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懐かしい声


「真名を掌握してるって…本当に?」

「掌握できてるみたい…ですね。」

「────そうか…………」


ここは、王城敷地内の西側の奥にある塔の最上階。


この塔の出入り口は一つだけで、入り口から螺旋階段があり、そこを上りきった最上階の部屋はワンルームみたいになっていて、そこにエメラルドが監禁されていた。

普通のワンルームと違うところは、外からしか開け閉めが出来ない鍵が付いた扉を開けると、鉄の柵が床から天井へと伸びているところだ。


今は、柵越しではあるが、バーミリオンさんとアズールさんとエメラルドが面会をしていて、私はエメラルドの真名を掌握──はせず、この面会に同行しているメイナードさんと、その3人から離れて壁際に待機している。


「ウィステリアは、あそこに入らなくても良いの?」


「私が入ったら、会話にならないと思うので。それより、メイナードさんこそ、エメラルドに何か用があったんですか?」


「あぁ、ちょっと…ね。どうしても、エメラルド殿に訊きたい事があったんだ。」

「そうなんですね。」


ー訊きたい事って何だろう?ー


と思いながら、3人が話し終わるのを黙ったまま待っていた。






10分、15分位すると「話は終わった」とバーミリオンさんとアズールさんが私達の方へとやって来て、その2人と入れ替わるように、今度はメイナードさんがエメラルドの方へと行く。


「ひょっとして、リアって、エメラルドに結構なダメージ喰らわせた?予想以上におとなしくて、拍子抜けしたんだけど?」


と、アズールさんが、大袈裟気味に肩を竦める。


「特には何も……真名を掌握して黙らせたぐらいしかしてないよ。」


「「いや、ソレだろう。」」

「今迄何でも思い通りになったタイプの人間だから、ソレは結構なダメージだと思うぞ?」

「まぁ……エメラルドがやった事を考えると、“可哀想”とは思わないけどね。」


バーミリオンさんもアズールさんも、エメラルドに対しては思うところがあったんだろう。2人の目には、その言葉の通り、エメラルドを気遣うようなモノはなかった。



「───返して!」

「何故、エメラルド殿に返さなければいけないんだ?」


エメラルドが叫んだと思ったら、メイナードさんはどこか冷たい声を出した。


「だって、それは私の物だもの!」

「違う。これはルーファスが買った物で、本来ならウィ───」

「違う!!私の───」

()()()()()─」


真名を掌握すれば、エメラルドはまた肩をビクッと震わせた後口を噤んだ。


私達3人もメイナードさんの所に駆け寄った。


「何があったんですか?」

「─────あ…あぁ………えっと…………んんっ。このピアスがね、エメラルド殿の部屋にあったんだけどね…」


と、メイナードさんの手の平に乗せられたそのピアスは───


「赤色の……ピアス………」


()()ピアスだー


「うん。どこを探しても片方しか無くて。コレ…ウィステリアのでしょう?」


「え?」


ー“ウィステリア(わたし)の”って、どう言う事?ー


「あれ?ルーファスから……貰わなかった?浄化の旅の途中で、ルーファスが“ウィステリア殿へのプレゼントだ”って言って買ってたんだけど。」





『俺からのご褒美、もらってくれる?』


『え?私に─ですか!?』


『ウィステリアは、いつも頑張ってるから』





ーあの時のー


あれからバタバタした上に、最後には置いて還ったつもりでいたから、中身を確認すらしていなかった。

でも…どうして片方だけが?不思議に思いながら、メイナードさんの手の平にあるピアスを手に取って、そのまま視線をエメラルドに向けると、エメラルドはじっと私を見つめていた。


フッと軽く息を吐いた後、真名の掌握を解除させると、エメラルドはまた叫び出した。


「ウィステリア!ソレを返して!ソレは私の物よ!もう片方は、あんたが持ってるんでしょう!?それも一緒に返して!そのピアスの在るべき場所は、私のところなのよ!!返し────っ!」


また改めて、真名を掌握して黙らせる。


結局は、エメラルドには伝わっていなかったと言う事だろうか?

いや、ここ迄きたら、“ルーファスさんに執着している自分”に酔っているだけなのかもしれない。


「エメラルド……」と声を掛けた時──


「し─────ウィステリア様!」“志乃”と呼び掛けて“ウィステリア”と言い直しながら転移魔法でキッカさんが現れたと同時に


キンッ────


と、部屋全体に張り詰めたゾクゾクするような空気が漂い、結界が張られた事が分かった。


「ここに結界が!?誰が──!?」


メイナードさんが焦るのは仕方無い。

この塔は魔力持ちを監禁するする為の塔で、“魔力無効”の魔法が掛けられているのだ。

私が掌握の魔法を使えているのは、許可があったからだ。

そんな塔全体に結界が張られた。


ー一体…誰が?ー


エメラルドは柵の向こう側で震えていて、こちら側4人が臨戦態勢に入ろうとした時、懐かしい声が響いた。






『これは一体…どうなっているの!?』






()()()──』






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