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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第二十六話 ハイエルフの伝承

 サーシャの体力回復を「詳細鑑定」でチェックする。状態異常は回復し、HPとMPもMAXの状態に戻っていた。


「これは、完全回復と言っても良いのじゃな?」


「良いと思う。でも、魔力の訓練は明日以降だ」


「あいわかった」


「そうだ……サーシャに渡したいものがあったんだよ」


 俺はアイテムボックスから、小型のクロスボウを取り出した。


「弓……ですか? 変わった形をしていますね」


 おや、この世界には存在しない武器なのかな?


「クロスボウっていうんだ。力が無くても扱いやすくて、威力も高い」


「これを私に?」


「そう思ってたんだけど、手直しする事にした」


「手直しですか?」


「ああ、せっかくだから強力にしないと」


 俺はアイテムボックスから、グウィンの鱗を取り出した。


「おお、妾の鱗ではないか!? なっ! え、英太よ、ま……まさか……あ……ああ……あっ……あれをやるというのか?」


 えっらい仰々しいな。己の価値を高めようとしてるのか? 逆に安っぽくなるぞ。


「そうだよ。《クリエイト》」


 クロスボウと鱗が神々しい光に包まれる。現在のスキルレベルで出せる最高出力でクロスボウを再構築する。


「おお、凄いのじゃ!」


 黒く光ったクロスボウ。軽くて丈夫……の最上級だ。本体だけではなく、矢にもブラックドラゴンの鱗が混ぜ込んである。普通の矢だとクロスボウのパワーに負けてしまいそうだが、消耗品に鱗は勿体無いかな? というか……正直、ドラゴンソード改よりも強力かもしれない。


「これをサーシャにプレゼントするよ。ハッピーバースデー、サーシャ」


「……ありがとうございます」


「ななな、なんじゃと? 誕生日とな!? 何故妾が知らない事で盛り上がっておるのじゃ! 内緒にしておったのか!? 妾は其方らの友達ぞ!」


「鑑定で見えたんだ。グウィンが寝た後だったからさ……内緒にしてたわけじゃ無いって」


「ふふん、ならば構わぬ! 妾の鱗を使っておるのじゃから、ある意味妾からのプレゼントでもある! サーシャよ! それで狩りをするのじゃ! なんなら妾を的に練習してもよいぞ!」


「それは嫌です」


「グウィン、ドラゴンソードと同じ素材だから、ビリビリするかもしれないぞ」


「前言撤回じゃ!」


 そんなにあのビリビリが嫌だったんだな。


「誕生日以外もグウィンちゃんにしてない話があるんです」


 グウィンがサーシャに求めた呼び捨ては、ちゃん付けにするという妥協案で落ち着いた。


「……ほーう」


 グウィンはねちっこい目で俺を睨みつけた。お前が寝た後の話だから仕方ないだろうが。


 サーシャは、自身がハイエルフの家系である事、もう覚醒出来ない事、自分が死なないと新たなハイエルフが誕生しない事を丁寧にグウィンに話した。


 俺は会話に割り込んだ。詳細鑑定によって、サーシャのハイエルフへの覚醒が300年後に行われる事を確認してあった。


 サーシャは泣いて喜ぶかと思いきや、反応は微妙なものだった。


「そうですか……300年後……」


「あれ、嬉しい事じゃないの?」


「あ、すみません。嬉しいです。嬉しいけれど、時間がかかり過ぎで……」


 確かに、ハイエルフが長寿だとしても、300年は途方も無いか。


「私が生きてしまっているし……ハイエルフが居ない状況のままというのは……300年もハイエルフが不在になるくらいなら、やっぱり私が死んだ方が……」


「サーシャよ、その発言は友達として許せぬぞ」


「ごめんね、グウィンちゃん。私は死なない……でも……」


 サーシャは何かを言い淀む。


「サーシャ?」


「お二人に、私が死の滝に飛び込んだ理由と、その決意をちゃんと説明させて欲しいんです」


「理由って、ハイエルフを誕生させる為だよね?」


「そうです。私が死ねば、ブランシャール家の血筋が完全に消滅する。それによってハイエルフの家系が新たに生まれるんです。でも、それと『死の滝』に飛び込んだ理由は別なんです」


