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第百二十八話 魔道具をクリエイト

 鉱山の採掘に続いて、魔道具製作に取り掛かる。


 俺は素材さえあれば創造クリエイトで、簡単に魔道具を作り出す事が出来る。その事は魔王にも伝えてあるのだが……


「そんな無粋な事はせず、魔道具のイロハを学べ」


 だとさ。


 無粋とは思わないが、チートスキルを使わずに作ってみるのも良い経験になる。サーシャと魔王と三人で、魔道具作成を学ぶ事になった。


 今日作る魔道具は、『共鳴の指輪』だ。


「最もシンプル且つ、有用な魔道具なのです」


 講師のシーショさんが熱弁する。


 指輪の効果は、同じ魔晶石から作った指輪同士が共鳴し合うというもの。装着している者同士、距離や方角をある程度正確に把握出来る。


 うん! つけたくないね! GPSとか位置情報共有アプリみたいなものでしょ? ロマンチックな名前には騙されないよ!


「サーシャが賊に攫われでもしたらと考えろ」


 魔王ったらズルいよねー。大切な仲間を助ける為なら位置情報の共有くらいするってもんだよ。


「だったら、ゴレミとゴレオのぶんも……」


「無粋!」


 俺の提案は、呆気なく却下された。


 俺とサーシャを番にしようとするゴレミの暗躍が止まったと思ったら、魔王のお節介じじいモードが始まった。


「じゃあ、私が英太さんのを作るので、英太さんは私のを作ってください!」


 無邪気に提案しやがって……サーシャったら本当に可愛いなっ!!


「では儂がゴレミとゴレオのぶんを作ってやろう」


「英太さん! どっちが上手に作れるか勝負ですよ! 魔王さん、審査してくださいね!」


「わかった。既にサーシャの勝ちだ!」


「出来レースこの上ないな。サーシャ、手加減しないぞ」


 俺たちはシーショさんの教え通りに魔晶石を加工していく。意外にもサーシャは器用で、創造クリエイトという羽を失った俺は不器用だった。


 指輪の土台になる金属は自由に選べる。となると、もちろんブラックドラゴンの鱗入りミスリル一択だ。素で加工しようとすると硬すぎるので、そこは創造クリエイトで加工して……魔晶石を嵌め込む。


 もちろんサーシャのぶんも鱗入りミスリルだ。そんなズルはしない。


 完成品は……見た目は殆ど変わらないが、魔晶石の加工で差がついたみたいだ。俺が作ったサーシャの指輪より、サーシャが作った俺の指輪の方が探索の精度が高かった。


 クリエイターといっても、ゲーム専門だったからな。クソっ……負けた! けど、全然悔しくないや!


 ちなみに、魔王が作った指輪は、Sランク魔道具と言っても過言では無い仕上がりだった。


「魔王さん凄いです!」


「くっくっくっ……儂は何度も受講しておるからな」


 爺さん、まさか上手に作れるのを褒めて貰いたかったのか?


「さて、仕上げに相手の指に指輪を嵌めて、魔力を流し込みます。自分の一番得意な属性で結構です。破壊を目的としない魔力限定ですが、属性は何にしましょうか?」


「えと、私は精霊魔法です」


「承知しました。英太さまは?」


「全属性魔法か、土魔法かな? ユニークスキルもあるんだけど」


「ユニークはどのような?」


創造クリエイトっていう、ものづくりのスキルです」


「ふむっ……土魔法にするべきなのはわかっているのですが、ユニークスキルを流し込んだ場合の反応が気になりますな」


「魔王、無粋?」


「シーショの興味を引くのは立派だ。ユニークでやってみろ」


「では、英太さまからサーシャ様の指に指輪を……」


 俺はサーシャの手を取って、左手の薬指に指輪をはめた。本当に何の意識もしていなかった。指輪なら左手薬指……普段指輪をしない俺は、なんとなくそうしただけだった。


 すると、サーシャが顔を真っ赤にして胸を押さえた。


「サーシャ?」


「すみません……なんか、指輪をはめて貰ったら、ドキドキしてしまって……私、男の人に指輪をはめてもらう日が来るなんて想像もしていなかったので……」


 めちゃくちゃ抱きしめたかった。ハイエルフの子作りに関して抱えるものがあった事もそうだし、単純に可愛すぎたのもある。魔王がニヤニヤを見ていなければ危うかった。


「もう大丈夫です!」


 落ち着いたサーシャの指ごと、指輪を触った。そこに魔力を通す。


「《創造クリエイト》」


 形を変えるな、ゆっくり、優しく魔力を倒せ。この指輪で、サーシャの身に危険が及ぶのを阻止するんだ。


「結構です。英太さま、指輪は完成しました」


 シーショさんの言葉を聞いて、ゆっくりと魔力を止める。シーショさんが、虫眼鏡を片手にサーシャにはめられた指輪を観察する。


「英太様……これは……」


 言いかけたシーショさんが、急転して口を閉ざした。視線の先には魔王がいる。視線で口止めしたな?


「では、サーシャ様も英太様の指に指輪をはめてください」


 サーシャは少し震えながら、俺の左手薬指に指輪をはめた。そして精霊魔法を流し込む。不思議な感覚だった。自分で精霊魔法を使う時の数十倍……いや、数百倍もドライアドと繋がる感覚があった。


「サーシャ様、宜しいですよ。完成致しました……お互いがお互いを探そうと念じてくだされば、位置がわかります」


「よーし! ゲームをしよう! 魔王に攫われた恋人を助け出すゲームだ! 夕飯までに探し出せなかったら、恋人は殺されるっ! 100数えてから探し始めるのだ!」


 GPS付きのかくれんぼか? 殺すって大袈裟な……魔王がサーシャを殺す訳……あれ? 


 魔王に抱えられたのは俺の方だった。あ、ヒロインポジション俺の方なの?


「ひゃーく……きゅうじゅきゅ……」


 サーシャったら、丁寧に目を閉じて100数えてる……ちゃんと見つけてね。俺、魔王に殺されたくないよ。


 魔王は羽を大きく広げて魔王国の空を飛んだ。街中から、歓声が聞こえた気がした。


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