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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第二十五話 友達の肉

「サーシャ、目覚めたか!?」


 グウィンが戻って来た時には、サーシャは目を覚まし、会話が出来る状態まで回復していた。


「すみません。グウィンさん」


「構わぬ。しかし、無理をしていたのは許し難いぞ」


「まあまあ、それは後にしよう」


「うむ、英太よ、食卓に並んでおるぞ」


 言われなくてもわかる。鼻腔をくすぐる芳醇な香り……味付け無しで世界一美味しい、焼きたての尻尾肉の香りが空腹を刺激した。


 それはサーシャも同様で、クゥーとお腹を鳴らせていた。


「急に食べると胃がびっくりしちゃうから、もう一度ポーション飲んで」


「ありがとうございます」


 サーシャは促されるままにポーション水を口にした。途端に顔に生気が戻っていく。


 俺たちはサーシャの手を取って、三人並んで食卓に向かった。


 食卓にはほっかほかの尻尾肉ステーキが並んでいた。食欲をそそる匂いが室内に充満している。サーシャの身体が強張るのがわかった。


「今日はグウィンが焼いてくれたんだ」


「うむ。妾が焼いた肉は美味いぞ。さあ、サーシャよ遠慮なく貪るがよい」


「……はい」


 乗り気ではないというのが、ありありと伝わって来る。


「エルフも肉は食べられるんだよね?」


「ええ、エルフには肉食への抵抗はありません」


「この肉、美味しいよ」


 俺はサーシャが食べやすいように、率先して肉を食べた。しかし美味いなぁ。グウィンの奴……最高の焼き加減に仕上げて来やがった。


「そうじゃ、貴重な肉じゃから心して味わうのじゃぞ」


「グウィン、そうやって緊張させない……たくさんあるから遠慮しないで」


 自分の為に奔走してくれた俺に対して、サーシャは感謝ではなく嫌悪を向けていた。


「それ、グウィンさんの肉……ですよね?」


 サーシャの視線はグウィンのお尻に向かっていた。そこにあったはずの尻尾は丸っと消えていた。


「ゴレミちゃんが肉を切っているのを見かけて、ここに生き物は居ないはずなのにな……って不思議に思って……よく見たら黒い鱗がついていて……ゴレミちゃんに聞いたんです……この肉はグウィンさんの尻尾だって……」


「ふふん、それは違うぞ」


「え……」


「サーシャの快気祝いじゃ! 古い肉など食わせるわけが無かろう。これは切り立てほやほやの新鮮な肉である!」


 グウィンよ、サーシャが気にしているのは絶対にそこじゃない。むしろ切ってる所をイメージして吐き気を催してるぞ。


「グウィン、お前の身体の事を心配してるんだよ」


「なんじゃと……それは問題ないぞ。妾の尻尾は再生するからな」


「そう問題な……」


「問題しかないです! 英太さん、今……グウィンさんを食べてるんですよ」


 サーシャの声が震えている。サーシャが食べやすくなる為に率先して食べたのが裏目に出た。当人たちは慣れてしまったが、第三者から見れば、「友達の肉を平気な顔で食べている奴」なのだ。猟奇的でサイコパスだ。


「いや、これはさ……」


「わかります。この場所で生きる為には仕方ない事です。だから私も見て見ぬフリをしてきました」


「英太は友達じゃ。友達を死なせる訳にはいかぬでな」


「グウィンさんは私にとっても友達です……でも私には友達を食べるなんて出来ません!!」


 これは仕方ないな。俺がなんとかするしかない。


「わかった。食べなくていいよ。俺の創造クリエイトで栄養を分け与える方法を考える。それまではポーションを沢山飲んで。効果は薄いけど、気休めにはなるから。しばらく安静にしていてくれ」


 騙すのも嫌だったが、出来れば騙し続ける事はしたくなかった。


 俺がサーシャに渡したポーションは、創造クリエイトで少量のグウィンの干し肉と合成したものだ。エネルギーが強すぎるので、本当に少しなのだが、それでもサーシャの体力を回復する効果は充分にあった。


 サーシャにはこれを飲ませ続けなければならない。騙し続けるのも、バレた時を想像するのも辛いな……ん……あれ……なんか禍々しいオーラが……え、グウィン? なんで魔力解放してんの? え、俺たち消し炭になっちゃうよ?


「サーシャ貴様ぁっ! 今、何と言ったぁっ!」


「ひぇっ……!? グウィンさんを食べたくないって……」


「そうではなかろう!!」


 あ、これ……いつもの奴だ。


「おい、グウィン!!」


「えっと……グウィンさんを食べるなんておこがましい! グウィンさん……様! グウィン様は高貴で素晴らしい!」


「そうではないじゃろう!! 妾を友達と言ったなぁあ!!」


「あっ……ごめんなさい……可愛くて……仲良くして貰ったのが嬉しくて……つい……」


「グウィン! 表に出ろ!!」


 グウィンは壁を突き破って外に飛び出した。しばらくして、ゴォォォオーッという音が響き渡る。


「あ、暑い……」


「気温……10度は上がったな」


 よほど嬉しかったのだろう。今までで最大火力がお目見えした。


 何事も無かったようにグウィンが戻って来た。


「そうか……ならば、認めてやる。サーシャよ! 貴様は妾の友達じゃ!」


 厳かな雰囲気出してるけど、嬉しいだけだろうが。


「グウィン様の?」


「様づけなどしなくても良い! 「さん」もいらぬ! グウィンと呼べ! 英太もそう呼んでおる!」


「でも、私はこんなにダメなエルフなのに……」


「ふん! 英太も妾と比べれば小石ほどの存在じゃ! 出会った頃など更に虚弱でな! ちょっと抱きついただけで四肢をバラバラにして死にかけておったわ!」


「おい!」


 出会った時の事を思い出した。体当たりされて気を失ったら、いつの間にか回復してたんだった。まさかバラバラになっていたとは……


「無理して食わんでもよいぞ、サーシャが身体を壊さぬならそれでいい」


「うん、俺たちが必ずなんとかするから」


「妾たちの強大さに慄くがよい!」


 サーシャは無言で土のフォークを握りしめた。そして、ドラゴン肉のステーキにフォークを突き刺した。切り分けられた肉の中でも、最も小さな肉だった。


 それをサーシャは口に入れ、噛まずにそのまま飲み込んだ。サーシャは無言のままだった。体内を巡る強力なエネルギーに、戸惑いながらも向き合っているようだった。


 やがてサーシャが顔を上げた。


「凄い……身体が……力がみなぎってます」


「ふん、妾の偉大さを身に沁みて感じたようじゃな、友達よ」


「ありがとうございます、グウィンさん」


「…………さん?」


「ありがとう……グウィン」


「良い良い! さあ、腹が千切れる程喰らえ! いずれ再生する肉の提供など妾にとって些末な事じゃ!」


「それは……出来ません」


「何故じゃ、遠慮するでない」


「ドラゴンの肉は栄養価が高くて、薬のような効果があるんです。魔力回復もそのうちです。普通のドラゴン肉でもそうなんです。ブラックドラゴンの肉は次元が違います。栄養ありすぎです。栄養も摂り過ぎたら毒になります。英太さんほどのレベルと体力なら問題ないでしょうが、私には無理です」


 トマトとかみかんにも致死量があるって聞いたことがある。到底食べきれない量だったと思うけど、確かにブラックドラゴンの肉を食べすぎるのは危険そうだ。でも、そこら辺はグウィンが把握……


「わ、妾の肉が毒になるじゃと!?」


 してる訳なかった。レベル1の時の俺……絶対に必要以上に食べてたよ。


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