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第百七話 妾はダンジョンを創るのじゃ! 中編

 ダンジョン作成は二日目に突入した。今回はギルマスの転移魔法で100階層に直接移動する。一度行った場所ならば自由に行き来出来るとは、まことに便利な魔法じゃ。


「ふぅ……ボスが出なくて良かったぜ」


 ギルマスは汗を拭った。昨夜のうちにダンジョンの設定を変えておらぬかったが故に、また100階層のドラゴンを退治せねばならぬ可能性もあったそうじゃ。


「100階層にボスなどおったか?」


 そうじゃ。ずっと100階層におった妾はボスを見ておらぬ。


「ダンジョンが起動すると同時に、内部は異空間になったんだよ。祭壇の部屋に入る前に、ホワイトドラゴンの古竜エンシェントドラゴンが居た」


「うむ、我にドラゴンデバフが付与されていたからな。マリィが居なければ即死だった」


「忘れましょう。忘れてください」


 一夜明けても国民たちのあたりはキツいままじゃった。さて、気を取り直してダンジョンを創るかの!


 ダンジョン作成の流れはこうじゃった!


1.ダンジョンマスターはグゥイン・鏑木。


 妾がダンジョンマスターじゃっ! これは変更なしで、変更していくのはここからじゃ。


2.ダンジョンの目的を設定せよ。


「ギルマス、ダンジョンの目的とはなんじゃ?」


「主だったもので行くと、試練の場、資源確保、魔物育成……だな」


「それは全部ではいかぬのか?」


「そう打ち込んでみるか……ダメだ」


「どうした?」


「俺の手じゃ打ち込めねえ」


 ギルマスの左腕は鬼のものじゃ。しかし、右手も太くてゴツゴツしておる。


「指が太いと大変じゃの」


「違うよ。ダンジョンマスターにしか変更出来ないみたいだ」


「妾にしか?」


 くぬぅ……妾は字を書けぬ……ダンジョンマスターの道は険しいのぅ……


「王様、お手を拝借しますよ」


 ギルマスは妾の手を取って、文字を打ち込んでゆく。何だかこそばゆいのぅ。


「オーケー。目的はその三つに設定出来た」


3.階層構造を決定せよ。


「ギルマスっ! 次のはどうじゃっ!」


「待ってくれ、書いてあるぞ……」


「100階構造を維持するか? 特定階層の特別仕様はどうするか? って事だな……どうする?」


「階数は100階で良いじゃろう。特別仕様とは?」


「今の設定だと、フロアボスが挑戦者の力に呼応した強さになるって事だな」


「それはどうなのじゃ?」


「フロアボスだけ異常に強くなって、先に進めないのは上級の冒険者には旨みがねぇな。スタンダードに戻す方がお勧めだ」


「ならばそうするのじゃ!」


 このようにして、妾たちは次々とダンジョンの設定を決定して行った。


4.魔物配置を指定せよ。


 魔物は基本的に自然発生させる。その中で、フロア毎に人工配置する特別な魔物を作る事にした。


5.ダンジョンのルールを決定せよ。


 侵入制限は特に無し。テストプレイしながら検討する。脱出方法は転移魔法陣のままじゃ。


 最も重要なのは死亡時の処理じゃ。妾の国のダンジョンでは死亡者を出す訳にはいかぬ。ダンジョン内で死亡した者は自動的に転移する仕組みにした。


 それだけだと、死ぬ事前提で稼ごうとする冒険者が現れるというので、何かしらのペナルティを設けることにした。


6.環境設定を決定せよ。


  階層ごとの天候、地形、重力、特殊エリアじゃ。


 これは既存の物を参考に調整してゆく。変わり種のフロアを作りたいものじゃ。


7.宝箱・報酬システムを設計せよ。


 ドロップ率と階層ごとのレアリティだという。アイテムに関してはこちらで補充せねばならぬ。デベロ・ドラゴには英太がおる故に、補充には困らぬが、一旦は保留となった。


8.ボスモンスターの選定と配置を行え。


 これは同様に10階層毎にボスを配置する事にした。最上階のボスを黒竜ブラックドラゴンにする事は満場一致で決定じゃった。


 特定階層の要塞化も出来るようじゃった。70階層辺りで攻城戦があったら面白い……というルーフの意見を採用した。


9.転移装置の設置を決定せよ。


 ワープポイントの有無と使用条件じゃ。これは既存と変更無し。フロアボスを倒した直後に発生で確定じゃ!


