第二十話 ベッドイン
落ち着け、落ち着け、冷静に自己分析しろ、研鑽するんだ! そうだ! ステータスを確認するんだ!
「ステータスオープン!」
ステータス
名前:鏑木英太
年齢 : 15
職業:デベロッパー
称号:ドラゴンスレイヤー
レベル:99
HP:6,800/6,800
MP:7,200/7,200
ユニークスキル
•創造 Lv.3
スキルスロット
1.全属性魔法 Lv.3
2.言語理解
3.万能鑑定 Lv.3
4.アイテムボックス Lv.3
5.
6.
ふぅ……現状の能力はこんな感じだ。
まずはメインスキルの創造。スキルレベルの上昇で、そろそろ素材が無い物を生み出せるようになったのでは? と期待したが、そう甘くは無かった。
創造と全属性魔法のスキルレベルアップによる恩恵は魔力の消費効率改善だけだった。
しかし、個々の属性魔法はスキルレベルアップの恩恵を受けていた。
火属性の自由度が上がり、「冷たい炎」や「対象以外に干渉しない炎」を生み出せるようになった。
水属性はポーションのような回復効果のある「ポーション水」を生み出せるようになり、風魔法では数センチ飛べるようになったし、雷魔法は電気の備蓄が可能になった。
俺が出来る! やりたい! と思った事は再現出来るようになる。創造スキル持ちの全属性魔法は解釈による自由度が凄まじかった。
唯一スキルレベルが4になった土属性魔法は、鉄の製造に使う土の量が1000倍から800倍に改善された。……まだちょっとコスパが悪い。俺の作る土の素材は普通の鉄より頑丈だしなー。鉄以外の、例えばミスリルのような素材を作れる日も来るのだろうか? でも、それだと土の消費量半端じゃないよな?
万能鑑定の質も上がったのだが、サーシャから聞いた魚の詳細はいまだに鑑定出来ていない。
アイテムボックスに関しても、収納容量が更に倍になった以外の変化は見られない。
ちょっと期待外れではあるが、元々がチートなのでしょうがないと受け入れている。スキルレベルは一体どこまで上がるのだろうか?
言語理解のレベルは、またしても上がらなかった。普段から使っている……というか、無いとグウィンともサーシャとも会話が出来ていないだろう。スキルレベルが上がる事はあるのか? レベルの上昇など無いのか? 現状不便は無いので良しとしよう。
あとはもちもちだ。
もちもち?
ああ、集中力が! もち! 平常心をクリエイトしろ! もちもち!
グウィンの声が響き渡る。
「サーシャの胸はもちもちじゃなあ」
「ちょっ……やめてくださいグウィンさん……そのようにされては……胸が千切れてしまいます」
「そ、それはダメなのじゃ! 優しくするのじゃ!」
「ぎゃ、逆にそのようにされても……」
「《音声遮断魔法》」
露天風呂から聞こえてくる声を魔法でシャットアウトした。非常に潤いのあるやり取りではあるが、悶々を生み出し過ぎる。
ちなみに、サーシャが来てからグウィンが俺と一緒に風呂に入ってくれなくなった。別に構わないんだけど、娘を持った父親ってこんな感じなのかなぁ……なんて思っていたりもする。
グウィンたちがお風呂に入っている間に食事を終わらせておくのも最近のルーティンだ。なにせ、3人の食べるものがバラバラなのだ。肉と魔素と水。実質俺だけしか食事をしない。最近はもっぱら一人の夕食だ……
あれ……俺……孤独になってる? 世のお父さん……立ち回りを教えて……とりあえず、 臭いと言われないように、念入りに浄化魔法かけておこう。
「《浄化魔法》」
からの
「《浄化魔法》」
くんくん。大丈夫、臭くない。
……一応もう一度!
「《浄化魔法》」
そんな努力が実ったのか、風呂上がりのグウィンとサーシャから、ある提案をされた。
「英太よ、今日は三人で一緒に寝るぞ!」
「え? なんだよ急に」
「私、エルフの国ではずっと祖母と一緒に寝ていたんです。『全くサーシャは300歳にもなって……』って言われても、そこだけは譲りませんでした」
『300歳にもなって』ってのは、なかなかのパワーワードだな。
「でもグウィンはあんまり寝ないんじゃ……」
「うむ、妾はあまり眠れぬ。長い時を生きる身ゆえ、考えることが多すぎてな」
「あ、そうですか」
考えてるか? 考えずに動いては反省を繰り返しているような記憶しかないぞ。
「確かに妾はその高尚さ故に睡眠を苦手としておる。だがな、サーシャは安眠魔法が使えるのじゃ!」
「安眠魔法?」
「ぐっすり眠れる魔法です!」
「ふふん! エルフ秘伝の魔法じゃぞ! 全属性魔法でも再現は不可能じゃ!」
「それは凄い」
それに、本当に便利だ。短い時間で最高の睡眠が出来るかもしれない。デベロッパー時代に使えたらどれだけ助かったか……
「はい。エルフ秘伝の魔法ですから」
「という訳で、眠るのじゃ! ベッドへGOなのじゃ!」
グウィンが俺とサーシャの手を取ってベッドへと誘う。よりによって俺のベッドを使うなんて……こっそり浄化魔法を使った。
「さあ、寝るのじゃ」
グウィンはベッドをバンバンと叩いた。クリエイトで作ってなかったら大破していた事だろう。促されるまま、俺たちはグウィンを挟んで川の字になった。
「グウィンさん、すぐかけて良いんですか?」
「良いのじゃ! かけるのじゃ!」
「グウィン、こういうのって眠るまでの話が楽しかったりする……」
「いいのじゃ! 眠りたいのじゃ!」
ちゃんと痛めのドラゴンパンチを喰らった。これ、レベル1の時だったら死んでるかもな。
「わかりました」
サーシャは集中して小さな魔法陣を描く。そして「《R.I.P》」と、呪文を唱えた。優しい光がグウィンを包んだ。
「ふむ……こえがぁ……あんみ……かぁ……」
グウィンは目を閉じ、そのままゆっくりと眠りに落ちていった。
「どうですか?」
「……寝てる」
グウィンの寝顔を初めて見た。口を開けている。可愛らしい女の子だが、どこか獣を感じさせる寝顔だ。
「良かった……ぐっすりですね」
「凄い効果だね。グウィンにも効くなんて、さすがエルフ秘伝の魔法」
「はい。エルフ秘伝です」
「しかし、R.I.Pってなんだっけ? 聞き覚えがあるんだよな」
「……聞き取れたんですか?」
「え?」
「私がなんて言ったのか……」
「ああ、うん」
「特別な言語で、門外不出の筈です」
ああ、そうか……言語理解のスキルがあるから聞き取れたのか……でも不思議だな……エルフ族にとって門外不出の魔法が使えるのに、一般魔法は使えないのか……隠蔽魔法も……ん? 隠蔽魔法……
「ねえサーシャ……」
「はい」
「鑑定魔法……使ってもいいかな?」
「……丸裸……ですか?」
「うん」
「やっぱり、使ってなかったんですね」
その答えに、疑問が確信へと変わった。
「すぴーくーぴー」
目の前には寝息をたてるグウィンの姿があった。俺はある種の覚悟を持ってサーシャに視線を移す。
「本当は、隠蔽魔法使えるんじゃない?」
いや、違う……
「サーシャ、既に隠蔽魔法使ってるでしょ?」




