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2人の帰還


*菊花視点*



『もうそろそろ、()()を返してらっしゃい。会う事は無い距離にはいるけれど、同じ世界に居る─と思うと落ち着かないわ。』


と、満面の笑顔を浮かべているのは、私の主である千代様。


『あの馬鹿騎士はどうしますか?』


『そうね……アレも返してらっしゃい。アレは、向こうに還っても……苦しみ続けるだろうから、ここに留め置いておく必要は無いわ……』


『承知しました』




何を返すのか─と言うと、勿論、アリシア(馬鹿女)と馬鹿騎士の2人だ。


馬鹿女は、あれからも時々呼び出しては丑三つ時行脚をさせた。アレは本当に馬鹿で学習能力が無いのか、いつも声を出して妖達にバレて──助けるのが本当に嫌だった。


『助ける必要あるのか?』と、同じ千代様の眷属であり、黒妖犬の深影(みかげ)に言われたが、()ってはイケナイと言われているから、助けない訳にはいかないのだ。


『ふーん……やっぱり菊花は優し過ぎるな。』と言われ『また俺が、預かろうか?』と言われたが、莉子が嬉々としてジワジワと締めていっているから断った。馬鹿女は、精神的にかなりダメージを喰らっているが、向こうに返す前に、最後のダメージを喰らわせてやる予定だ。







****



『お前達2人共、元の世界に還ってもらう事になったわ。』


「「………」」


“還れる”と聞いても喜ぶ素振りもない─いや、気力が無いのだろう。


『あぁ、そうそう。お前達には、還る前に見せたいモノがあるの。』  


と、やっぱり2人からの反応は無かったが、私はニッコリ微笑んだ。




馬鹿2人には認識阻害と拘束の妖術を掛け、とある場所へとやって来た。


そこには────



絨毯に直接座っている志乃様を、ソファに背を預けているルーファスが、志乃様をバックハグをしてイチャイチャしている2人が居た。


「「────っ!!」」


これには、お馬鹿2人ともがピクッと反応した。


『あの2人は、この世界で幸せになれるけど、お前達はこれから、自分の世界に戻った後は…どうなるのかしらね?ふふっ─』



恥ずかしがっている志乃様と、楽しそうにしているルーファス。そのままルーファスが志乃様にキスをして、慌てる志乃様を抱き上げたかと思うと、ルーファスはスタスタと歩いてリビングルームから出て行ってしまった。


ールーファス……今はまだお昼過ぎだからね?ー


志乃様には、体力回復の料理でも考えた方が良いかもしれない。


「──っっ!!」


それを見ていた馬鹿女は、拘束の妖術を掛けている為、自由に動く事も声を出す事もできないが、目に怒り?を込めて2人が出て行った方を見つめて、歯をギリギリとさせている。


『そんなに睨んでも、もう、お前があの2人の目に映る事は二度とないし、ルーファスがお前を見る事も二度とないわ。───では、そろそろ還りましょうか。』


それから魔法陣を展開させて、私達3人は向こう側の世界へと転移した。












*アレサンドル執務室*




『返しに来たわ』


「うお─っ!?」

「キッカ殿!?」


拘束したままの2人は部屋の隅に纏めて()()()()、私はアレサンドルの執務室にある椅子に腰を下ろした。


この部屋には今、ちょうどアレサンドルとメイナードとデレクが居た。


「千代様から、あの2人はもう要らないから─と言われたから返しに来たわ。」


チラッと私が視線を向けると、3人もあの馬鹿2人に視線を向けた。


「えっと……大分……見た目が変わっているな……」


アレサンドルの顔が引き攣っているのも仕方無い。


アリシア(馬鹿女)は、以前は艷やかな金髪で、瞳は透き通るように輝く緑色だったが、今ではパサついた金髪のショートヘアで、緑色の瞳は影を落としている。髪はもともと長かったが、丑三つ時行脚で妖に見つかる度に髪の毛をむしり取られたりした為、ショートヘアになってしまったのだ。

勿論、ロングに戻してやる事もできるが、そんな事はしない。

この世界では、貴族女性がショートヘアだと言うのは、“罪人の証”になるからだ。


馬鹿騎士は、毎夜毎夜左肩からの流血と激痛による不眠と、日中は日中で深影に色々と使われていて、気の休まる時がなかった。いくら鍛えられた騎士とは言え……既に心も体もボロボロだ。もう、何もしなくとも、そんなに長くはないだろう。


『まず、あの馬鹿騎士は、私ではない千代様の眷属にある一種の呪いのようなモノを掛けられていて──』


「──っゔあ゛ぁぁっ」

「どうした!?」


説明し掛けた時、馬鹿騎士が良いタイミングで呻き出した。


『ルーファスが、魔犬に左肩を噛まれたでしょう?アレも、丁度左肩に怪我を負ってね。その傷に呪いのようなモノを掛けられて、昼間はその傷が治ったように傷痕になり痛みも無いのだけど、日が沈み夜が訪れると、あんな風にまた痛みを伴って流血しだすの。その呪いは、深影(掛けた者)の赦しが無ければ解く事はできないわ。』


深影(本人)は、全く赦す気はないけどー


「…そうか……なら……時間の問題…だな。」


そう呟くアレサンドルには、同情の色は全く無かった。


『問題は、馬鹿女の方ね。アレは……おそらく反省し切れていないわ。だから、後はそっちでしてちょうだい。それと───』


と、私はあるモノを取り出した。



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