砂糖漬けな日々
二度目の帰還を果たしてからは、それ迄とは違って幸せな日々を送れている。
大学生活も、菊花さんと一緒に無事に卒業する事ができた。就職先はと言うと──
『俺は志乃と離れたくないし、誰かに取られるのも嫌だし、俺が志乃を幸せにしたいから、もう、俺のところに就職してくれないか?』
と、大学4年生の夏にプロポーズされた。
勿論、断る理由はないから返事は「はい」しかなかった。
両親と朋樹には、ルーファスさんと再会してから暫くして「今、お付き合いしている彼氏です」と紹介してあったから、プロポーズを受けたと報告すると母と朋樹は喜んでくれて、父は──
「ウチの娘はやらん!───って、一度言ってみたかったんだが、相手がルー君なら……言えない!」
と、何故か悔しがっていた。
ーそうだろう。父よりもイケメンで高身長で……高収入だからねー
「いや!このイケメンの唯一の父が俺か!?え?俺、自慢できるな!?」
と、最終的にはハイテンションになっていた。
母も、満更ではない…ドヤ顔だった。
朋樹に至っては、初対面が、“私がルーファスさんに泣かされている”状態だった為、第一印象は悪かったが、「久し振りに会って、嬉しくて泣いちゃったの!」と素直に説明すると、疑いつつも
「姉ちゃんが大丈夫なら、俺は何も言わないけど…えっと…ルーファスさん?もう、俺の姉ちゃん、泣かせないで下さいね。俺にとっては、大切な家族なんで。」
「勿論、泣かせたりしないよ。」
あの時のデレ朋樹にはキュンッとした。いつまで経っても可愛い弟である。
兎に角、それ以降はルーファスさんと朋樹は本当の兄弟か?と思う位仲良くやっている。ルーファスさん曰く
「向こうの世界に居た、弟になんとなく似ているんだ…。」
と、その時のルーファスさんの顔は……少し寂しそうだった───から、絆されちゃったんだよね………。
「今日は、一人になりたくないな…」なんて、あの顔でキュルンッとした目で言われて、誰が断れるのかアンケート調査したい。
ルーファスさん27歳私22歳。一晩一緒に居て、何も無い訳が無い。
ーこちとら初めてでしたけどね!ー
悔しいやらなんやら…慣れた感じ?のルーファスさんは、普段のルーファスさんとは違って……意地悪だった!「何が?どんな風に?」なんて訊かないで欲しい。優しいけど優しくないルーファスさんが、そこに居た。
朝起きたら、ベッドの上で彼シャツ状態で、ルーファスさんの腕にガッツリとホールドを喰らっていた。「歩けるから!」と言っても、「向こうの世界では、これが普通なんだ」と言って譲らず、その日1日はずーっとお姫様抱っこで移動。座る時はルーファスさんの膝の上だった。
ーどんな羞恥プレイだ!!それと、誰が“彼シャツ”をレクチャーしたんだ!?いや、菊花さんだよね!?ー
唯一離れられたのは、ルーファスさんがご飯を作ってくれる時だったけど───それを食べる時はルーファスさんの手から給餌された。その日の私は、色んな意味でゴリゴリにHPを削られたのは、言うまでもない。
『あ、ソレ、向こうの世界での初夜の翌日の通常パターンですよ』
と、菊花さんにはシレッと言われて、イチコとニコからはお赤飯と紅白饅頭が出されたのは、その翌日のお昼だった。
ー誰か、穴を掘って下さい!ー
それ以降は更なる砂糖攻撃が増え、金曜、土曜、日曜をルーファスさんの家で過ごすようになってくると「もういっその事、一緒に住もう。」なんて満面の笑顔で言われ、菊花さんは勿論の事、両親からも「良いんじゃないか?ルー君と一緒なら、防犯にもなるだろうしな」と言われ、同棲する事になった。
ーある意味、危険なんだけどね?ー
とは、誰にも言えない。言っちゃいけないヤツだ。本当に、ルーファスさんは、あの時だけは意地悪になる。
ーなんとか……仕返しできないかなぁ?ー
****
「志乃、アルコール飲んでみる?」
そう。22歳になってはいたものの、まだアルコール類は口にした事がなかった。飲みたい─と思わなかったって言う事もあるけど。
「うーん……」
「甘い系のカクテルなら、志乃も飲めるかもしれないよ?宅飲みだから、酔っても大丈夫だし。」
「それじゃあ、試しに少し飲んでみようかな。お勧めはある?」
と、取り敢えず、ルーファスさんお勧めのカクテルを飲む事にした。
*ルーファス視点*
『酔った彼女が可愛かった』
『酔った彼女が甘えて来た』
と、よく周りに居た騎士が言っていたのを思い出し、志乃はどうなるのか?と好奇心に駆られて志乃にアルコールを勧めてみた。
────のだが────────
「ルーファスさん。そこに座って下さい。はい。正座ですよ。」
何故か、目の据わった志乃に指差しを喰らいながら正座をさせられた。
「あのですね、ルーファスさん。ルーファスさんは優しいし料理男子だし、イケメンだし良いとこしかないから好きなんです。」
ーん?デレられた?ー
普段の志乃の口からは、絶対に聞けない言葉の連続に、これからどうしてやろうか?と思案する。
「でもですね?あの時だけは、ルーファスさんが意地悪だから、嫌いなんです!!嫌!って言ったら止めて下さい!!」
ビシッ─と俺に指を指して言い切る志乃。
ーえっと……可愛いしかないからな?ー
「志乃、ソレは、本当に嫌なのか?」
「え?」
「本当に嫌なら止める。でも……志乃は何をしても“嫌だ”って啼くから、本当は嫌じゃないと思っていたんだ。」
「──なっ……なっ…………」
顔を真っ赤にして口をパクパクさせる志乃。
「ほっ……本当に……いや………で………」
「じゃあ、本当に嫌なのかどうか、今から試そうか?」
「え゛っ!?」
勿論、有無を言わせずひょいっと抱き上げて寝室へと運び込んだ。
どうやら、アルコールを飲んだ志乃は、気分が大きくなるようで、本音をポロッとビシッと口に出してしまうようだ。
時々、アルコールを飲ませて本音を聞くのもアリだな─と思いながら、その日も志乃を攻め立てた。
「やっぱり、ルーファスさんは………意地悪だ。」




