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第百三十四話 カート陣営へ

 ボロボロのゴレオを回復してやって、事の経緯を聞くことにした。


 ゴレオが挑戦していたダンジョンは、アラミナの街にあったものと同程度のダンジョンだった。10階層毎のフロアボスは存在せず、序盤はポーションを使用しなくても問題無く攻略可能のだったという。


 レベル1だったゴレオは、今回の挑戦だけでレベル19にまで成長していた。


名前: ゴレオ

年齢: 1

種族: ゴーレムドラゴン

称号: 暗黒竜ダークドラゴンの側近候補

レベル: 19

HP: 20,500/20,500

MP: 18,000/18,000


基本能力

筋力: B

敏捷: C

知力: B+

精神: A

耐久: A

幸運: C+


スキル

・魔力操作Lv.5

・暗黒属性適性Lv.5

・防御強化(魔法)Lv.5



 ……そこなのだ。違和感が満載なのは、たった19でこんなに強くなるものなのか? というところにある。ゴレオのステータス上昇幅は、明らかに異常だった。


「ダンジョンで何があったのですか?」ゴレミが聞く。


「30階層が、クリスタルだらけの真っ白な部屋で……息もし難いし、身体も重くて、嫌な感じがしたんです。急いで次の階層に向かおうとした時……はっ倒されました」


「……誰に?」


「バルカンっていうおっさんです。自分の事を武神って言ってました」


「武神バルカン……ダンジョンで己を鍛えながら、魔晶石に魔素を溜め込んでるって話だったな」


「あぁ、そうなんですね……で、その武神に『鍛えてやる』って言われて……」


「でも、たった一日で?」


「いえ! 一年ですよ! 丸一年!!」


 ゴレオが言うには、ダンジョンの30階層は、そこだけ時間の流れが違うそうで、外の一日で丸一年も修行出来るのだそうだ。


 そう言えば年齢が1歳になっていた。


 何処かで聞いた事がある設定だが、たまたまそういう事もあるだろう。人間の想像出来る事は実現可能って言うしな。


「魔物は一切倒さずに、武神のおっさんと一緒に基礎訓練の日々でした。体力向上と魔力操作の訓練をひたすらに繰り返すんです。俺が食事も睡眠も要らない事を知ると、昼夜問わずにしごかれて……半年で魔力の充填が切れるから、それを理由に逃げだそうとしたら、『俺が入れてやる』って、乱暴な魔力を注がれて……その後は実践トレーニングだって言って……ポーションすっからかんです!」


 それは大変だったな。同情を禁じえない。


「ゴレオ、その空間にカートが来ていたとは言っていませんでしたか?」ゴレミが言った。


 そうだ……それならばタルトがバルゼばりに強くなったのも合点がいく。


「いや、そういう会話は一切ありませんでした。というか、戦闘力を伸ばす為だけの会話以外全くない! あのジジイは、きっと戦闘民族か何かですよっ!」


 またしても聞き覚えのあるフレーズが飛んで来たが、まぁ偶然だろう。


「英太さま、私もそのダンジョンに向かってみようと存じます」


「……そうか、俺もそうしようと思っていた」


「いえ、英太さまとサーシャさまはカートの元に向かってください。中身がカートであろうとタルトであろうと、お二人に危害は与えない筈です」


「うん、確かに分かれて行動した方がいいな」


「ではゴレオ、案内してください」


「……え?」


「案内です」


「でも、ガリュムさんに確認取らないと」


「取りましょう」


「でも、ガリュムさんも忙し……」


「大丈夫です」


「武神も用事がありそうな」


「大丈夫です。一年も滞在しません。せいぜい半年、通常の半日です」


 ゴレオは助けを求めて来たが、俺にはどうする事もしてやれなかった。ゴレオ、武士と姐さんに揉まれて強くなれ。


 ガリュムに許可を取り、ゴレミたちはダンジョンへと向かった。


 カート陣営からの許可も出たようで、俺たちもカートの領地へと向かう。


 ガリュムは魔王の側を離れられないようで、代わりの案内人がやって来た。


 魔八将のサキュバス・ハルパラだ。


☆★☆★☆★


「英太様、サーシャ様、案内役を承らせて頂き、光栄ですわ」


 ハルパラは、尻尾をぴくぴくと動かしながら、頭を下げた。サキュバスの名に相応しく、タイトで露出の多い服を着ているが、その顔はセクシーというよりもアイドルフェイスだ。


