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アズールとの再会


三日三晩寝続けたキッカさん。


「よく寝たわ!妖力も魔力も完全回復!」


と元気良く目覚めた──と思ったら


「ちょっと出掛けるけど、すぐ戻るから!」


と言って、また邸から出て行ってしまった。何とも忙しい妖狐である。


結局、キッカさんが帰って来たのは、その日の夕方だった。そして、何故かとても上機嫌だった。


「何か良い事でもあったんですか?」と訊けば、「“因果応報”って、良い四字熟語だと思わない?」と、笑顔で訊かれた。


ーどっちの意味での因果応報ですか?ー


とは訊けずに、「ソウデスネ」とだけ答えておいた。









“アズールが王城にやって来る”



と言う手紙がアレサンドル様から届き、キッカさんも丁度良いわ─と言う事で、私達もアズールさんに合わせて登城する事にした。アズールさんにはお礼を兼ねて……みたらし団子を作ってみた。イチコとニコが、和菓子大好き妖狐で、色んな和菓子を作ってくれるのだ。それを、ブランも一緒になって4人で炬燵で食べる─が、毎日のルーティンになりつつある。


今回の登城は、アレサンドル様からの提案で、キッカさんの転移魔法で、アレサンドル様の執務室に転移すると言う事になった。アレサンドル様は、相変わらずよく気の利く王子様だ。







「ウィステリア殿、キッカ殿、来てくれてありがとう。本来なら、私が足を運ぶべきところだったんだが…」


「そんな!まさか!態々王太子様に来てもらうなんて、とんでもないですから!それに、私もキッカさんの魔法で一瞬で来ましたから!」


ー王太子が家に来るとか、色んな意味で遠慮したいー


「ウィステリア様、大丈夫です。私の邸には、私が許可した者しか辿り着きませんから。」

「え?」


ニッコリ微笑むキッカさん。


キッカさんは、本来の仕事を終えた後『本日から、私は愛し子である志乃様をお護りする役目を務めさせていただきます!』と言って、様呼びされるようになった。何でも、キッカさんの主である神様から、私がこの世界に居る間は私に付いて護るように─と言われたそうだ。アフターサービス…だろうか?

兎に角、キッカさんはとても頼りになるから、一緒に居てもらえるのは嬉しい。


「そうか…キッカ殿は凄い魔力の持ち主なんだな…そうか……辿り着かないのか………」


顔を少し引き攣らせて呟いているアレサンドル様からすると、キッカさんは本当に凄い魔力持ちなんだろう。


「ウィステリア殿、お久し振りです。」

「あ、シーヴァーさん。こんにちは。」


シーヴァーさんは、相変わらずの優しい目で微笑んでいる。


ー少しドキッとしたりしてなくもないですけどねー


「アズールももうすぐ来ると思うから、ウィステリア殿とキッカ殿はそこに座ってくれ。」


私とキッカさんは言われた通りに座り、アレサンドル様が私の向かい側の椅子に座った時「殿下、アズール様をお連れしました。」と、扉の外側から声が掛かった。「入ってくれ」とアレサンドル様が返事をすると、アズールさんが入って来た。


ー久し振りの…本間君だー


「アレサンドル様、召喚された者らしき人って……かん─ウィステリアさん!?」


ーあ、本間君、私の名前知ってたんだ!?ー


「え?何で…え?」


ーそりゃ驚くよね?私、4年前に還ったからねー


「まさか!召還されたのって……」

「はい、そのまさかです。再召還されました。」

「───マジか…………」

「はい。残念ながら、マジですね。」

「「…………ふっ───」」


と、私とアズールさんは同時に笑い出した。







「ルーファス、その嫉妬からの圧を抑えろ……アズール殿も愛し子だからな?」

「分かってます」

「ルーファス、ウィステリア殿がその圧に気付く前に抑えろ……嫌われるぞ?」

「分かりました……」



アレサンドルとルーファスのそんなやりとりを、志乃だけは気付く事はなかった。






それから、改めて、アズールさんのお陰で私を見付けてもらえたからと、お礼にみたらし団子を渡すと「うわー、めちゃくちゃ懐かしいな!」と、喜んで受け取ってもらえて、その場で早速食べてくれました。勿論、多目に作って来ていたから、アレサンドル様とシーヴァーさんにも食べてもらったら、「美味しい」と言ってもらえた。


「それで?一体誰が、召還魔法なんて使ったんですか?」


とアズールさんが質問すると、アレサンドル様が「その事について、2人には全て話しておくよ」と、私がキッカさんの邸で引き篭もっていた間にあった事を話してくれた。




それは、アリシア様の自分勝手な行いであり、とても残酷な話だった。


私は、本当に運良くこの世界に辿り着いて、売られて買われたけど、運良く未成年に間違えられて、そこで、運良く使い(妖)魔のキッカさんに会えた。


「あ、そう言えば、初めてキッカさんに会った時、一瞬驚いたような顔をしてましたよね?」


「はい。それはそれは…本当に驚きましたからね。還った筈の愛し子様が、枷を嵌められて目の前に現れたので……それに………」


千代様()から怒りを喰らうよね──”


と、その時、体が震えてしまったのは、菊花(わたし)だけの秘密だ。







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