10.ダンジョンコアの防御機構を設定せよ。


 これは破壊させぬ事に決定じゃ。デベロ・ドラゴの象徴として、長く活躍してもらうのじゃ。


11.特殊ルールの追加を検討せよ。


パーティーを組んだものに均一に経験値が入る。


 ダンジョンから出現する魔物以外を攻撃した者にペナルティを与える。


 特定の階層の構造を一定時間ごとに変化させる。


 この三つが暫定のルールじゃ!


 そして……再起動をする。


12.最終確認後、ダンジョンを再起動せよ。


 妾がスイッチを押すと、ダンジョン全体がわずかに震えた。奥深くで何かが動き出し、壁や床に埋め込まれた魔力の回路が淡く光を放つ。


 通路の形が少し変わり、魔法陣が浮かび上がる。モンスターの気配が一度消え、すぐに新たな気配でいった。


 しばらくすると震えは収まり、静寂が訪れた。


「出来たのか?」


「みてぇだな」


 ギルマスはダンジョンコアの上に浮かび上がる文字を見ていた。


「よし。また変更出来るみたいだ。何度か俺たちで試してみて、魔物の強さや罠の数を調整して行こう」


 妾たちは一旦一階層に戻り、改めてダンジョンを攻略する事にした。そこで大問題発生じゃっ!


☆★☆★☆★


 妾たちは一階層でパーティーを組む事にした。


「これがギルドカードだ。人間国で使っているものと同じ仕組みのものを、裏のルートで用意した」


 妾はそのルートを知っておる。何でも作れる英太くんじゃ。


 ギルマスはパーティー名を『竜狼の導き』とした。ギルドカードを重ねて……むむっ!?


 妾はそのメンバーの一員になれなんだ……何度やっても弾かれてしまうのじゃ……


「うーん、何でだろうな?」


「強すぎるからですかね?」


「数値だけならば、我も変わらぬ筈だぞ」


 原因は誰にもわからぬようじゃった。まぁ、経験値が貰えぬだけじゃ。よいよい。


 仕方なくギルマス、マリィ、ルーフの3人でパーティーを組み、妾は行動を共にする事にした。


 しかし、不具合は続いたのじゃ。ダンジョンに入っても、魔物が全く現れぬ。


 何階層進んでも現れぬのじゃ!


「ギルマス! これも何かの不具合かの?」


「我らが強すぎて、魔物が怯えているのかもしれぬな」


「ならばさっさと上の階層に進もうぞ!」


「いや……ちょっと待て……グゥイン、試しにちょっとばかり離れてみてくれねぇか?」


 ギルマスの言う通りに、妾は皆から少しばかり距離を取った……その瞬間じゃ、三人の前に魔物が現れた。


 ギルマスたちは魔物を軽く蹴散らした。倒された魔物がダンジョンに吸収されていく。


 妾は三人に駆け寄った。


「凄いのじゃ! 楽しいのじゃ! 妾も戦いたいぞ!」


 王の願いにギルマスは苦い顔を見せる。


「グゥイン、たぶんだけどな……魔物は俺たちの強さに怯えてるんじゃなくて、ダンジョンマスターの前に現れないようになってる」


「むっ……ということは?」


「グゥインの前には現れない」

 

 妾は言葉を失った……ダンジョンを……楽しめないじゃと?

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