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ゲームみたいな異世界に転移した俺、最強のチートスキル《創造》でブラックドラゴン娘と一緒に荒野を復活させていたんだが、何故だか邪神扱いされていた件  作者: しばいぬ
第二章 美しく萌ゆる森

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第十六話 もの凄く怖いんですけど

「ここは……森の……?」


 目覚めたばかりの彼女は、まだ完全に意識が戻っていないのか、ぼんやりとした声で呟いた。その声は透き通るように美しく、どこか不思議な響きがあった。


「森じゃなくて荒野だよ、ほら」


 俺が答えると、彼女は小さく首を傾げた。


「……荒野?」


 その仕草ひとつひとつが、まるで絵画から抜け出してきたように優雅で、俺は思わず見とれてしまった。


「英太がこれほどまで惚けた顔をするのを初めてみたのぅ」


「余計なこと言うな」


 俺が苦笑する間に、銀髪の女性が身体を起こした。長い髪が風に揺れるたびに、どこか神秘的な輝きを放つ。


「私は……森に呼ばれて……導かれて……」


「導かれた?」


 導かれてここに来たのなら可哀想だ。ここは『死の大地』で、森や草木の存在しない島だ。


「グウィン、彼女大丈夫かな?」


「自ら発した隠蔽魔法にあてられてしまったみたいじゃな」


「それって、まずくない?」


「問題なかろう。寝ぼけているようなものじゃ」


「そうですか……」


 エルフの女性は、ぼんやりと相槌を打った。


 混濁している彼女をゴレンヌに運んで貰い、俺たちは家に戻る事にした。5LDKと無駄に広い土の家。初めて使う客間に泊まってもらう事にした。


ベッドに寝かせた途端に彼女は眠りについた。緊張が解けたのか、俺も急に眠気に襲われた。


「俺たちも今日はここまでにしようぜ」


「あいわかった!」


 自室に戻ってベッドに寝転がる。しばらくして、グウィンの羽ばたく音が聞こえた。居ても立っても居られないって感じかな……俺はそのまま……まどろみの中に……


☆★☆★☆★


 目覚めると、目の前に天使がいた。耳を除いた全てのパーツが主張無く整っていて、奇跡のようなバランスで配置されている。美しい天使……いや、天使ではなくエルフだ。


「あの……おはようございます……あの、助けて貰った……」


「いや、助けたってほどでも……放っておくわけにはいかないから」


「あの……ここって……地獄ですか?」


 エルフの女性は外を眺めて言った。土しか無い大地……森を司るエルフにとっては地獄かもしれない。


「違うよ」


 言いながら考える。確かに『死の大地』という呼び名だから、地獄というか死後の世界の可能性もある。いや、どう考えても生きているが……


「俺も君も生きてるよ」


「私、生きてるんですかね?」


 彼女は胸に手をやった。心臓の鼓動を確認しているんだろう。


 くそっ……グウィンのせいで煩悩が……


「昨日の夜、滝に落ちて……そしたら邪悪な気配が……私……だから……」


 状況が理解出来てないんだろう。落ち着かせないと。


「その前に、名前聞いてもいい? 俺は英太」


「英太さん……私はサーシャと申します」


「サーシャか。いい名前だね。ところで君って……エルフだよね?」


 サーシャは少し戸惑ったように俯いてから、小さく頷いた。


「……はい。エルフです」


 間違いなかった。長い耳、整った顔立ち、そしてどこか非現実的な雰囲気……まさに俺が想像していたエルフそのものだ。


 あれ? でも昨日とは少し雰囲気が違うな……昨日はよりも瞳の色が黒っぽい……昨日は魔法にあてられてたみたいだら、そのせいなのかな?