「こちらこそ、魔八将に案内して貰えるなんて、光栄ですよ。お忙しく無いんですか?」


「全くですわ。魔王国は平和過ぎますし、仕事は配下に任せっきりですし。私がやるべき事など、優良物件の殿方に先んじてツバをつける事だけですわ」


 ハート型の尻尾が俺のお尻をツンツンする。


「何のことを仰っているのかわかりませんが」


「ふふふっ、うぶなフリをなさって……私は一目見るだけで、そっちの経験数を把握する事が出来ますのよ。それなりに、嗜んでらっしゃいますわね」


 そんな事はない。前世でも人並み程度の経験しかない。それに、この身体ではキスの経験もない。手を握った事も転移魔法の時だけだ。


「サーシャ様は、英太様の事はどう思われて……」


「英太さんは大切なお友達です」


 サーシャの答えには澱みがない。しかし、ハルパラは余裕の笑みを浮かべる。


「ふふふっ……聞くまでもありませんわね……さぁ、カートの元に向かいましょうか。私の尻尾を握ってください」


 聞くまでも無いって、どっちの意味だ? それに、何で尻尾握るの? 変な気持ちになっちゃうよ?


「うふっ……もっと優しくしてください。尻尾が潰れてしまいますわっ……ああ、そうそうお上手です……では、行きますわよっ!」


 ハルパラの甘い声に包まれながら、俺たちはカートの城へと転移した。転移先は……寝室だった。


「うふっ……ここに来る事が多かったもので……カートはどこでしょうかね?」


 ここに来る事が多いって……流石サキュバス……王様候補は抑えてるって事か?


「カート、出てらっしゃい」


 ハルパラが魔力を飛ばすが、反応はない。


「何をしたんですか?」


「幹部たちだけの通信魔術ですわ。魔八将と魔王様、その側近だけがやり取り出来るのです」


「それは、個人でも可能なんですか?」


「ええ、今はカート個人に送ったのですが……きっとどこかで女の子と遊んでいるのでしょう」


 冗談とも本気ともつかない言い方だな。魔王国は暇だって言ってたもんな。


「ハルパラから見たカートは、どういう印象なんですか?」


「うーん……悪い奴ではないですわ。自尊心が高いのと、良い格好しいなのは欠点ですけれど、基本的にはデスルーシ様に厳しく教育されているので、普通に王政に関する知識はございますわ」


「じゃあ、高評価なんだ」


「御冗談を……あんなもの、評価している訳ありませんわ。バルゼが王の座につくよりはマシというくらいですわ」


「バルゼよりマシ?」


 んっ? 俺からすると、バルゼの方が評価は高かったんだけど……


「バルゼが望んでいたのは、本来の魔王国の姿を取り戻す事です。デスルーシ様は最高の王であられますが、唯一、国内で不満が出ていたとすれば、その一点ですからね」


「本来の魔王国とは、不可侵の破棄ですか?」


「ええ、デスルーシ様の名の下に、我々は他の種族との争いを行いませんでした。それは、種の本能に争う行為です。デスルーシ様程のお方でなければ、暴動どころではなかったでしょうね」


 デスルーシが魔王でなくなった場合、不可侵を破棄するか、国内の暴動と向き合うかの二択か……同じくらいの内政を行うというのは無理なのだろうか?


「カート王子なら、どうなりますかね?」


「どうでしょう? ちやほやして貰える方を選ぶのではないでしょうか?」


「は?」


「あら、言い方が悪かったですわね。民意が望む方向に進むのではありませんか?」


 ……先行きは良くないみたいだな。


 その時、目の前に転移魔法陣が浮かび上がった。そして、二人の魔物の姿が現れる。


 一人はカート王子……そして、傍に立つデーモンは、カートの側近、バルボラで間違い無いだろう。


「これはこれは、英太様、サーシャ様、我が城へようこそいらっしゃいました。早速ですが、お茶の準備が出来ております。ささ、庭園へと参りましょう」


 カートはウインクをして、くるりと回転し、再び転移魔法陣を発動した。


 中庭に呼ぶなら御付きの者をよこせばいいし、なんならハルパラに連絡すればいい。転移魔法陣も、無駄にエフェクトを付けなくても展開出来る筈だ。


 タルトがこれを演じているとしたら、凄い胆力だよな?

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