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第百九十七話 レベリング

 俺たちが決めた作戦は、このような物だった。


1. 魔道モニターを使用し、魔王デスタルトによる配信を行う。魔王国における聖統主教会の悪業と人間国で起こった貴族殺害を行ったのがデスタルトである事を公表し、理由の説明と謝罪をする。

2. 不可侵条約の破棄を宣言。デベロ・ドラゴとエルフ王国の王女もそれに同意する。


 ここまでは確定で、ここから先は人間国の出方次第となる。


「違法奴隷の売買は大罪だが、貴族の間では暗黙の了解で行われていた事なんだろ? 問答無用で殺害したのはやり過ぎって事にはならないか?」


「それは人間国の、それもクソったれ貴族の勝手な解釈だ。それによって他種族の国と争う事になるとしたら、責められるのはその貴族連中じゃないか?」


「それだったら、他種族の国にも状況を説明しなければならないのではありませんか?」


「そこは『不可侵』だからな。少しずつ関わりを広げていかなければならない」


「違法奴隷の存在を詳らかにすれば良いんじゃないのか?」


「それ以前の問題だ。国交そのものが無いからな。最低限の情報交換は行われているが、間に入っているのが人間国だしな」


「それもそうか……それに、問題点はまだある。俺の魔道カメラの映像を全て信じて貰えるかどうかだ。あの映像が作れるなら、捏造だと言い張る事も出来るだろうしな」


「ならば、アンジー枢機卿を連れてこようか?」


「あの状態でも死んでないのか?」


 魔王国の牢獄……ボロボロになった枢機卿の姿は悍ましいものだった。


「父上のユニークスキル《セーフモード》の庇護下だったからな。魔王国の医療班の回復魔法で人の形は留めてある」


「人間国がタルトに一斉攻撃を仕掛けて来た場合はどうします?」


「国家総出でって事か? あり得なくは無いが、先ずは対話を求めてくるんじゃないかな?」


「俺もそう思う。どちらにしても、隷属魔法さえくらわなければ俺たち3人で対応可能だろう。アンカルディアの魔法を信じよう」


「俺としては、争いは起こしたくない」


 デベロ・ドラゴの王として、グゥインの意思を伝える者として、それは避けるべきだろう。


「俺もそうだよ。潰すのは聖統主教会のみにしたい」


「そうと決まれば、魔導モニターを創るところからですね!」


「英太、魔導モニターを人間国の全土にばら撒くのは骨だし、人間国に盗まれるのは避けないといけないぞ。知的財産はデベロ・ドラゴの宝だからな」


「それはそうだけど」


「闘技場でやったみたいに、空中に映像を映し出すことは難しいか?」


「……出来るだろうけど、人間国全土だよな?」


 流石に今の俺では……


「いや、出来るかもしれないな」


 そうなのだ。


 俺はレベル上限を解放したのだ!


「流石はレベル200超えを目指して命懸けの上限解放に挑戦した英太殿ですな」


 タルトの奴……ニヤケ顔にも程があるだろ。


 まるで俺がサーシャを抱く為だけに上限解放に挑戦したみたいじゃないか。


 サーシャ……顔赤くしないで。


「解放しただけで、レベル自体は高くないんだ。空間魔法のスキルも上げないと……」


 その時、空間が揺らいだ。


 そうだ……確かにこの場所だった。


「英太、おあつらえ向きだな」


 タルトはサーシャを抱き抱えて、空高く舞い上がった。まるで、お姫様を連れ去る魔王みたいだ。


 一人残された俺の目の前には、見慣れたスタンピードの兆候……これ、一人で対処しろって?


「ワォォーン!」


 そこにウルフの群れがやって来た。このウルフたちは……ルーフと一緒に居たウルフたちか?


 って事は……一緒に戦ってくれる?


「ワオン! ワオワオ!」


 その時、タルトがウルフに向かって叫んだ。その声を聞いたウルフたちは、一斉にスタンピードの発生源を離れていく。


 タルトはウインクをしながら、俺の作った魔導指輪を翳した。


 あの野郎……ウルフたちに精神干渉の魔法かけやがったな。


「ドライアドサモニング!」


 サーシャの唱えた精霊魔法によって、俺の周囲に木の根が生い茂る。


「ありがとうサーシャ!」


 しょうがねえなあっ! やってやるよ! レベリングだあっ!!


 俺はアイテムボックスから魔力ポーションを取り出した。


「この際だ! スキルも上げてやる!」


 突進してくる魔物たちに、ありとあらゆる呪文を浴びせ続ける。その中に空間魔法も織り交ぜた。元魔王のデスルーシが使っていた《転送魔法》だ。


 タルト……お前はまだ使えないだろ?


