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第百十三話 妾の国の発展じゃ!

 ついに水路が完成した。これにより、ひび割れていた死の大地への水の補給が容易になった。精霊創樹の落ち葉を撒くなど、地道に取り組んで来た事の成果もあり、全ての区画が生命を育むだけの土壌を手にしておった。


 ほとんどがゴーレム任せではあったが、それはゴーレムたちを信頼しておったからじゃ!


「これで『死の大地』ではなくなるんだよ」


 流石のアドちゃんも感慨深いようじゃった。


「じゃの……しかし、それを宣言するには王がたりぬ」


「わかってるんだよ。英太が帰って来たら、だよ」


「その通りじゃ」


「サーシャは元気にしてるかな? だよ」


「アドちゃんも、結界が魔王国に繋がっておる事を知っていたのじゃろう?」


「だよ。本当はサーシャを魔王国になんて行かせたくなかったよ」


「魔物の子供と合わせたくないからか?」


「そもそも、魔王とも合わせたくないんだよ。でも、そうも言ってられないよ」


 魔素を手にする為には……か。


 本来ならば、サーシャがそこまでする必要はないのに……と言ったら、英太もそうなるか……いや、彼奴は国王じゃしの。やらねばならぬか。


「無事に戻って来る。妾はそう確信しておる」


 アドちゃんと別れた妾は、『黒竜の牙』たちの元へと向かった。


 ダンジョン攻略は順調で、ついに60階層までクリアしたという。


「でも、これ以上は4人だとキツそうだよ」アイラが言った。


「ゴレアのレベルも上がらなくなって来たし」リンガーが言った。


「何故じゃ?」


「俺たちはもうレベルが上がらないのに、経験値はきっちり分配されてる。ゴレアに行く経験値が4分の1になっちゃってるんだ」ラブランが言った。


「では、一度パーティーを解散して、編成を新たにするか」


「編成を変える?」リンガーが聞く。


「うむ、水路も出来て土地も肥えてきた。軍事力を高める前に、幹部たちを含めたゴーレム全体のレベルを上げようと思っての」


「一杯でダンジョンに入ったら、それこそ経験値はバラけちゃいますよ」


「それならば、更に上の階層で鍛えればよい」


「……え、上の階層って……いや、俺たちじゃ無理だよ」


「妾の考えたプランはこうじゃ! 妾を含めたパーティーを組み、妾がホワイトドラゴンを倒す! その間に其方らは自分たちで対応できる範囲の階層で魔物を狩り続けるのじゃ!」


「え、パーティーで違う階層を攻略するって事?」


「そんな事出来るの?」


「妾はダンジョンマスターじゃぞ! このダンジョンのルールを自由に決める事が出来のじゃ!」


 こうしてデベロ・ドラゴの全ゴーレムと『黒竜の牙』、そして妾の総勢269名でのダンジョン攻略が始まった。


 各階層で魔物を狩り続けるゴーレムたち。妾は問題無く90階層のボスである、ホワイトドラゴンの古竜エンシェントドラゴンを狩った。


 100階層をクリアせなんだのは、「ダンジョンが生み出した魔物とはいえ、流石にブラックドラゴンを狩るのはどうかと思うぜ!」というギルマスの意見を汲んでの事じゃ。


 それを一日に2回、10日繰り返すうちに、ゴーレムたちのレベルは平均50まで跳ね上がった。


 そして、そこからは幹部たちとゴレアのみを残して、一般ゴーレムは作業に戻した。少ない人数で同様の事を繰り返す。幹部たち全員のレベル80まで能力を向上させた。


「よし、このくらいで良いじゃろう。ゴレンヌを残して持ち場に戻そう。あとは、英太が戻り次第に、軍隊用のゴーレムを創造クリエイトしてもらう。ゴレンヌがそ奴らをダンジョンで鍛えるのじゃ」