「あの……?」


「ああ、いや、無事でなによりだ! じゃあ、早速なんだけど、この国の事を説明させて貰えるかな?」


「国……何処の国なのですか?」


「デベロ・ドラゴ」


「デベロ・ドラゴ……初耳です……王都はここからどれくらいの場所に」


「あ、ここ……なんだけど」


「え、ここですか?」


 サーシャは驚いたように外を眺めてから振り返る。目前に広がるのは茶色に次ぐ茶色。


 確かに……俺とグウィンが国家設立を決めただけで、現状は荒野に二軒の大きな家が建っているだけだ。


「うん、その辺も含めて説明を……あ、もう一人の……女の子には会ってない?」


「女の子? いえ、目が覚めて……誰かいないかと思ってこの部屋に」


「そっか……グウィンっていう可愛い女の子? がいるんだ……仲良くしてやって欲しい」


「可愛い女の子! はい、わかりました!」


 グウィンは自分を雄でも雌でもないと言っていた。でも外見は小学生女児で間違いない。詳しい事は追々話せば良い。


 その時、カツン、カツン、と音が聞こえた。


 まるでラスボスの登場シーン。飛べるから全くもって使う必要のない螺旋階段を一歩一歩降りるドラゴン少女の姿があった。


「妾を可愛い呼ばわりするとは……なかなかいい度胸じゃな」


「あ、サーシャ、あの子がグウィン……」

 

 サーシャに視線を移す。あり得ない程にがぐかくと震えていた。え、そんなに怖い?


「サーシャ?」


「じゃ邪……ああっ……ああああ……」


 邪悪って言おうとしてる? 


 そうか……俺は慣れてしまったけど、ブラック(ダーク)ドラゴンなんだ……サーシャからすると恐怖の対象でしかないのか……


「こ、こ、こ、怖い……」


「サーシャ、大丈夫?」


 俺は震えるサーシャを抱き寄せた。ラッキーハグなどという単語は浮かんでいない。


「こ、この子……すごい……!」


「妾がすごいのは当たり前ではないか。だが、怖がられる筋合いはないのじゃがな」


「でも、本当にすごくて……その、何か……溢れ出してるんです!」


 サーシャの言葉に、グウィンが少し満足げな表情を浮かべる。


「ふふ、分かるか。そなた、なかなか目が利くのう」


「い、いえ! あ、あの……褒めてるわけじゃなくて、本当に怖いんです!」


 もっと褒められたいのか、グウィンがドラゴンのオーラを解放した。ちょいちょい力を誇示したがるのがブラックドラゴンの悪い癖だ。


「グウィン、いい加減やめろ! 怖がらせてると友達になって貰えなくなるぞ」


「はぬぅ!」


 その言葉を聞くか否や、グウィンは発散していたオーラを完全に無にした。


「いや、別に妾は怖がらせたかったわけではなくてな…少しばかり立場というか、威厳というか……許せ、エルフよ」


「うう、ううう……ゆ、ゆ、許しまーす!!」


 そのやり取りに、俺は肩をすくめる。サーシャの震えは、ゆっくり収まっていった。俺はサーシャの身体を離して、安心させようと微笑んだ。


「喉渇いてない? 水飲む?」


 サーシャはこくりと頷いた。


 水魔法で作り出した純度の高い水を宙に浮かす。使いかけのコップしかなかったので、溜めてあった土に手を伸ばす。


「《創造クリエイト》」


 エルフの耳のデザインを取り入れたサーシャ用のコップを作った。今後、一緒に過ごすかもしれない仲間にお近づきの印だ。


 水を入れたコップを手渡す。しかしサーシャの反応は以外なものだった。


「ああぁああ……ああああぁああ……」


「え? グウィン、また怖がらせた?」


「妾はなにもしておらんぞ」


「ちょっと待ってください……あなた、あなた!」

 

「俺?」


「英太さんもすっごく怖いんですけど!」


 サーシャはそう言って、俺から距離を取る。


「俺も怖い?」


「はい! その、さっきは気づかなかったんですけど、魔法というか、使ってる時の……なんだか圧がすごいというか、体がびりびりするんです!」


 気づかなかった。俺は圧を凄くしてクリエイトしているのか?


「……俺、そんなに怖がられるタイプじゃないと思うんだけどな」


「いいえ、怖いです!」


「英太ァ!? 妾にばかり説教しおってからにィィ!! 怖がらせてはならぬぞオォ!?」


 グウィンの煽りにイラついた。このブラックドラゴンは煽る時に語尾が粘着質になる。


「とりあえず、サーシャが慣れるまで魔力控えめに、だな」

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