 本当はスタンピードで出現した魔物たちを全部タルトの元に転送したかったが、タルトはサーシャを抱き抱えている。


 俺はスタンピードの流れの対角に魔物を転送させ、互いを正面衝突させる。


「《創造クリエイト》」


 そして、創造クリエイトで地面を深く掘り下げ、その中に魔物を落下させていく。


 一箇所に集められた魔物にぶつけるのは、《爆裂魔法》だ。


 巨大な爆発音の中、万の魔物が塵と化していく。


「おいおい、これじゃまるで、お前がデスルーシの息子みたいじゃないか」


 タルトは笑った。抱き抱えられているサーシャも笑っている。


 魔王デスルーシの実子……サーシャはその事実を知らないままなのだろうか? もしくは知った上で、R.I.Pのオートスキルによって守られているのか……


 その時……砂埃の中から、白い塊が現れた。


 爆裂魔法で撃ち漏らした魔物が一匹……これまた懐かしのホワイトドラゴンだ。


 俺はおもむろにアイテムボックスから黒竜片手剣ブラックドラゴンバスターを取り出して、ホワイトドラゴンに一振りした。


 全くもって掠りもしていない。それなのに、ホワイトドラゴンは音も立てずに消滅してしまった。


「相変わらずやばい剣だな」


 タルトはゆっくりと着地する。サーシャは飛び降りて、俺の元に駆け寄ってきた。


「英太さん、怪我は無いですか?」


「大丈夫だよ」

 

 タルトはそんな俺たちを生暖かい目で見つめている。


 そういえば、タルトがサーシャに恋していると思ってた時期もあったなぁ……


「英太、肝心のレベルはどうなんだ?」


「ああ、《詳細鑑定》」


 俺は自らを《詳細鑑定》する。


名前:鏑木英太カブラギエイタ

年齢 : 15

職業:デベロッパー

称号:ドラゴンスレイヤー

   ドラゴンプレゼンター

レベル:113

HP:28,800/28,800

MP:55,000/55,000


基本能力

筋力: D

敏捷: C

知力:SS

精神: SS

耐久: E

幸運: G


ユニークスキル

•創造クリエイト Lv.7


スキルスロット

1.全属性魔法 Lv.5

2.言語理解 Lv.3

3.全能鑑定 Lv.3

4.アイテムボックス Lv.8

5.交渉 Lv.2

6.


火属性魔法 Lv.5

水属性魔法 Lv.5

風属性魔法 Lv.5

土属性魔法 Lv.8

聖属性魔法 Lv.5

無属性魔法 Lv.5

生活魔法 Lv.3

精霊魔法 Lv.4

神聖魔法 Lv.4

空間魔法 Lv.5


 上がった……よな?


 レベル上限の解放を確認した時は、100ちょいだった筈だ。


 魔法のスキルレベルはかなり上がった。


 特に空間魔法は一気に4も上がっている。


「……レベルは113だな。それよりも全体的に魔法関連のスキルレベルが上がったみたいだ」


「まだまだ先は長いな」


 レベル200まで……って事だろうな。


「それは置いておいて、空間魔法からだ。映像を空中に映さないとな」


「とりあえず、どこまで遠くに映せるかを試してみてくれ」


 俺は空間魔法をイメージする……


「かなり遠くまで飛ばせそうだ。結界にぶつかるまで、どの方向にも映像を飛ばせると思う」


「それは多分人間国の外周を取り囲む結界だな。って事は、距離は問題無いわけだ……あとは数だが……」


「人間国の七大国……フレイマを除いた六つの王都じゃダメなのか?」


「うーん……それだと権力者に握りつぶされるのが目に見えているんだよな……出来れば小さな町や村にも届かせたいな」


「それはそうだよな……ちょっと待ってくれ」


 俺はイメージを広げた。


「人間国全土に100……それくらいなら何とかなるかもしれない」


「凄いんだけど、そうか」


 タルトの表情は優れなかった。


 人間国全土はカバーし切れない。俺は一番シンプルな方法と、一番慣れた方法の二つを提案した。


「何処かひとつの国に直接出向いて、他の国に生中継するのはどうだ? もしくは……」


「もしくは?」


「死ぬほど空間魔法を使って、スキルレベルを上げるかだ」


 一番慣れたブラックドラゴン労働……


 タルトは「それだ」とばかりに手を叩いた。


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