「承知致しました」


 ゴレンヌは速やかにゴーレムたちに解散を命じた。


「練兵って奴か……」ラブランは得意げに言った。


「多分だけど、既に世界を支配出来るくらいの戦力あるよ」アイラはげんなりしておる。


「良かったね。グゥインが友達で」リンガーは半笑いじゃ。


「いついかなる時に、何が起こるかわからぬ。皆には強くあって欲しいのじゃ」


 これは、妾の偽らざる想いじゃった。


 ゴレンヌを加えて5人体制となった『黒竜の牙』たちは、引き続きダンジョン攻略を進めていた。彼奴らなら、妾抜きで90階層に辿り着くのも時間の問題じゃろう。


 軍事関係の整備は英太帰還後にするとして、後回しにしておったアレを整備せねばならぬ。


☆★☆★☆★


「だよ。だーよ、だよだよ!」


 アドちゃんは、ギルマスとマリィに対して、現在決まっている範囲で、デベロ・ドラゴの法案を説明した。


「うーん……こりゃ、実質的に全く決まって無いのと同じだな」


「でも、決めなきゃいけない事が明確になっているだけでも助かるわ」


「グゥインと英太としては、多くの種族が暮らす国にしたいんだろ?」


「そうじゃ」


「2,000年以上不可侵が続いてる。他種族との共存に対する抵抗感は拭えないぞ」


「其方らは違うでは無いか?」


「そりゃ、俺は半分オーガだし、マリィは大聖女様っていう特別な存在だ。リーナさんはなんだかんだでぶっ飛んでるし、牙たちは人間になりたかった魔物だ……そんな奴らの方が珍しい」


「それよりも問題なのは、移民として国民を移住させる事ですね。国民は国の力です。多くの移民を出したら、税収も減るでしょうし……ルールが無いので、抜け穴的に移住させる事は可能でしょうが、トラブルの種になるのは間違い無いですね」


「そもそも、デベロ・ドラゴを国と認めさせるのが骨だな。『デベロ・ドラゴは我が国の領土だ!』って展開が目に浮かぶ」


「だよ。その辺は、グゥインとゴーレムたちの軍事力と、英太の創造クリエイトで作り出した特産品で、威圧と交渉を同時進行だよ」


「飴と鞭どころの話じゃねぇな」


「あのカメラだけでも充分魅力的ですからね。王族貴族が許可を出せば、滞りなく移住のルールは決まりますね」


「だよ。移住に関しては追々として、訪問者への対応が問題だよ。訪問者を迎え入れて、対応するには人手が足らなすぎるよ」


「ユグドラシルとダンジョンだけでも、人を集める為の要素満載だからな」


「良い事では無いのか?」


「管理出来ない中で受け入れたら、ユグドラシルの枝を切り取って持ち帰ろうとする奴や、宿屋の女将を襲おうとする奴も現れるんだよ。そんな奴らばかりじゃねぇが、そんな奴もいるんだ」


「そんな奴は八つ裂きじゃ!」


「八つ裂きになる奴が続出する国には住みたくないだろ? 優先的に決めるべきは、訪問者への対応と法律か……」


「だよ。特に、人間国だよね?」


 アドちゃんが意味ありげにギルマスに視線を向けた。ギルマスは堪忍したかのように口を開いた。


「……ったく、抜け目ない精霊さんだよ。そうだな、俺たち家族は指名手配犯だ。違法奴隷の売買と殺害っていう汚名を着せられてる。姿を変えるのか、汚名を晴らすのか……対応を考えないとな」


「汚名を晴らすべきであろう」


「そう簡単にはいきませんよ。教会は全てを捻じ曲げて、真実を作り上げていますから」マリィが断言する。


「結界の隙間が生じる場所に関所も作らないといけないな」


「だよ。今のところ、結界の隙間が発生しているのは3箇所。第一区画が人間国、第二区画が魔王国、第五区画がエルフ王国だよ」


「濃ゆい国ばっかりだな。あと三つが何処に繋がってるかだな」


「僕の予想だと、ピクシーの国、ドワーフ王国、獣人国なんだよ」


「ドワーフと獣人は人口的にも妥当だが、ピクシーだけ異質だな……精霊と妖精とは別物なのか?」


「似て否なるものだよ」


「……でも、なんでこの種族の国と繋がってるんですかね? 領土の広さだけを考えれば、全体の六割を有する人間国に集中しても良さそうなのに」


 マリィが首を捻る。言われてみれば確かにそうじゃ。


「儀式的な何かがあるんだろうな。島の形が六芒星ってのも意味あり気だしな……とりあえず、次の満月は各区域にゴーレムを配置しよう。ほんの僅かでも結界の隙間が出来ていたら、そこに関所を建てる」


「フレイマの法律を纏めてみますね。流用出来るものは流用して、デベロ・ドラゴに合わないものは変えて行きましょう」


 ギルマス、マリィ、アドちゃんを中心に、法案に満たない『ルール』を決めていく事になった。


 妾には正直なところ、難し過ぎる話じゃった。でも、国王として、向き合わねばならぬ。


 魔素の問題が解決し、デベロ・ドラゴが国家としての活動を本格化させるまで、道のりはまだまだ長そうじゃった。

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