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浄化の旅①

「なんだか、アズールさんとエメラルドの存在が…遠いね?」

「物理的にも心理的にも遠いな。」


もともと、旅に出る前から“聖女と剣士”と“魔導士”とでは扱いが違っていた。別に、蔑ろにされたりはしていないけど。エメラルドとアズールさんは常に中心に居る存在で、私達はモブのような存在。


ー目立つ事は嫌だから良いけどー


ただ、イケメン先輩のバーミリオンさんがモブ扱いなのは勿体無いよね─とは思っている。




そんな事を思ったりしていた日の夜─


いつもは直ぐに眠りに就けるのに、その日は何故か身体がゾワゾワして眠れなくて、無理に寝る事を諦めて、私専用の野営テントから出て夜空を眺める事にした。



少し歩いた先に川があり、その川辺にある岩に腰を下ろして空を見上げた。


「うわー」


夜空には沢山の星が輝いていた。


「スマホがあったら…思い出の1枚として撮ったのにな───っ!?」


そう呟いた時、川の中から嫌な感覚が這い上がって来た。私はサッと立ち上がり注意深く川を見ていると、水飛沫を上げながら、大きな蛇みたいな魔獣?が現れた。


「魔獣!?」


そのアナコンダみたいな魔獣が、ゆったりと鎌首をもたげた後、私へと視線を落とした。


ー落ち着け。大丈夫。焦るな。ちゃんと見極めろー


相手に恐怖心は絶対に見せない。狙うのは、相手が動いた瞬間だ。

暫く睨み合いが続いた後、その魔獣が大きく口を開けながら飛び掛かって来た。


その瞬間、溜めていた魔法で攻撃を仕掛ける。


『───ッ!シャアーッ!!』


その攻撃はバッチリ魔獣の目と喉?辺りに命中して、その魔獣がのたうち回り───


「え゛っ!?」


そのまま逃げるようにして向かった先には──


「エメラルドとアリシア様が居る方だよね!?」


ヤバい!─と思い追い掛けて、至近距離でもう一度攻撃魔法を放とうとした時、その魔獣の尻尾が私の左腕を叩き付けた。


「────いっ──────っ!」


思わず追い掛けていた足が止まってしまい、更に魔獣との距離が空いてしまった。


ー今更叫んでも…遅いよね!?ー


左腕の痛みをグッと我慢して呼吸を整えながら、左手に魔力を集める。そうして、魔力で弓─和弓─を創り上げる。次に右手に魔力を溜めて更に魔力を溜め込んだ矢を創り上げる。


狙うのは…頭──


焦らない──


見極めろ──


凪いだ気持ちで──




トンッ


と引かれた矢は、そのまま魔獣の頭に命中して、悲鳴?を上げる前に体全体が水の膜で覆われて──暫くするとその姿は霧散した。


「……やった!────っ!」


倒せた喜びの後、安心して足の力が抜けて地面に倒れ込む衝撃に目を瞑って備えると─


「大丈夫か!?」


その声と共に、誰かが私を抱き留めてくれた。


「──へっ?」


「助けられなくて……申し訳ない。気付いた時には…貴方があの魔獣に攻撃を放った後だった…。」


誰も居ないと思っていた。


「……ル……シーヴァー…さん?」


私を受け留めてくれていたのは、アリシア様の近衛騎士であるルーファス=シーヴァーさんだった。


「どうして、こんな時間に1人で?見張りの騎士は居ませんでしたか?」


“見張りの騎士”


は確かに居る。居るには居るが……魔導士側のエリアには来ないのだ。野営をする時は、魔導士と騎士が交代で見張りをするのだけど……殆どの騎士は、私達─魔導士側のエリアを見回りに来る事が無いのだ。


『魔法で自分を護れるんだろう?』と言うのが、騎士達の主張なのだ。それに対し、私達魔導士側も『はい。できます。大丈夫です。』なんて答えたのだ。


ー子供の意地の張り合いか?ー


とは突っ込まなかった。魔導士と騎士とは…水と油なのか?

このシーヴァーさんやアズールさんと何人かの騎士は、魔導士側も見回りに来ているけど、殆どの騎士が来ていない事を知らないのかもしれない。


何も答えない私に、シーヴァーさんは溜め息を吐いた後、私の腕に手を添えて──


「──っっっ!!!!」


私は声にならない声を上げて、シーヴァーさんの手を思いっ切り……叩いてしまった。「ごめんなさい!」なんて謝るどころではない。さっきの魔獣にやられた所が一気に痛み出したと言うより、忘れていた痛みがぶり返したようだ。


「───すみま…せん…私、戻りますね。」


ー早くテントに戻って治療しないとー


痛みを堪えて歩み出すと、グイッと体が持ち上げられた。


「なっ!?」

「怪我を…してるんでしょう、薬師の所まで連れて行きます。少しだけ我慢して下さい。」


そう言って、私を抱き上げたまま、私に負担が掛からないように早歩きで、薬師の居るテント迄運んでくれた。




魔法で作られたポーションは凄い。あんなに痛くて腫れていた腕も、翌日の朝には少しの赤みを残しているだけで、痛みはスッカリ無くなっていた。

薬師とシーヴァーさんからは、色々とお説教を喰らってしまったけど、それは私の危機管理の無さ故なので、素直に受け止めて反省しました。





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