俺たちのステータス
「妾はツバサが大好きである! 妾の趣向をピンポイントで捉え、ぬいぐるみを献上した栄誉を讃え、其方に『ドラゴンプレゼンター』の称号を与える!」
家に到着するなり、訳のわからない称号を授与された。事の顛末は全て覗き見していたので、素直に感謝を伝えているつもりなのはわかった。
サーシャが俺の顔を見て、ハッとした。
俺を忘れて帰っただけでなく、今頃ようやく思い出したのだ。理解して、とても不安な気持ちになる。大丈夫なのか、ハイエルフの末裔……
ん? 称号……? もしやと思ってステータスを確認する。
ステータス
名前:鏑木英太
年齢 : 15
職業:デベロッパー
称号:ドラゴンスレイヤー
ドラゴンプレゼンター
レベル:99
HP:6800/6800
MP:7200/7200
ユニークスキル
•創造 Lv.3
スキルスロット
1.全属性魔法 Lv.3
2.言語理解
3.全能鑑定 Lv.1
4.アイテムボックス Lv.3
5.
6.
案の定、称号が増えていた。この称号って何の役に立つんだろう?
そこで、詳細鑑定を思い出した。詳細鑑定を手に入れたは良いものの、消費魔力が多過ぎて、今のところ干し肉必須の状況だ。そもそものMPが足りずに自分自身のステータスは確認出来なかった。
グウィンを調べられるか試してみよう。能力には圧倒的な差があるが、やってみないとわからない。
自分のステータスが詳細鑑定出来ないのは、自身のステータス確認に対するデバフがかかって、魔力消費量が高くなったのかもしれない。
「グウィン、鑑定してもいい? 新しい鑑定が使えるようになったんだ」
「本当に英太は丸裸が好きじゃのう?」
「別に好きじゃない」
訳じゃないけど……そういう意図じゃない!
「《詳細鑑定》」
……はい、無理でした。うーん、スキルレベルが上がれば何とかなるのか? レベルはカンストっぽいもんなあ……
「なんじゃ? 出来ぬのか? 妾は心も身体も丸裸にされる準備は整っておったというのに」
「今まで以上に詳細な鑑定が出来る筈なんだけど、能力差があると魔力消費が膨大で見れないみたいだ。今まで通りの鑑定なら……《鑑定》」
やはり大丈夫のようだった。グウィンのステータスウインドウが開く。
ステータス
名前:グウィン・鏑木
年齢 : 2025
種族:暗黒竜ダークドラゴン
レベル:XXX
HP:999,000/999,000
MP:998,000/99,8000
ユニークスキル
•リポップ
スキル
煉獄の炎
氷結の息
厄災の舞
聖なる雫
そうだった。グウィンには勝手に俺の名字を使ってた問題があったんだ。
「グウィン、名字がついてるんだけど、これはなんだ?」
「はぅ! そ、そ、それはサーシャがだな……」
「私ですか?」
きょとんとするサーシャ。心当たりが無いと一目でわかる。
「サーシャに名字があると聞いてだな、妾も欲しいと思ったのじゃ! 名字は高貴なるものしか持たぬでな!」
「で、なんでカブラギなんだよ?」
「それは……た、たまたまじゃ!! 妾が思いついた名字が、たまたま被ったのじゃ!!」
言い訳が下手くそ過ぎる……中世ヨーロッパの世界観で鏑木被りするかよ。鏑木なんて前世でも滅多に出会わなかったぞ。
「グウィンちゃん、カブラギという名字にしたのですか? 似合ってます。可愛いです」
「そ、そうか? 下賎な名字かと思ったが、サーシャが言うなら悪くはないのであろうな?」
「下賎で悪かったな。サーシャ、鏑木って俺の名字なんだよ」
「そうなんですか? グウィンちゃんは英太さんのお嫁さんになりたかったんですか?」
「サーシャよ! そのような事はないぞ! 英太は友達じゃ! それに妾は雄でも雌でもない!」
「私、てっきり女の子だとばかり思っていました」
「其方らの好きなように思って貰って構わぬ。しかし、姫扱いは好かぬ。何故だか虫唾が走るのじゃ」
「そうですか……わかりました!」
「グウィンはどちらかと言うと娘って感じかな」
「じゃあ、グウィンちゃんは私たちの娘ですね」
私たちの娘? それって……俺と……!?
「ほう、サーシャよ! ついに英太と番いにになる覚悟を決めたか!?」
「番いですか? え、あ、そんな事は全然」
何故か振られている。一瞬でも異世界ラブロマンスを期待してしまった事が悔やまれる。
「……ただ、お二人と家族のようになれたらいいなあって……私はハイエルフになるまで子供を宿す気はありませんし、その後も夫を持つつもりもありませんから」
確か、ハイエルフの父親は子種に全ての生命エネルギーを与えて死んでしまうんだった。夫を持つ気はない……というのは、子種に命を託した男性に操を捧げるという事か……少し寂しい覚悟に思える。
「あ、そんな深い意味があっての事では無いですよ。英太さんも私みたいなハイエルフ、好みじゃ無いでしょう? ダメダメハイエルフですから」
「英太はサーシャの器量を讃えておったぞ。雌として見ておる。交尾すれば良い」
グウィンは知らないだろうけど、交尾=死亡なんですよ。
「グウィン、はしたない事を言うな」
「交尾をはしたないと思うのは人間族だけじゃぞ。のう、サーシャよ」
「い、いや……愛の無いそれはその……わ、私は宿命がありますから愛は無くてもいいのですが……で、でも! ハイエルフになるまで出来ないんです!」
サーシャは耳を赤く染めて、そっぽを向いた。
「ハイエルフに覚醒するまで何年だったかの? 英太、詳細鑑定でその辺を丸裸にするのじゃ」
サーシャは真っ直ぐ俺の手を取った。
「鑑定してください! あと300年と言ってましたが、その鑑定なら、ハイエルフに覚醒する為の条件も鑑定出来るかもしれません!」
「わかったよ……」
確かに、詳細鑑定で調べれば、サーシャの覚醒条件も把握出来るかもしれない。俺は干し肉を口に含んだ。
「《詳細鑑定》」
名前:サーシャ・ブランシャール
年齢 : 330
種族:ハイエルフの末裔
レベル:21 (次のレベルまで640EXP)
HP:280/280
MP:860/860
基本能力
筋力: G
敏捷: E−
知力: E−
精神: D
耐久: G
幸運: F+
ユニークスキル
• R.I.P Lv.2
スキル
•生活魔法 Lv.2
•隠蔽魔法Lv.4
状態:覚醒目前
詳細:ハイエルフの末裔。現在の能力は一般エルフとほぼ同等。
ハイエルフへの覚醒条件を満たしている。
最上級の魔力水から得た生命エネルギーにより、前借りしていた魔力が補填され、覚醒目前となっている。
レベルは上がっていないが、精神力が向上していた。それに加えてスキルレベルが上がった事もあるのか、エルフ平均以下だった評価が、エルフ平均まで上がっていた。
そして、覚醒までの期間……既に覚醒条件を満たしている!? 何故だ? 何があったんだ? ……ん? 最上級の魔力水?
魔力水……? 俺が作ったポーションもどきの事か? サーシャに飲ませたのは……グウィンの尻尾肉を溶かした特別製だ。
俺は……知らず知らずのうちに凄いものを作っていたようだ。
次回……サーシャがついに……
幕間も含めて30話目になります。いつも見てくださっている方、ありがとうございます。頑張って面白いものをお見せ出来るようにします。
明日からは一日一話更新になります。ほぼ毎日更新は継続します!
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