第百十話 妾は文字を覚えたのじゃ!
ダンジョンの乱から一夜明け、ギルマスは再びダンジョンの調整を行う事になった。
魔物の強さは調整済みじゃ。報酬となるアイテムは英太が戻るの待ちではあるが、階層毎に色々仕掛けを作るようじゃった。
そこはギルマスに一任する事にした。それに伴って、暫定的にダンジョンマスターの座をギルマスに譲渡した。一々妾の手を貸す必要は無くなる。
妾にはやらねばならぬ事があるのじゃ!
自らの手と意思でダンジョンを管理する為に、先ずは文字を覚えなければならぬっ!!
妾の前にはマリィ先生がおる。隣にはどんよりとしたマリヤがおった。どうやらマリヤはダンジョンの禁止だけではなく、ウルフ散歩の時間も一日二時間までと制限されたようじゃった。
娯楽の無いデベロ・ドラゴで、その仕打ちは可哀想じゃったが、しでかした事を考えると、妥当中の妥当でもあった。
最初は項垂れておったマリヤじゃが、既に妾よりも文字を知っている事もあり、徐々に元気を取り戻していった。というよりも、調子に乗っておった。
まったく……子供じゃのぅ……その挑発、乗ってやるわい!
妾はマリィに喰らい付いて勉強に励んだ。今日一日だけで『あ行』をマスターしてくれたわ! あ行さえマスターしてしまえばこちらのもの。あとは同じような組み合わせのものばかりと見た!
妾とマリヤの文字学習サバイバルの開始じゃっ!!
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文字学習は三日で終わってしまった。覚えようとしてみると簡単なものじゃ。マリヤにしても、妾という高尚なライバルの登場で尻に火が付いたのか、なかなか覚えられなんだ文字を学習し終えたようじゃ。
マリィの出したテストなるものも、互いに満点でクリアした。
妾たちは互いを讃えて、固い握手をした。好敵手の存在が如何に大きいかを実感する。
その後はマリィのお手伝いじゃ。英太がマリィに教えた『カレーライス』なるものを、妾がマリィから教わる。
普段はお手伝いを嫌がるというマリヤも、妾を意識して芋の皮剥きに奮闘しておる。
妾はブラックドラゴンソード改でオーク肉を挽肉にしてやった。マリィの想定より細かすぎたようじゃが、それが逆に新しい食感を産んだようじゃった。流石は妾であるっ!
ギルマスを含めて食事を摂った後は、夜通し文字の復習である。
あ い う え お
か き く け こ
さ し す せ そ
た ち つ て と
な に ぬ ね の
は ひ ふ へ ほ
ま み む め も
や (い) ゆ (え) よ
ら り る れ ろ
わ (ゐ) (う) (ゑ) を
よし、完璧じゃ! 明日の朝……妾はゴーレムたちに名を刻むっ!
