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その後


*アレサンドル視点*



3年前の、まさかの平和を司る女神アイリーン様の降臨以降、ようやく女魔道士の地位が回復し始めた。

と言うか、女魔道士と蔑ろにしていたのは一部の騎士達と馬鹿な貴族だけで、殆どの者はそうではなかった。何より、平民にとっては地位や爵位が立派で何もしない貴族よりも、いつも魔法や魔術で助けてくれる魔道士の方に、より好感を持っていた。


その上での女神アイリーン様の御言葉には、その場に居合わせた者達は驚いた。


聖女と共に召喚された少女─女魔道士だったウィステリア殿の扱いを知り、平民達は怒り、一時は騎士達がマトモに騎士としての勤めが果たせなくなる程多くの平民が城に押し寄せたのだ。


しかし、その反面、聖女であったエメラルド殿の行いは……伏せられる事になった。理由は──




『私が眠りに就いてしまい、対応ができなかったから。私にも責任はあるわ。私があの子を選ばなければ…いえ……対応できていれば…あの子は今でも、聖女として暮らしていたでしょうから……』




ー本当に、その通りだー


と言う言葉は…呑み込んだ。


しかし、この世界に生まれて聖女として過ごしていたアリシア(馬鹿)に関しては、猶予は無し。今回の全ての元凶だったから。

アレは、もう既に人間(ひと)ではなかった。キッカ殿に連れられて向こうへ行っていたが……結局は自分の罪を認めて改心する事もなかったようだ。


ただ、夜になると毎晩必ず叫びながら目を覚ました後部屋の隅で蹲り、朝が来る迄そこで震えていたそうだ。そうして朝を迎えた後は、ベッドの上で赤色と青色と紫色の小さな玉をジッと見つめていたらしい。


そんな元聖女の元王女アリシアは、この世界に還って来てから一月程した後、幽閉していた部屋の中で息を引き取った。その1週間程前から、食べ物を殆ど口にしていなかったそうだ。



エメラルドは、未だに「ルー様はどこ?」「いつになれば会いに来てくれるの?」と繰り返し呟いているそうだ。



「………“聖女”か…………」


もし、ウィステリア殿とエメラルドが逆の立ち場だったなら、何か違っていたんだろうか?


「ふ─ぅ……」


軽く息を吐いてから、頭を軽く振る。


タラレバの話をしても仕方無い。結局のところは、ソレが誰であろうと、その者の選択次第なのだ。


「デレク、ちょっと席を外すぞ。」

「はいはい。30分だけですからね?」


と、苦笑するデレクに見送られながら、俺は執務室を後にした。








()()()()()、また来たの?暇なの?」



『殿下……また来たんですか?』



ー本当に、ウィステリア殿と同じ様な反応をするなぁー


懐かしくなり、思わず笑みが溢れる。


「本当に、()()()はつれないね。」




ネーゼ─アグネーゼ=シフォン




私の幼馴染みであり初恋の人でもあり、聖女でもある私の愛しい妃。1年の眠りから目覚めて半年後に結婚式を挙げた。


「そんな可愛らしい顔をしても駄目よ。執務を放り出して来たんでしょう?デレクに迷惑が掛からないうちに戻りなさい。」


「そのデレクから、30分だけなら良いと了解を得ているから。」


「あら、そうなの?じゃあ──」


と、一転してネーゼはフワリと微笑み、私の腕の中にポスンッと収まるようにして抱き付いて来る。


ーこのツンデレ具合も……似てるなぁー


きっと、ネーゼとウィステリア殿なら、仲の良い友達になれただろうな─と、今でも思う。


ーウィステリア殿、どうか、ルーファスと幸せにー


2人の幸せを願いながら、私は腕の中にいるネーゼにキスをした。










****



*ルーファス視点*



志乃と結婚したのは2年前。

その時の志乃のドレス姿は、本当に綺麗だった。向こうの世界ででも、志乃のドレス姿は見た事がなかった。そもそも、志乃は向こうの世界でもこの世界でも、基本パンツスタイルだ。


ー何を着ていても可愛いがー


兎に角、そんな綺麗な志乃が俺だけに微笑むのだ。

誰が我慢できるのか──アンケート調査をしたい。


その夜はこの世界でも“初夜”と呼ばれる。


初夜ぐらいは優しく─と思っていたが、『いやいや!』と俺の下でフルフルと震える志乃を目の当たりにすると───


ー理性が切れてしまうのは仕方無いー




翌朝『やっぱりルーファスさんは意地悪だ!』と、腕の中に収まっている志乃に睨まれたが、それは()()()()にしかならず───


次に志乃がベッドから起き上がったのは、その日のお昼過ぎだった。





それから2年。


スヤスヤと、ソファに座ったまま寝てしまっている志乃の腕の中には、3ヶ月になったばかりの女の子─ゆかりが居る。


「あら、志乃ったら、ゆかりちゃんを抱いたまま寝ちゃったのね。」


今日は、“3ヶ月のお祝いだ!”と言って、義父母がやって来たのだが、どうやら待っている間に寝てしまったようだ。


「お義母さん、このままだと危ないから、ゆかりを抱いてもらえますか?」


「勿論よ!」


と、義母は慣れた手つきでゆかりを抱き上げた。そして、俺はそのまま志乃を抱き上げて寝室へと運んだが、それでも志乃は起きなかった。


ー育児で大変だからなー


と、オデコに軽くキスをした後、俺はリビングに戻った。






「母さん!ここに天使が居るな!」

「はいはい。」

「俺は、イケメン唯一の父であり、この天使の唯一のじいじと言う事だな!?」

「はいはい。そうですね」

「自慢できるしかないな!」

「はいはい。良かったわね、じいじ。でもね……煩いから少し黙っててくれる?ゆかりちゃんが起きてしまうでしょう?」

「──すまない。」


ー志乃は、この両親の遺伝子をしっかり受け継いでいるよなぁー


この両親には感謝しかない。俺を本当の息子のように接してくれる。本当の家族とは繋がりが切れてしまったが、俺には温かい家族ができて、更に愛おしいゆかり(存在)が増えた。


俺は、今、とても幸せだ──



これにて完結となります。読んでいただき、ありがとうございました。

いいね、ブクマ、感想、誤字報告、ありがとうございました。

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