普通?
第一王女殿下と異世界の聖女
“金の聖女”と“黒の聖女”と呼ばれている。
この世界では、黒色は不吉と言うようなモノはない。ただ、私達の様に真っ黒な髪色は珍しいそうで、ほぼ王城、王都しか知らない私達は、黒色の髪の人にはあまり会った事がない。
「2人並ぶと、本当に絵になるよね。って、エメラルド、また美女に磨きがかかってない?」
「確かに美人だろうけど、リアも可愛い…と思うよ?」
「…先輩、言い方がフォローになってませんからね?」
ははっ─と笑う先輩とエラさん。
ー自分が普通─並だと言うことは理解しているからね!ー
「バーミリオンさん、ウィステリア!」
「「アズール(さん)」」
そこへやって来たのは、イケメン剣士のアズールさん。
「だから、俺とは同郷の同年なんだから“さん”は要らないって…」
「私の精神安定?の為に、それは遠慮させて欲しい。」
「また訳の分からない事を…」
と、アズールさんは拗ねた様に言うけど、本当に勘弁願いたい。アズールさんはイケメンな騎士で、女性からとても人気があるのだ。それは、日本でもそうだったけど。
ただの同郷、召喚された仲間と言うだけで仲良くしてもらってはいるけど、本来なら接点すら無かったような人だった。そんなアズールさんと喋ろうものなら、キラキラ着飾った令嬢とやらにネチネチと絡まれる事もあった。そんな状態で呼び捨てにすれば……
ーと言うか、本当に私だけ、私の扱い酷くないですか?ー
救いがあるとすれば、エラさんやバーミリオンさんをはじめ、魔導士の人達は皆私にも優しくて、態度も全く変わらないと言うところだろうか…。
『基本、魔導士は周り─見目や世間体を気にしない奴が多いからね』
ー聖女じゃなくて、魔導士で良かったー
と、最近ではそう思っている。
そして始まった合同訓練。
騎士団からは第一、第二、第三から20名ずつが参加していて、魔導士団は私とバーミリオンさん合わせて33名の全員が参加している。
今回初めて知った事だけど、騎士の人達は殆どの人が魔力を持っていない為、剣術や武術のみで対応するのに対し、魔導士達は魔法は勿論の事、それなりに剣も扱えたりもする。魔導士団トップのユルゲンさんと、その娘であるエラさんも剣術にも長けていて、バーミリオンさんと私はそんな2人から、魔法と剣術の指導をしてもらっている。バーミリオンさんは、魔法も剣術も直ぐにマスターして、既に魔導士と名乗るに相応しい者になっている。
『俺、チートかも?』なんて笑っていたけど、私は否定しない。
その反対、やっぱり私は普通。魔法も剣術もそこそこ止まり。私には、更なる努力が必要なようです。
そして、アズールさん。初めて剣を扱うところを見たけど…流石は“剣士”だ。騎士団の人達にも負けていなかった。たった3ヶ月でこの成長具合い。彼もまた、チートなのかもしれない。
コレで行くと、エメラルドもまた、聖女としてほぼ完璧に仕上がっているんだろうと予想がつく。
「はぁ──」
と、自然と溜め息が零れた。
「──あ…あれ?」
「勝者、ウィステリア!」
合同訓練の後、魔導士vs騎士の一対一の練習試合のようなモノが行われた。
「勝っちゃった?」
私の相手は、第三騎士団に所属している騎士だった。
因みに、第一騎士団は王城や王族に付く騎士団で、第二騎士団は王族個人に付く近衛騎士の集まりで、第三騎士団とは王都内を警備する集まりである。
「ほら、思い知らせられただろう?リアは、魔導士の中では普通かも知れないけど、そこから出たら、その辺の奴等よりはかなり優れているんだよ。」
と、エラさんはニコニコと笑っている。
「リアに足りないのは──自信だけだな。」
「自信………」
ー自信なんて……全く無いけど……今日ぐらいは、少しは自分を褒めてあげようー
私に負けた第三騎士の人には去り際に「女のクセに…」と呟かれたけど、残念な人だな─としか思わなかった。
「皆、久し振りね!」
と、笑顔満開でやって来たのはエメラルド。
合同訓練は午前中で終わり、昼からは自由時間となり、今日は久し振りに4人でランチをしよう─と約束をしていたのだ。因みに、夜は魔導士団で打ち上げの予定である。
「エメラルド、久し振り。取り敢えず、街に出る?久し振りに街で──」
「その事なんだけど…実はね、シア─アリシア殿下から、昼食を皆と一緒にどうか?って誘われて…」
私達4人は異世界人で、言わば客人であり救世主的な存在だから、王族や貴族の命令であっても聞く必要は無いと言われてはいるが、王女殿下に誘われれば、断わる事はしない方が良いだろう。それは、バーミリオンさんもアズールさんも同じ考えだったようで、私達4人は王女殿下と一緒に昼食を取ることにした。
ーテーブルマナーとか…大丈夫かなぁ?ー