「別ってどういうこと?」


「私は、世界を邪神から救う為に生贄になったのです」


「生贄……?」


 中世ヨーロッパの価値観なら充分有り得る事だ。過去に俺が関わった RPGでも、生贄系統のイベントは複数あった。エピソードの役割はそれぞれ違ったが、共通しているのは『胸くそ』という事だ。


「同族を贄にするとは、この1000年と少しでエルフたちも変わったのじゃな」


「2025年な」


「大差ない」


「いや、大差あるだろ」


「グウィンちゃん、違います」


「大差あるよね?」


「何月は大差ありません」


 えー……長命種は本当に……


「何が違うのじゃ?」


「生贄にされたのではありません。生贄になったのです」


「でも、そうなるように仕向けられたりとか、促されたりとかしたんでしょ?」


「いえ……祖母の遺品から、伝説の勇者様の伝承が記された書物を目にしてしまって……それで……」


「勇者の伝承とな?」


「はい。遥か古の出来事です。世界は邪神によって支配されておりました。多くの種族が絶滅し、残された種族も邪神に対して抵抗する術なく、絶滅を待つばかりとなっていたそうです」


「ほう、興味深いのう……」


「そこで立ち上がったのが人間族の勇者様です。勇者様は果敢に戦いました。そんな中で、絶滅を待つばかりだった他の種族も立ち上がったのです」


 段々と断定調になって来たのが気になるな。見た事を話してるみたいだ。


「ドワーフ、獣人、妖精……そしてエルフ! 人間を加えた5つの種族が力を合わせ、邪神を追い込んだのです! しかし、邪神の力は強大で、完全に消し去る為には、大いなる犠牲が必要でした! そして勇者様は自らを生贄にしたのです! それによって邪神は消滅しました!」


「いかにも伝承って感じの耳心地のいいエピソードだね」


「もっと書いてありました! 私が上手に説明出来ないだけです!」


「つまり、人間の頂点たるものが自らの意思で自分を生贄にし、それによって邪神は消滅したと」


 なんか絵本っぽいっていうか、洗脳めいてるというか……誰かに都合良く書かれた話だなと感じた。宙に浮かぶ教祖様とか、降霊術の使える教祖様とか。


「はい! 本当は世界一の美貌を持つハイエルフのご先祖様が生け贄になる筈だったのですが、勇者様がご先祖様を生かす為に自ら命を投げうったのです!!」


「サーシャ、その伝承に関してはわかった。勇者の代わりに世界一の美貌を持つサーシャが生け贄になろうとしたのもわかった。覚醒前でもハイエルフの家系だし、筋は通っている……で、邪神は……いるの? 封印されたんじゃないの?」


「新たな邪神が誕生する予兆があるそうです」


「それを言ってたのは?」


「祖母です!」


 信じられそうな人の発言なのが厄介だな。


「サーシャよ、その封印はいつ頃行われたのじゃ?」


「えっと、昔々あるところに……としか書かれていませんでした」


 やっぱり絵本だ……ん? 封印されし、邪神?


 ……いやいや、邪神じゃなくて暗黒竜ダークドラゴンだもんな……サーシャは夢にも思っていないだろうが、条件は完全に当て嵌まるんだよな。


「邪神ってどんな姿だったの?」


「えっと、恐ろしい姿をした……としか書いて無かったと思います! あ、でも、真っ黒でした!」


 確定じゃない! まだ確定じゃない!


「その絵本に書いてあったハイエルフのご先祖様が私と瓜二つで……」


「それは絶世の美女だね」


「そ、そんな、英太さんったら!!」


「元気が出たようで何よりじゃの」


 美貌にレベルを全振りした残念ハイエルフに幸あれ。覚醒の時を待つ!


「つまりはサーシャは、邪神を封印する為に生け贄になったと」


「そうです。私のようなダメなエルフでも、世界の為に出来る事があるならと、そう思って『死の滝』に身を投げました。ハイエルフは人間族でいう勇者に相当しますから!」


「まだ誕生していない邪神を封印か。流石はサーシャじゃ」


 サーシャは事実に気付いて頭を抱えてしまった。


「まあ、一族の為にってのがメインだったし! 結果的に生きてるし! ハイエルフになる事もわかったし!」


 俺は出来る限りのフォローをした。一人の綺麗な女の子としては魅力的だが、エルフ族の王として邪神と戦う……となったら、かなり残念だ。


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