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ゴレイ、ゴレイク、ゴレイル、ゴレウス、ゴレエン、ゴレカイ、ゴレカス、ゴレカン、ゴレキン、ゴレギア、ゴレゴン、ゴレサス、ゴレシア、ゴレジン、ゴレス、ゴレソン、ゴレター、ゴレチス、ゴレツォ、ゴレトン、ゴレナス、ゴレノン、ゴレハル、ゴレビア、ゴレピス、ゴレフス、ゴレブン、ゴレペル、ゴレポン、ゴレミス、ゴレムス、ゴレヤン、ゴレラル、ゴレリス、ゴレルス、ゴレロス、ゴレワン、ゴレヴァン、ゴレザイン、ゴレダス、ゴレフィン、ゴレオール、ゴレナイト、ゴレマール、ゴレルド、ゴレトス、ゴレフォン、ゴレスタン、ゴレグリフ、ゴレクター、ゴレサード、ゴレザン、ゴレタール、ゴレノール、ゴレヒュー、ゴレバスター、ゴレフィスト、ゴレボーン、ゴレフォース、ゴレムート、ゴレライザ、ゴレリオン、ゴレレイ、ゴレロン、ゴレワード、ゴレウッド、ゴレファル、ゴレシード、ゴレアーク、ゴレクラン、ゴレザーク、ゴレハンド、ゴレパイル、ゴレミルズ、ゴレグラス、ゴレオメガ、ゴレエッジ、ゴレテン、ゴレブレード、ゴレフュー、ゴレセイバー、ゴレガルド、ゴレシャドー、ゴレダーク、ゴレメタル、ゴレゴッド、ゴレキング、ゴレクイーン、ゴレデューク、ゴレエンペラー、ゴレヴァイザー、ゴレファング、ゴレドレッド、ゴレストーム、ゴレバースト、ゴレハザード、ゴレアトラス、ゴレポリス、ゴレネス、ゴレサンダー、ゴレブレイズ、ゴレゲイル、ゴレアーム、ゴレナックル、ゴレスパイク、ゴレフォート、ゴレウォール、ゴレキャッスル、ゴレパレス、ゴレドーム、ゴレシールド、ゴレバリア、ゴレクルス、ゴレランス、ゴレアロー、ゴレスピア、ゴレダガー、ゴレアックス、ゴレブレイカー、ゴレスマッシュ、ゴレクラッシュ、ゴレアバランチ、ゴレデストロイ、ゴレブリッツ、ゴレフラッシュ、ゴレクエイク、ゴレテンペスト、ゴレカタストロフ、ゴレディザスター、ゴレエクリプス、ゴレルミナス、ゴレシリウス、ゴレアクシス、ゴレユニオン、ゴレクォーツ、ゴレターコイズ、ゴレアズライト、ゴレアンバー、ゴレラピス、ゴレムーンストーン、ゴレオパール、ゴレペリドット、ゴレアクアマリン、ゴレオニキス、ゴレガーネット、ゴレシトリン、ゴレジェット、ゴレマグナム、ゴレヴァンガード、ゴレストライカー、ゴレアサルト、ゴレガーディアン、ゴレウォーロード、ゴレセンチネル、ゴレコンダクター、ゴレハンマー、ゴレインパクト、ゴレレイジ、ゴレエクスプロード、ゴレボルテックス、ゴレブリザード、ゴレハリケーン、ゴレツイスター、ゴレトルネード、ゴレミラージュ、ゴレファンタズム、ゴレイリュージョン、ゴレオラクル、ゴレネクロス、ゴレファントム、ゴレディザイア、ゴレエニグマ、ゴレアビス、ゴレシンドローム、ゴレヴォイド、ゴレエンティティ、ゴレアルター、ゴレパンドラ、ゴレアバロン、ゴレレーヴ、ゴレディアマンテ、ゴレフェニックス、ゴレグリフォン、ゴレドラコ、ゴレベヒモス、ゴレリヴァイアサン、ゴレユニコーン、ゴレキメラ、ゴレケルベロス、ゴレマンティコア、ゴレバシリスク、ゴレサラマンダー
半日を使って、一体一体丁寧に名を刻んだ。そして、最後の一体じゃ。
ゴレタイタン
その名を刻んだ時に、今まで聞いたことの無い歓声が飛んできた。
地鳴りのような歓声は、ゴーレムたちだけのものでは無かった。ルーフやウルフたちに、ギルマス、リーナ、文字の師匠であるマリィと、ライバルのマリヤ。
マリィなど、我がことかのように涙を流しておった。そんな顔をするでない。妾まで泣いてしまうではないか。
何とか涙を堪えた妾は、全てのゴーレムたちに『黒竜の配下』という称号を与えた。少しだけ消耗したが、日頃から頑張っておるゴーレムたちへの褒美じゃ。しかと受け取るがよい。
「グゥイン様! グゥイン様! グゥイン様!」
歓声の中、コボルトとスライムがぴょこりと顔を出しよった。
鳴り止まぬ歓声のせいであろうか? 眠れる魔物たちがようやく目覚めたようじゃった。