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落とされた王女と掬われた女魔導士

新年、明けましておめでとうございます。

今年も、引き続き読んでいただければ幸いです。


❋いつもより長目ですが、分割せずにいきます❋










私の名前は“リジー”─だった。


物心がついた頃には、既に両親は亡くなっていて孤児院で育った。ただ、私は平民でありながら魔力が強かったようで、成人する頃には魔導士となり、直ぐに独り立ちする事ができた。


もともと、他人と仲良くすると言う事が苦手だった。他人と過ごす時間があるなら、その分魔法や魔力について研究する事の方が好きだった為、私の周りに仲の良い人間なんていなかった。それは別に寂しい事ではなかった。


所謂、“魔法馬鹿”というヤツだろう。


そんな私が一番興味を抱いていたのが“召喚魔法”だった。


勿論、召喚魔法は一般的には禁忌とされている魔法だ。その魔法陣は、王族の中でも限られた者にしか知らされる事は無いと言う。

その魔法陣が使われて、異世界から4人も召喚されたと知った時は思わず叫んでしまった。


その召喚の儀に選ばれた魔導士達が羨ましかった。


ー私が女でなければ…平民でなければ選ばれていただろうか?ー


選ばれた魔導士は、全員貴族の令息だった。勿論、能力に問題が無い者達だとは理解しているが、この世界での女魔導士の扱いを思うと、納得し切れない部分があった。






そんな、私の燻っていた気持ちを……知られていたのかもしれない。




『あなたに、召喚魔法の魔法陣を見せてあげるわ』


彼女は、そう呟いてニッコリ微笑んだ。


『ただし───』


と、見せる替わりに─と突き付けて来た条件は、異世界からある人物を召喚する事だった。

そんな事、願ったり叶ったりな条件だった。


『召喚に足りない魔力は、私が魔石を用意するから大丈夫よ』


と言った彼女の言葉を疑う事もしなかった。あの時の私は、浮かれていたのだ。召喚魔法を使える事に。



それからが本当に大変だった。

召喚する相手の魔力を見つけなければいけなかったのだ。どこをどう探しても見付ける事ができず、あっと言う間に4年が過ぎてしまった───ある日。


「見つけた」


遂に見付けた事を彼女に報告して、それから一週間程した頃、彼女が魔力をたっぷり溜め込んだ魔石を持ってやって来た。


『コレで、成功するわ』


その時の彼女の綺麗な笑顔は、一生忘れないだろう。








召喚魔法の魔法陣を展開した直後、直ぐに異変に気が付いた。

展開した魔法陣が完璧ではない事。

私の魔力と手元にある魔石では……魔力が絶対的に足らない事に───


どんどん魔法陣に魔力が吸い取られて行くが、魔法陣の展開を止めようとしても止まらず───


「私を……騙した?」


魔力が枯渇寸前迄来たと分かった時に、彼女に訊くと


「騙してなんてないわ。貴方が何も訊かなかったから言わなかっただけよ?ふふっ。」


「こんな事をして……ただで済む……と?」


「あら、心配してくれるの?ありがとう。でも、大丈夫よ?だって……身寄りの無い貴方が居なくなっても、誰も…気にしないでしょうから……」


さようなら──と、彼女の今迄で一番綺麗な微笑みを目にした後、私の意識はそこで途絶えた。








******



『アレで“聖女”とは───()()()は何を見ていたの?』


と、私の目の前で、静かにキレている美女。


私は、あの時死んだ─と思っていたけど、“千代様”と言う神様に()()()()ようで、異世界へとやって来ていた。


この世界には魔法はなかったけど、科学と言うモノが発展していて元の世界よりも全てが輝いて見えた。多少の男性優位なところもあるが、女でも上に立つ事ができていた。

生活面では、最初は勝手が全く違う為苦労はしたけど、もともと自分独りで何でもできていたから、慣れれば楽しいものだった。色々指導してくれた菊花さんには感謝しかない。


そんな私は、菊花さん達にガッツリ指導を受けた後、異世界での第二の人生をスタートさせたのだ。


その生活は、とても楽しかった。以前は苦手だった他人との生活や仕事も楽しいと思えたし、仲の良い友達や同僚がたくさんできた。



そんなある日──




「ねぇ……()()()に会えるとしたら……どうしたい?」


と、菊花さんは首を傾げながら、私を見つめていた。









******



「そんな事もできないの?」

「───なっ!」


今、私の目の前にはあの女─クロスフォード王国の第一王女だったアリシアが居る。


どうやら、この女は、私を騙して召喚魔法を使わせて殺した─と言う事がバレて、身分剥奪後に一生涯の幽閉とされたらしいが、「それだけでは甘い!」と言う事で、菊花さんが私の元に……落としに来たのだ。


勿論、私は喜々として()()()あげた。


ある程度のこの世界での知識は入れられたみたいだけど、もともと、“誰かがしてくれて当たり前”の生活を送っていた王女様だ。この世界では何の役にも立たない。料理なんて作れない。お風呂すら、独りで入れない程だった。


何をやってもできない─と、周りに当たり散らす事もあった。そんな彼女の周りには、誰も近寄る事はない。物理的にも精神的にも。


仕事ができない、料理もできない─となれば、この世界では生きていけない。


「私には無理よ!貴方がやりなさいよ!」


「何故、私が貴方の代わりにやらなきゃいけないの?それは、貴方の仕事よ。」


「何を……女魔導士の分際で!」


どうやら、この女は馬鹿なようだ。


「私は女魔導士なんかじゃないわ。貴方の上司で、貴方はただの部下よ。簡単な仕事もできない上、上司に逆らうのなら……それ相応の処分を喰らうのを覚悟しておいてね?」


と、ニッコリと微笑むと、目の前に居る女は顔を歪ませた。


「処分を喰らったところで……命を落とす訳じゃないから……私よりマシよね?」


「─っ!」


「貴方は忘れているかもしれないけど、私は貴方に殺されたのよ?なんなら、同じ目に……遭わせてあげようか?」


菊花さんは、()()()()私の側にこの女を落としてしまっただけだけど、私は感謝している。


「私はね、女魔導士として誇りを持っていたの。それを馬鹿にして私を騙して殺して……愉しかった?」


と、私は人指し指を彼女の顎に添えてクイッと持ち上げて、更にニコッと微笑むと、目の前の彼女がヒュッ─と息を呑んだ。


「私は、やられた事を泣いて諦めるような……悲劇のヒロインを気取るような人間じゃないの。」


やられたらやり返す──


「でも、私は貴方のような人間になりたくはないから、貴方を生かしているだけよ」


スッ─と、顎から手を離すと、女はヘナヘナとその場にしゃがみこんだ。


「何で…私が!王女だった私が…こんな!!お前も……ウィステリアも…赦さない────っ!?」


「本当に、貴方はクズの中のクズなのね?」


“ウィステリア”が誰なのかは分からないけど、きっと、この女に何かされた者だろう。

菊花さんは、半年と言っていたけど──


「半年なんかじゃ……足りないのよね……」


未だしゃがみ込んだまま震えながら私を見上げている女と、しっかりと視線を合わせる。


「赦さなくて良いわよ。貴方なんかに赦してもらわなきゃいけない事はないし、あったとしても赦して欲しいなんて思わないから。だから──私も、貴方を赦す事は無いわ。」


と、私は()()()の彼女の笑顔に負けない位の笑顔を彼女に向けた。





ーとことん……追い詰めてあげるからー






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